目次
中途採用支援業の市場環境
中途採用支援業の市場環境は、以下の点が特徴です。
– 市場規模の拡大:2021年度の再就職支援業市場規模は321億円で、5.2%増加。コロナ禍に飲食業や観光業で休職者や退職者が急増したため、再就職支援の需要が急進しました。
– 売り手市場の継続:2024年下半期の転職市場は引き続き「売り手市場」が続いています。2024年5月時点の転職求人倍率は2.57倍で、昨年同時期比0.27ポイント増加しています。
– 業種別の動向:中途採用の見通しは「増える-減る」のポイントで全体で+18.4%ポイントと採用意欲の高まりがうかがえます。特に、「飲食店・宿泊業」は+32.9%ポイント、「運輸業」は+26.0%ポイント、「小売業」は+24.3%ポイントと、人手不足が顕著な業種で採用意欲が特に高いことが明らかになっています。
– 採用の難易度:IT・通信業やコンサルティング業、人材サービス業の採用は激戦です。正社員採用だけでなくパート・アルバイト採用も、地域により難易度増すエリアがあります。
– 中高年層の活用:中高年層の活用が求められています。リストラの対象となった中高年層の社員に対しての再就職支援サービスが活躍する可能性があります。
– ESGやダイバーシティ推進の需要:金融業界ではESGやダイバーシティ推進、IRコンサルティング、デジタル証券などの分野での経験や知識が求められています。
これらの点が中途採用支援業の市場環境を形成しています。
中途採用支援業のM&Aの背景と動向
中途採用支援業のM&Aの背景と動向は以下の通りです:
背景:
1. 競争激化:人材業界では、残りのシェアを巡って競争が激化しており、中小企業が市場での生き残りをかけてM&Aを検討することが増えています。
2. 専門性の強化:事業の専門性を高める動きが活発で、多くの経営者は専門性の強化が生き残りの鍵と捉えています。
3. 後継者不足:中小企業が後継者不足に直面しており、事業承継の手段としてM&Aを検討する企業が増えています。
動向:
1. 大手企業によるM&A:
– 大手企業は、さらなる事業の拡大と盤石性の構築のため、M&Aにも本腰を入れています。例えば、エン・ジャパン株式会社は株式会社Brocanteを買収し、テクノロジーの強化と新規事業領域への進出を図りました。
2. 中小企業のM&A:
– 中小企業は、競争が激化する中で市場での生き残りをかけてM&Aを検討しています。例えば、人材紹介会社では大手企業による買収が多く見られ、業界再編が進んでいます。
3. M&Aの流れ:
– M&Aアドバイザーの選定 → 買い手の探索 → 条件交渉 → 契約書の作成などが行われます。
メリット:
1. 優秀な人材の確保:
– M&Aを通じて、買収側が優秀で経験が豊富な人材をまとめて確保できます。
2. 事業規模の拡大:
– M&Aを通じて、事業規模が広がり、新しい取引先を得たり、優秀な人材を得ることでサービスの質が上がったり、知名度が上がったりすることが期待されます。
これらの背景と動向から、中途採用支援業のM&Aは、競争激化や専門性の強化、後継者不足などの問題を解決するための重要な手段となっています。
中途採用支援業のM&A事例
中途採用支援業のM&A事例を以下にまとめます。
### ハイブリッドテクノロジーズがキャスレーコンサルティングをM&Aした事例
ハイブリッドテクノロジーズは、キャスレーコンサルティングの子会社化を決定しました。キャスレーコンサルティングは、情報処理システムに関する受託開発や労働者派遣事業を行っています。ハイブリッドテクノロジーズは、このM&AによりキャスレーコンサルティングのノウハウやPM/コンサルティング人材を獲得し、既存事業である「ハイブリッド型サービス」の品質と安定性の向上を図るとしています。
### メイホーホールディングスがエムアンドエムの人材派遣事業をM&Aした事例
メイホーホールディングスは、スタッフアドバンスを通じてエムアンドエムが手掛ける人材派遣事業を譲受しました。エムアンドエムは岩手県で人材派遣事業や業務請負事業を行っています。スタッフアドバンスは福島・山形・宮城で人材派遣業を展開しており、今回の事業譲受で岩手県にも派遣先を広げることが目的です。メイホーホールディングスは、本M&Aにより東北エリアでの事業規模とシェア拡大を図るとしています。
### iDAがリンクスタッフィングの国内人材派遣事業をM&Aした事例
iDAは、リンクアンドモチベーションの子会社であるリンクスタッフィングが手掛ける人材派遣事業を譲受しました。リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した人材紹介業を行っています。iDAは、今後はリンクスタッフィングの人材紹介業を強化すべくリソースを集中させ、高収益体制の確立を図るとしています。
### アウトソーシングがISC就職支援センターをM&Aした事例
アウトソーシングは、ISC就職支援センターの全発行済株式を取得して子会社化しました。ISC就職支援センターは、茨城県に事業基盤をもつ人材サービス企業で、製造系や物流系などへ人材派遣を行っています。アウトソーシングは、自社のリソースをISC就職支援センターへ活用することで成長加速が期待できるとし、物流系をはじめとする事業の拡大においてもシナジーが見込めるとして本M&Aに至りました。
### グロップエスシーがジーエスケーとグランドスタッフをM&Aした事例
グロップエスシーは、ジーエスケーとグランドスタッフの2社をインターライフホールディングスから譲受しました。ジーエスケーとグランドスタッフはともにインターライフホールディングスの子会社であり人材派遣業を行っています。グロップエスシーは、今回の売却はインターライフホールディングスのグループ内事業再編の一環であり、コロナ禍の影響で人材サービス事業を取り巻く環境が変化したため、2社の売却を決断しました。
### パーソルテンプスタッフによるヒューテックのM&A
パーソルテンプスタッフは、佐賀県のヒューテックおよびその子会社であるビジネス・サービスの株式を取得しました。ヒューテックは佐賀県でトップシェアを持つ人材派遣会社で、製造や事務職に強みがあります。パーソルテンプスタッフは、今回の買収により九州エリアでの事業強化と人材派遣サービスの拡大を目指します。
中途採用支援業の事業が高値で売却できる可能性
中途採用支援業の事業が高値で売却できる可能性について、以下のようなポイントが重要です。
– 業界の成長性: 人材紹介業界は、特にIT企業やグローバル人材の獲得競争が活発になっており、今後も大きな動きが予想されるため、成長性が高いと評価されます。
– シナジー効果: 大手企業との連携により、シナジー効果が期待できる場合、売却価格が高く評価されます。例えば、製造業や物流業界への人材派遣・人材紹介を手がける企業が、サービス業などへの人材派遣・人材紹介を手がける企業と合併した場合、シナジー効果が期待できます。
– 無形資産の価値: 特定の業界における知名度や専門性、優秀な派遣社員などが無形資産として評価され、これが売却価格に大きな影響を与えます。
– 買い手との相性: 買い手側が注力している方面で売り手企業の経営資源が有効活用でき、経営統合により大きなシナジーが期待できると考えられる場合、売り手企業の買収価値は高くなります。
– 事業の強み: 売り手企業が有する強みやエンジニアの価値を理解した上で価値評価することが、高値で売却する上で重要です。例えば、エンジニアの人数と単価をベースにする方法も有効です。
– 複数の買い手候補との交渉: 複数の買い手候補との交渉を行うことで、自社を高く評価してくれる相手を見つけることができ、高い価格で売却できる可能性が高まります。
中途採用支援業の企業が会社を譲渡するメリット
中途採用支援業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 資金調達
– 不採算部門や不要な事業を売却することで、資金を調達できる。
– 資金を新たな成長分野や核心事業に投資することが可能。
– 経営効率の向上
– 事業の整理・再編を通じて、経営資源をより効率的に活用できる。
– 不採算部門の売却により、全体の収益性が向上する。
– 負債の圧縮
– 事業譲渡を通じて、関連する負債を譲渡することが可能。
– 財務健全性の向上を図ることができる。
– 後継者問題の解決
– M&A仲介会社などを利用して、会社譲渡や事業譲渡を実施すれば、スムーズな事業承継が実現し後継者問題を解消できる。
– 従業員の雇用維持
– 会社譲渡に成功すれば廃業せずに済むため、従業員の雇用を確保できる。
– 企業の存続・発展
– 大手企業の傘下・グループ企業に入れ、資本力や経営資源をフル活用すれば、企業を存続させたり、収益力を向上させて発展させたりできる。
– 個人保証や担保の解消
– 会社譲渡・株式譲渡を実施した場合、その会社が持つ資産・負債などをすべて譲受・買収側に引き継げるため、個人保証や担保から解放されるのも嬉しいメリットです。
中途採用支援業の事業と相性がよい事業
中途採用支援業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 中途採用支援サービスの事業と相性がよい事業
#### 1. IT/クリエイター向け中途採用支援
– 実績: クリエイター・IT/Web系人材の採用に特化した中途採用支援サービスが得意な企業は、例えば株式会社クリーク・アンド・リバー社があります。
– サービスの内容: IT/クリエイター向けの中途採用支援では、クリエイター人材・IT人材の85,000人以上のデータベースを構築し、採用戦略立案から立案まで一気通貫でサポートします。
#### 2. 管理職・エグゼクティブ・専門職の転職・中途採用支援
– 実績: 管理職・エグゼクティブ・専門職の転職・中途採用支援に特化した企業として、株式会社ジェイエイシーリクルートメントがあります。
– サポート体制: グローバル・海外関連のポジション支援に強く、企業と求職者の双方に対する支援を一人のコンサルタントが行う「両面型」ビジネスモデルを導入しています。
#### 3. 採用コンサルティングサービス
– 採用課題の解決: 採用目標達成に向けたコンサルティング要素の強い伴走型の支援や採用担当者の負担を軽減する代行サービスが提供されます。
– 採用プロセスの最適化: 採用プロセスの最適化を通じて、採用活動を効率化し、採用ターゲットに近い人材を確実に採用することが可能です。
#### 4. スキルマッチングと人材紹介
– スキルマッチングの活用: 最新のトレンドでは、AI技術を活用したスキルマッチングが注目を集めており、企業のニーズに精密に合った求職者を高速で見つけ出し、採用活動の時間とコストを大幅に削減することが可能です。
– 人材紹介の強化: 専門のコンサルタントが企業の文化や求めるスキルセットを深く理解し、長期的な成功を視野に入れたマッチングをサポートします。
#### 5. ダイレクトリクルーティング運用
– ピンポイントでのアプローチ: 企業が求める人材に対しピンポイントでアプローチできるダイレクトリクルーティング運用が提供され、採用ターゲットに近い人材を確実に採用することができます。
これらの事業は、中途採用支援サービスの強みを活かして、企業が求めるニーズに応じて最適な求人広告の作成と配信をサポートし、採用活動を効率化することができます。
中途採用支援業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、中途採用支援業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを抑えつつスムーズなM&Aを実現することが可能です。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。中途採用支援業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確に対応することができます。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。