目次
フィットネスクラブの市場環境
日本のフィットネスクラブ市場環境は以下の通りです:
– 市場規模の変化:令和4年(2022年)には4,503億円で、令和5年(2023年)には4,886億円に増加し、8.5%の伸び率を示しました。
– ピーク時:フィットネスクラブの市場規模は2019年までに4,939億円に達し、コロナ禍の影響を受けて2020年に3,196億円まで落ち込みましたが、現在は回復中です。
– 客単価の変化:令和4年は98,081円、令和5年は87,645円となり、10.6%減少しました。
– 地域特性:フィットネスジムは関東地方に集中しており、地方居住者が県内唯一の店舗に車で通うことが多いですが、chocoZAPはコンビニジムとして全国展開し、地方居住者に「通いやすさ」を提供しています。
– シェアの変化:chocoZAPが約59%を占め、カーブスが約18%、ルネサンスが約9%となり、chocoZAPのシェアが急増しています。
– 参加率:日本のフィットネス参加率は約4.5%で、欧米諸国と比べると低いですが、急回復が見られます。
– 店舗数の増加:フィットネス事業を展開する大手15社の店舗数は2023年度末に5900店前後に到達し、10%前後の高い伸び率を示しています。
– マーケティングの見直し:コロナ禍の影響を受けて、フィットネスクラブ運営企業はSTPを再び見直し、最適なマーケティングミックスを構築する必要があります。
これらの点が日本のフィットネスクラブ市場環境を形成しています。
フィットネスクラブのM&Aの背景と動向
スポーツジム・フィットネスクラブ業界におけるM&Aの背景と動向は以下の通りです。
近年、M&Aが活発化
近年、スポーツジム・フィットネスクラブ業界では大手企業による中小企業のM&Aが活発化しています。これは、会員の確保、多店舗展開、既存施設とのシナジーを目的として行われています。
コロナによる影響
コロナ禍により、スポーツジム・フィットネスクラブ業界は売り上げ減少に直面しました。特に中小規模事業者は設備費や人件費などの固定費を吸収できなくなり、多くの事業者が廃業することになりました。こうした状況を乗り越えるために、大手企業が中小企業を買収するケースが増えています。
ニーズの細分化に対応
ニーズの細分化に対応するために、自社で展開していないサービスを扱う会社を傘下に入れる動きも多く見られます。例えば、ケイズグループがパーソナルトレーニング・ジムを手掛けるRIPPLEの一部株式を取得し、オンライン部門を譲り受けました。
顧客サービスの充実
顧客サービスの充実やスポーツ教育分野への参入を狙った異業種による買収も多く見られます。例えば、城南進学研究社が健康増進事業を含めた総合教育機関としてのさらなる発展を目指して、スポーツジム・フィットネスクラブの買収に至りました。
業界再編
M&Aによる業界再編が活発化しています。中小規模事業者にとってM&Aは生き残り手段のひとつであり、今後もスポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aが活発に行われる可能性があります。
例
– オカモトによるテーオー総合サービスのM&A: オカモトがテーオー総合サービスのスポーツクラブ事業を譲り受けました。
– ケイズグループによるRIPPLEのM&A: ケイズグループがRIPPLEの一部株式を取得し、オンライン部門を譲り受けました。
– ルネサンスによるKSC wellnessのM&A: ルネサンスがKSC wellnessのスポーツクラブ事業を譲り受けました。
これらの動向から、スポーツジム・フィットネスクラブ業界におけるM&Aは、会員の確保、多店舗展開、既存施設とのシナジーを目的として行われており、コロナ禍による影響やニーズの細分化に対応するために活発化しています。
フィットネスクラブのM&A事例
フィットネスクラブのM&A事例を以下にまとめます。
### 大手企業による中小企業へのM&A
近年、フィットネスクラブ業界では大手企業による中小企業へのM&Aが活発化しています。具体的には、小規模なスポーツクラブ・フィットネスクラブが大手の施設に買収されるケースが多いです。
### 事例
– ジェイエスエスによるワカヤマアスレティックスの子会社化:
– ジェイエスエスはスイミングスクールやテニススクールなど、会員制スポーツクラブの運営を行っており、ワカヤマアスレティックスはスイミングクラブ、フィットネスクラブ、スーパー銭湯を企画・運営しています。
– 今回の株式取得により、ジェイエスエスはこれまでのノウハウを活かし、ワカヤマアスレティックスの営業効率化を図り、スイミングやフィットネス事業の成長を目指します。
– ルネサンスによるKSC wellnessのスポーツクラブ譲受:
– ルネサンスは、KSC wellnessフィットネスクラブ金町・金町スイミングクラブのスポーツクラブ事業を譲り受けました。
– KSC wellnessは、1972年に菱紙が三菱製紙中川工場跡地に開設した「金町スイミングクラブ」を前身とする大型スポーツ施設で、フィットネスクラブ機能を2010年に追加しました。
– 三菱製紙の事業戦略見直しに伴い、今回の譲渡が決定しました。
– ルネサンスによるBEACH TOWNの株式取得:
– ルネサンスは、BEACH TOWNの株式51.7%を取得し子会社化しました。
– BEACH TOWNは、アウトドアフィットネス・ヨガスタジオ・ボルダリングジム・トレーニングジム・スケートボードパーク・ランニングステーションなどスポーツ施設の事業プロデュースおよび運営を手掛けていました。
– 本件M&Aの目的は、アウトドアフィットネス分野への本格参入でした。
– THINKフィットネスによるジョイフルアスレティッククラブの株式取得:
– THINKフィットネスは、ジョイフルアスレティッククラブの株式67%を取得しました。
– ジョイフルアスレティッククラブは、茨城県および千葉県でスポーツクラブを合計3施設運営しており、THINKフィットネスはトレーニングマシン・健康器具・栄養補助食品など物販面におけるシナジー効果の獲得を目指しました。
### M&Aの動向
フィットネスクラブ業界では、会員の確保、多店舗展開、既存施設とのシナジーを目的として大手企業による中小企業のM&Aが活発化しています。コロナによる売り上げ減少により設備費、人件費などの固定費を吸収できない中小事業者を大手事業者が買収されるケースが増加しています。また、ニーズの細分化に対応するために自社で展開していないサービスを扱う会社を傘下に入れることで、サービスを拡充する動きも多くみられます。
フィットネスクラブの事業が高値で売却できる可能性
フィットネスクラブの事業が高値で売却される可能性を以下にまとめます。
フィットネスクラブの売却価格は営業利益の1.5倍~2.5倍ほどとされています。具体的には、年間営業利益が500万円の場合、売却額は750万円~1250万円程度となります。
特定の条件が整っているときには、高値で売却される可能性が高まりますとされています。例えば、以下のような条件が整っているときには、高値で売却される可能性が高まります。
– パーソナルトレーニングなど、付加価値の高い高単価サービスを提供しているとされています。
– プールをはじめとした固定費のかかる設備を保有していないとされています。
– トレーニングジムの中にコミュニティがあり、利用者の継続率が安定しているとされています。
これらの特性を持つフィットネスクラブは、相場よりも高い価格で売却される可能性があります。
大規模な施設であれば数億~数百億円程度、小規模な施設であれば数千万円が相場とされています。具体的な相場は以下の通りです。
– 大規模な施設:数億~数百億円とされています。
– 小規模な施設:数千万円とされています。
フィットネスクラブの売却価格は、具体的な施設や事業の状況に応じて変動しますが、特定の条件が整っているときには、高値で売却される可能性が高まります。
フィットネスクラブの企業が会社を譲渡するメリット
スポーツクラブ・フィットネスクラブの企業が会社を譲渡するメリットを以下にまとめます。
### 買い手側のメリット
– 会員の確保ができる: スポーツクラブ・フィットネスクラブは会員制の施設であるため、M&Aによって会員をそのまま引き継ぐことができます。初期段階から一定規模の会員を確保したうえで事業を展開できます。
– サービス・ノウハウ・設備の引き継ぎ: M&Aにより、提供するサービス・ノウハウ・設備も引き継ぐことができます。これにより、ゼロベースからの用意が簡単で、事業を迅速に開始できます。
– 従業員(人材)の引き継ぎ: 人気のある従業員を取り込むことで、教育や研修の手間を省き、サービスにより差別化される傾向が強いスポーツクラブ・フィットネスクラブにとって大きなメリットです。
– 事業の多角化: 異業種企業が事業を多角化する際に、スポーツクラブ・フィットネスクラブの買収は有効です。スポーツクラブ・フィットネスクラブ事業を保有しておけば一定の収益が見込めるため、事業の多角化の一環として買収を図る企業も見受けられます。
– 既存の商品・サービスとのシナジー効果: スポーツクラブ・フィットネスクラブで提供するサービスと、自社が提供する既存の商品やサービスを組み合わせることで、自社の顧客を増やすと同時に宣伝も行う戦略を講じることができます。
### 売り手側のメリット
– 財務基盤の強化ができる: M&Aにより、会社や事業を売却して大手企業の資本の傘下に入れば財務基盤を急速に強化できます。特に小規模の個人事業が多いスポーツクラブ・フィットネスクラブにとって、この点は大きなメリットです。
– 資金調達を安定化できる: 小規模な個人事業では融資を得ることが難しく、資金調達に苦しみやすい傾向があります。M&Aは資金調達を安定化させるうえで有効的な手段です。
– 幅広い宣伝ができる: 異業種に買収された際、特有のメリットが発生するケースもあります。買い手側の会社が持っている広告媒体・メディアなどを利用できれば、より幅広い宣伝を実施可能です。
### その他のメリット
– 従業員の雇用先を確保できる: M&Aや売却によって従業員の雇用先を確保することができます。株式譲渡の場合は包括承継なので、従業員の雇用もそのまま買い手へ引き継がれます。
– 後継者問題への悩みを解決できる: 後継者がいないために事業を引き継ぐことが難しい場合、M&Aや売却によって事業の存続が可能になり、後継者育成にかかる時間も不要です。
– 大手グループの傘下に入り経営を安定させる: 中小規模のパーソナルジムの場合、自社の経営資源だけではさらなる成長や発展が難しい場合、大手グループに売却することで大きな資本力やブランド力も活用可能です。
– 売却・譲渡益を獲得できる: M&Aによって、売却・譲渡益を得られるのも大きなメリットの1つです。株式譲渡であれば自身が売却益を得られます。
– 個人で抱える保証や担保の解消: M&Aや売却によって得られるメリットには、個人で抱える保証や担保を解消できることもあります。株式譲渡の場合は債務も含めて買い手側の企業へ引き継がれます。
フィットネスクラブの事業と相性がよい事業
フィットネスクラブの事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### フィットネスクラブの事業と相性がよい事業
1. フィットネス施設と顧客のマッチングサービス
– マッチングサービスは、ジムやスタジオ、トレーナー、インストラクターを検索しやすくするサービスです。例えば、Fit MapやAsreetは、パーソナルジムだけでなく、フィットネス施設を幅広く掲載しています。
2. スポーツクラブの運営
– スポーツクラブの運営は、フィットネス、運動スクールの運営、公共スポーツ施設の管理運営を行っています。例えば、KONAMIグループは、各地の自治体との連携を通じて、小学校・中学校の授業や部活動の指導、地域のスポーツ指導を行っています。
3. 総合型フィットネスクラブ
– 総合型フィットネスクラブは、ヨガやパーソナルトレーニングなどの多様なプログラムを提供しています。例えば、ルネサンスとオアシスが資本提携を発表し、大手の両社を合わせた規模は大きくなります。
4. 健康関連のソリューション
– 健康関連のソリューションは、自治体や健康保険組合、企業向けに、施設を利用できる法人会員、健康に関わる各種セミナーの実施、オンラインを活用した健康機会の提供を行っています。例えば、メガロスは、健康増進を図るための様々なソリューションを提供しています。
5. イベント事業
– イベント事業は、スポーツを通じて人生をエンジョイしようという、地域の人々が集まるコミュニティづくりを目指しています。例えば、メガロスは様々なイベントを行っています。
6. 物販事業
– 物販事業は、各種スポーツ用品、サプリメントおよびプロテインを販売行っています。例えば、メガロスは営業店のほかメガロスオンラインショップで販売を行っています。
フィットネスクラブの企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、フィットネスクラブの企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。さらに、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。フィットネスクラブの業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なアドバイスを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。