目次
サイバーセキュリティ業の市場環境
日本のサイバーセキュリティ市場環境:
– 市場規模と成長率: 日本のサイバーセキュリティ市場規模は、2024年から2032年の間に10.7%の成長率(CAGR)を示すと予測されています。
– 推進要因: 金融、ヘルスケア、政府機関などの重要な業界を標的としたサイバー攻撃の頻度と巧妙化が市場の成長を支えています。クラウドコンピューティング、IoTデバイス、リモートワークソリューションの採用も市場の推進力を発揮しています。
– 政府の取り組み: 「サイバーセキュリティ戦略2021」や「サイバーセキュリティ基本法」などの政府のイニシアチブは、国のサイバーセキュリティインフラを強化する上で重要な役割を果たしています。これらの取り組みは、機密データの保護、国家安全保障の強化、デジタルサービスの安全な運用の確保を目的としています。
世界のサイバーセキュリティ市場環境:
– 市場規模と成長率: 世界のサイバーセキュリティ市場規模は、2023年に25兆円を超え、2024年には28兆円を超える予測されています。2032年には82兆円を超える可能性があります。
– 推進要因: AIの台頭、サイバー攻撃の増加、大手AI企業がM&Aを行っていることが市場規模の拡大に寄与しています。
– 成長率: 世界のサイバーセキュリティ市場の成長率は、2022~2027年間で11.7%と予測されています。
産業サイバーセキュリティ市場環境:
– 市場規模と成長率: 産業サイバーセキュリティ市場規模は、2023年に236億6,000万米ドルで、2032年には566億3,000万米ドルに達すると予測されています。予測期間中に10.5%のCAGRで成長します。
– 推進要因: 産業用制御システム(ICS)を標的としたサイバー脅威の増加、IoTデバイスの採用が市場の成長を牽引しています。エネルギー、製造、公共事業などの産業部門では、業務のデジタル化が進んでおり、高度なサイバー攻撃に対して脆弱になっています。
– 政府の取り組み: Cybersecurity Venturesのレポートによると、サイバー犯罪の世界的なコストは、2015年から2025年までに年間10.5兆ドルに達すると予想されています。重大なデータ盗難や悪意のあるソフトウェアによるエネルギー機器の制御につながるリスクが高まり、堅牢なサイバーセキュリティ対策の必要性が高まっています。
サイバーセキュリティ業のM&Aの背景と動向
サイバーセキュリティ業界のM&Aの背景と動向は以下の通りです。
### サイバーセキュリティ企業のM&A需要が拡大
現在、IoT化が急速に進んでおり、多くのモノがインターネットに接続されています。サイバー攻撃の手法も高度な技術を用いて進化しており、対策が不可欠となっています。国もサイバー攻撃対策を推進しており、企業や個人の対策に対する意識も高まっています。サイバーセキュリティに関する需要は増えると考えられ、それに伴いサイバーセキュリティ企業のM&A需要も拡大すると予測されます。
### 大手企業によるサイバーセキュリティ企業買収
大手企業では、サイバー攻撃による公的機関や企業からの情報漏えいが大きな問題となっています。サイバー攻撃は無差別攻撃から標的を定めた攻撃に進化しており、企業は対応が急務となっています。大手企業では迅速・的確に対応するためグループ内にサイバーセキュリティ会社を置くケースも増えてきました。その手段としてM&Aによってサイバーセキュリティ企業を買収するケースもみられます。
### M&A規模の増加
サイバーセキュリティコンサルティング会社であるMomentumの調査によると、2021年のサイバーセキュリティ分野におけるM&Aは286件、取引額は775億ドル(約9兆円)と2020年を大幅に超える件数となりました。サイバーセキュリティ企業における10億ドル(約1,100億円)を超える規模のM&Aは14件あり、McAfee、Auth0、Mimecast、Proofpoint、Thycotic、Avastなどの取引が含まれます。
### 新たな規制の導入
日本では、2020年6月の国会で可決・成立した「改正個人情報保護法」が、2022年4月1日より全面施行されました。新たな規制の導入や規制強化により、サイバーセキュリティ分野のM&Aは活発に行われています。
### 成功事例
サイバーセキュリティ企業のM&Aは多くの成功事例があります。例えば、2024年7月2日、Interaktはインドのサイバーセキュリティ会社Sealcube Secops Pvt.Ltd.を買収しました。Interaktはブロックチェーン、AI、IoTに特化したコンサルティング・システム開発を行い、インドにオフショア開発拠点を持つ企業です。一方、Sealcube Secops Pvt.Ltd.は、チャネル専用のサイバーセキュリティを提供しています。今回の買収の背景には、サイバー攻撃の増加とその手法の複雑化があり、これに対応するため、セキュリティ強化が求められています。
### 業界再編
サイバーセキュリティ業界では、IBMによるレッドハットの買収など、数兆円規模の大型買収が行われています。国内でもサイバーセキュリティの需要増加により、大手企業による業界再編を思わせる活発なM&Aが展開されています。
サイバーセキュリティ業のM&A事例
サイバーセキュリティ業界におけるM&Aの動向は、企業価値に大きな影響を与えるリスクを含んでいるため、企業間の合併や買収が活発化しています。以下に、サイバーセキュリティ業界におけるM&Aの重要な事例をまとめます。
### InteraktによるSealcube Secopsの買収
– 背景: サイバー攻撃の増加とその手法の複雑化に対応するため。
– 目標: 次世代デジタル技術におけるセキュリティ向上と、安全で信頼性の高いソリューションの提供。
### イー・ガーディアンによるジェイピー・セキュアの完全子会社化
– 背景: サイバーセキュリティ分野でのトータルソリューション提供と、同分野での事業成長を加速させるため。
– 目標: サイバーセキュリティ分野での競争力を強化し、顧客ニーズに応えることができるようになる。
### サイバーセキュリティクラウドによるソフテックの子会社化
– 背景: 技術力強化やビッグデータ活用、販売チャネルの拡大など。
– 目標: 強固な会社基盤の構築を目指し、より高度なサイバーセキュリティソリューションを提供する。
### サイバーセキュリティ企業のM&Aの総額と活発性
– 2021年: サイバーセキュリティ企業におけるM&Aの総額が約9兆円に達し、82社が1億ドル以上の資金調達を行い、10億ドル以上の規模のM&Aが14件発生した。
### サイバーセキュリティ企業のIPO
– 2021年: KnowBe4、Darktrace、SentinelOne、Riskified、ForgeRockなど5社が新規株式公開を行い、IPOで平均4億4400万ドルを調達した。
### サイバーセキュリティの投資増加
– 要因: 地政学的な緊張や危機、技術のデジタル化の進展、在宅勤務、IoTデバイスの普及、クラウドなどが挙げられる。
### サイバーセキュリティのリスクと対応
– リスク: 小さな綻びが広範囲にわたる壊滅的な被害を及ぼすリスクを含むため、M&Aにおいてサイバーセキュリティを検討項目に含めることが重要。
– 対応: サイバー保険の有無・内容、対象会社の企業文化の理解、対象会社のシステムの安全性の確認などが重要。
サイバーセキュリティ業の事業が高値で売却できる可能性
サイバーセキュリティ事業が高値で売却できる可能性について、以下のポイントをまとめます。
– 独自の技術やノウハウ: サイバーセキュリティ会社が独自の技術やノウハウを持っている場合、買い手企業はその価値を高く評価します。独自の技術やノウハウを持っていることで、高い金額で売却できる可能性が高まります。
– 営業利益の数年分: 年買法で評価する場合、時価純資産に営業利益の2〜5年分を足すことで、売却価格を算出します。実際のM&Aでは、この算出金額よりも高値で売却されることが多いです。営業利益の数年分を考慮することで、より高価な評価が可能です。
– 企業価値評価: 企業価値評価の方法には「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「コストアプローチ」があります。具体的には、評価対象会社が将来獲得すると期待される利益やキャッシュフローを基準にバリュエーションを行う方法が「インカムアプローチ」です。企業価値評価を行うことで、より正確な評価が可能です。
– 市場環境とシナジー効果: 市場環境やシナジー効果も考慮されます。例えば、IoT機器の促進やサイバーセキュリティの強化が国によって推進されるため、M&Aが活発化する可能性があります。市場環境やシナジー効果を考慮することで、より高価な評価が可能です。
– 高評価倍率: 近年、サイバーセキュリティスタートアップの評価倍率が高くなっています。例えば、Bionic.ioはARRが500万ドル以下で3億5000万ドルで買収されました。高評価倍率が見られるため、高価な評価が可能です。
これらのポイントを考慮することで、サイバーセキュリティ事業が高値で売却される可能性が高まります。
サイバーセキュリティ業の企業が会社を譲渡するメリット
サイバーセキュリティ企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 後継者問題の解消: 中小規模のサイバーセキュリティ企業では、後継者候補が経営者の周りにいないことが多く、事業承継が難しい場合があります。M&Aを活用すれば、後継者問題を抱えていても自社の存続が可能となります。
– 売却益の獲得: 売却益が獲得できることも売却側企業にとって大きなメリットであり、買収側からの評価が高ければ多くの利益を見込むことができます。売却益は、使用するM&A手法によって誰が受け取るかが異なり、株式譲渡を用いた場合は株主(オーナー)、事業譲渡は企業です。
– 事業の成長・拡大: 事業の成長や拡大を実現するためには、資金・人材・ノウハウなど十分なリソースが不可欠です。M&Aは事業の成長・拡大を図る有効手段であり、買収側のリソースを活用できるため、事業の成長・拡大にかかる時間を大幅に短縮することができます。
– 人材不足の解消: サイバーセキュリティ会社の事業運営にはエンジニアが不可欠ですが、高いスキル・専門知識を持つ人材を一度に確保するのは難しいのが現状です。M&Aにより優秀な人材を獲得し、人材不足を解消させることができます。
– 経営の安定化: M&Aにより資本力のある企業へ譲渡することで、経営の安定化につながるでしょう。また、大手企業に入ることで多重下請けから脱却し経営を行うことができます。
サイバーセキュリティ業の事業と相性がよい事業
中小企業向けのサイバーセキュリティ事業には以下のようなものがあります。
– 中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業:
– セキュリティ機器の導入: UTM機器やEDRを導入し、ファイアウォールやアンチウイルスソフトで検知・ブロックできない不正アクセスやマルウェアの対策を支援します。
– 情報セキュリティマネジメント指導: セキュリティ基本方針や規定の策定をサポートし、セキュリティリスクの分析・コンサルティングを行います。
– 無料体験期間: EDRを最大3か月間無料体験でき、期間中はサポートデスクによる支援を実施します。
– 中小企業サイバーセキュリティ啓発事業:
– サイバー攻撃対応演習: サイバー攻撃対応演習や標的型攻撃メール訓練を行い、必要性を認知する支援を行います。
– 中小企業サイバーセキュリティ社内体制整備事業:
– セキュリティ対策の自走: セキュリティ対策の自走を目指し、継続的なセキュリティ対策ができる人材を育成します。導入済のセキュリティ機器の日常運用方法や業務内容に沿ったセキュリティルールの策定方法を講義形式で伝えます。
– 中小企業サイバーセキュリティ特別支援事業:
– サイバー攻撃対応: サイバー攻撃を受けたときの的確な対応方法や事業の復旧までを考慮した、セキュリティ対策を支援します。
これらの事業は、特に中小企業がサイバーセキュリティ対策を強化するためのサポートを提供しており、セキュリティ機器の導入や情報セキュリティマネジメント指導が重要なポイントです。
サイバーセキュリティ業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。