目次
ケアマネジメント業の市場環境
2024年のケアマネジメント業界の市場環境は以下の通りです。
– 介護保険制度の改定: 2024年は介護保険、診療報酬、障がい福祉サービス等の3つの保険制度・報酬が改定されます。具体的には、地域包括ケアシステムの深化・推進、自立支援・重度化防止に向けた対応、良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり、制度の安定性・持続可能性の確保などが重点項目となります。
– ケアマネジャーの将来性: 日本の高齢化と少子化により、介護サービスの需要が増加し、ケアマネジャーの需要も増加することが予想されます。ただし、介護保険制度の大幅な変革や「ケアプランの有料化」が実現する可能性があり、これによりケアマネジャーの将来性が不安定になる可能性があります。
– 処遇改善: 令和6年度の改正により、ケアマネジャーの負担軽減策が図られ、オンラインモニタリングが解禁されました。また、東京都ではケアマネジャーに月額1万円の居住支援特別手当が支給される独自策が打ち出されています。
– 業務効率化: ケアマネジャーの業務効率化が求められ、ICT導入や業務効率化が重要視されています。業務効率化が図られなければ、受け持つことができる利用者数が増加せず、事業所の淘汰が進む可能性があります。
– 人材の需給: 現在、ケアマネジャーの深刻な人不足が表面化しており、供給が足りない状況です。これにより、ケアマネジャーの負担が増大し、ケアマネジャー離れが進む一因となっています。
大切なポイントは以下の通りです。
– 介護保険制度の改定:地域包括ケアシステムの深化・推進、自立支援・重度化防止に向けた対応、良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり、制度の安定性・持続可能性の確保。
– ケアマネジャーの将来性:需要の増加と制度の変革による不安定性。
– 処遇改善:負担軽減策やオンラインモニタリングの導入。
– 業務効率化:ICT導入や業務効率化の重要性。
– 人材の需給:深刻な人不足と供給不足の状況。
ケアマネジメント業のM&Aの背景と動向
介護業界におけるM&Aの背景と動向は、以下の要因によって推進されています。
– 人材不足の解消と: 介護業界では人材不足が深刻な問題となっています。M&Aを通じて、スキルやノウハウを持つ人材を獲得し、さらに人材育成を積極的に行うことで、採用時のアピールが強まり、新たな人材の確保がしやすくなります。
– 経営者の高齢化と事業承継と: 経営者の高齢化や後継者不足が問題となっており、M&Aを通じて経営体力のある企業に事業を譲渡することで、安定した経営基盤を築くことができます。
– 成長産業への参入と: 介護業界は成長産業とされており、異業種からの参入が盛んな状況となっています。警備会社や不動産会社など、主力事業の先行きに不安を感じる企業からの参入や医療機関による介護事業への参入も増えています。
– 介護報酬改定への対応と: 介護報酬改定は業界全体に大きな影響を与えます。M&Aを検討する際には、介護報酬が改定される時期も考慮して計画を立てる必要があります。
– 地域特性に適した事業者取得と: 地域ごとの規制や需要の変動に対応するために、地域特性に適した事業者を取得することで、競争優位性を確立することが可能です。
– 技術やノウハウの取得と: M&Aを通じて先進的な技術やノウハウを取得することで、サービス品質の向上や新しいサービスの導入が容易になります。
これらの要因により、介護業界におけるM&Aは活発化しており、競争力を維持・向上させるための重要な戦略として位置づけられています。
ケアマネジメント業のM&A事例
### 介護業界におけるM&A事例
#### 事例1: リビングプラットフォームとシニアケアのM&A
事業譲渡により、リビングプラットフォームケアがシニアケアから高齢者グループホーム事業を譲り受けました。シニアケアは兵庫県尼崎で2施設を運営する介護事業者です。この承継により、阪神南地域におけるシェア拡大を図り、ドミナント戦略を進めて地域No.1企業を目指します。
#### 事例2: 日本生命保険とニチイホールディングスのM&A
株式譲渡により、日本生命保険がニチイホールディングスの株式99.6%を取得しました。ニチイホールディングスは介護だけでなく医療事務や保育サービスの事業も展開しており、日本生命と1999年から提携関係にありました。このM&Aにより、日本生命保険は介護事業に本格的に参入し、収益の柱としたい考えです。
#### 事例3: ケア21とトチギ介護サービスのM&A
事業譲渡により、ケア21がトチギ介護サービスの事業を譲り受けました。トチギ介護サービスは文京区を中心に北区・豊島区の文京区隣接地域に住む人へ「訪問介護サービス」「居宅介護支援サービス」を提供しています。このM&Aにより、近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者のニーズに応えることが可能となり、ケア21が培った実績とノウハウを活かしてサービスを充実させていく狙いです。
#### 事例4: 学研ココファンとグランユニライフケアサービスのM&A
株式譲渡により、学研ココファンがグランユニライフケアサービスの株式を取得しました。グランユニライフケアサービスは高齢者住宅における介護サービスを中心とした運営業務を手掛け、親会社であるジェイ・エス・ビーとは業務提携契約を締結しています。このM&Aにより、両社のノウハウとネットワークを活用し、多様なニーズに対応する価値提供を目指します。
#### 事例5: ALSOKとケアプラスのM&A
株式譲渡により、ALSOKがケアプラスの全株式を取得しました。ケアプラスは在宅訪問マッサージを提供しており、ALSOKはセキュリティ事業をはじめとした複数の事業を運営しています。このM&Aにより、ALSOKは顧客である高齢者向けのサービス内容の充実を目指しています。
#### 事例6: 株式会社鎌倉新書と株式会社エイジプラスのM&A
事業譲渡により、株式会社鎌倉新書が株式会社エイジプラスから介護施設紹介事業と見守りサービス事業を譲り受けました。株式会社鎌倉新書は葬祭事業やお墓事業など「終活」をテーマに事業を展開しており、新たに介護事業へ参入することでサービスの一貫性を強固なものにしています。
#### 事例7: 揚工舎グループと株式会社ケア・フレンドのM&A
子会社化により、揚工舎グループが株式会社ケア・フレンドを子会社化しました。株式会社ケア・フレンドは介護事業や福祉用具レンタル・販売事業を展開しており、揚工舎グループは理学療法士の知識・経験を取り入れたサービスの提供を強みとしており、営業拠点の拡大に留まらず、ケア・フレンドの福祉用具のレンタル・販売事業を自社内に取り入れることで、販路拡大や規模拡大によるシナジー効果を生み出すことができました。
#### 事例8: 株式会社ケア21とひまわり医療介護サービスのM&A
事業譲渡により、株式会社ケア21がひまわり医療介護サービスの訪問介護・居宅介護支援事業を譲り受けました。株式会社ケア21はこれまでにも全国に営業拠点を展開しており、ひまわり医療介護サービスの事業を譲り受けることで、近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者のニーズに応えることが可能となりました。
ケアマネジメント業の事業が高値で売却できる可能性
介護事業の売却において、事業が高値で売却される可能性はあるが、その条件やポイントは以下の通りです。
– 後継者問題の解決: 中小企業の多くが後継者不足に悩んでおり、介護業界も例外ではありません。M&Aを活用することで、後継者がいない場合でも事業承継が可能です。
– 従業員の雇用継続: M&Aによる事業承継は買い手が新たな経営者(後継者)となって事業が存続する形となり、会社の負債や従業員の雇用もそのまま引き継がれます。
– 経営安定: 介護業界では3年ごとの介護報酬の改定の影響を避けられません。M&Aにより大手企業に譲渡することで、報酬改定といった変動に耐えられる安定した経営が可能になります。
– 売却価格の相場: 介護施設のM&A相場は首都圏で3,000万円〜1億円程度ですが、利益額や施設の所在地などによりM&Aの最終的な価額は変動します。時価純資産額に年間営業利益の数年分を加えた金額が一つの目安となります。
– 売却のメリット: 売り手側のメリットとしては、後継者問題の解決、従業員の雇用継続、売却益の獲得、経営安定が挙げられます。
これらのポイントを踏まえると、介護事業が高値で売却される可能性はあるものの、具体的な条件や相場は事業の詳細や市場状況に依存します。
ケアマネジメント業の企業が会社を譲渡するメリット
ケアマネジメント業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです:
– 経営不安定の解消:介護報酬の改定による経営不安定を解消し、経営体力のある企業に事業を譲渡することで、経営の安定性が確保されます。
– 従業員の雇用確保:事業を譲渡することで、従業員の雇用を維持し、キャリアアップの機会も提供できます。
– 後継者問題の解決:高齢化する経営者や後継者不足による問題を解決し、事業の存続が可能です。
– 創業者利益の獲得:事業を売却することで、創業者は譲渡による利益を得ることができます。
– 地域への影響の軽減:事業を譲渡することで、地域に影響を与えることなく、介護サービスを継続できます。
– 経営の安定化:事業を売却することで、経営を安定化させ、地域高齢者に安心して過ごしてもらえる環境が整います。
ケアマネジメント業の事業と相性がよい事業
ケアマネジメント業の事業と相性がよい事業をまとめます。
1. 総合事業
– 総合事業においてケアマネジャーに特に影響が大きいのが、介護予防給付の「訪問介護」と「通所介護」の移行です。
– 市町村(保険者)ごとの運営となり、既存の介護事業者だけでなく、住民ボランティアやNPO、民間企業などもサービスの担い手に含めることができるようになりました。
– サービスの充実に伴って安価なサービスの利用が拡大し、また元気な高齢者も支え手に回ることなどによって、費用の効率化を図ることが総合事業の狙いの1つです。
2. ダブルライセンス
– ケアマネージャーが持つべきダブルライセンスとして、以下の資格がオススメです。
– ケアマネ×行政書士
– 手続き代理業務や成年後見人の就任が主な業務となり、高齢者やその家族と関わりの深いケアマネージャーにとって相性が抜群です。
– ケアマネ×社会保険労務士
– 利用者だけでなく地域の介護事業所との関わりも多く持てるので、ケアマネと社会保険労務士の相性は抜群です。
– ケアマネ×中小企業診断士
– 経営に関するコンサルティングを行う専門家であり、介護事業所の経営に関する悩みを抱えることが多いため、相乗効果が高いです。
3. 適切なケアマネジメント手法
– 「適切なケアマネジメント手法」は、要介護高齢者の状況や疾患群に応じて「想定すべき支援の仮説」を体系的に整理することにより、将来の生活予測におけるケアマネジャーの知識水準を確保することを目的としています。
– 令和2年度には、「基本ケア」及び5つの「疾患別ケア」を取りまとめました。
4. ケアマネジャーの選び方
– ケアマネジャーの選び方のポイントとして、以下のことが重要です。
– 保有資格やこれまでの経験や得意分野、熱心さで、利用者との相性やその後のケアプランに大きく差が出ることがあります。
– 特定事業所加算とは、24時間の連絡体制を確保している事業所に与えられます。
5. 転職のポイント
– ケアマネから転職する場合、同じ介護業界でおすすめの職種は、以下の3つです。
– 介護職
– 体を動かす機会が多い仕事であり、デスクワークや連絡業務などが多いケアマネの仕事内容が合わない方は、介護職のほうが向いているかもしれません。
– 管理職
– 施設の運営や職員のマネジメント業務などに抵抗がない方であれば、ケアマネから転職して管理職にキャリアアップするのもいいでしょう。
ケアマネジメント業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、ケアマネジメント業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由がいくつかあります。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、ケアマネジメント業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。