目次
オンライン診療連携訪問看護業の市場環境
在宅医療と訪問看護の需要の高まり
日本は急速な高齢化社会に突入しており、医療や介護のニーズが大きく変化しています。特に、在宅医療の必要性が高まっています。高齢者が自宅で生活を続けるためには、訪問看護サービスが不可欠となっています。
訪問看護の需要の具体的なデータ
– 介護予防訪問看護の年間累計受給者数は135.2万人で、前年度と比較して11.2万人(9.1%)増加しています。
– 要介護者向けの訪問看護においても年間累計受給者数は781.1万人となっており、前年度から45.1万(6.1%)の増加を示しています。
訪問看護の役割と成長予測
訪問看護は病院での治療を補完する重要な役割を果たしています。訪問看護師は、患者の健康状態を定期的にチェックし、必要に応じて医療処置を行うことで、患者の生活の質を向上させています。
2030年の需要予測
訪問看護の需要は、現在の成長率を維持、もしくは上回る可能性が高いと予測されています。特に、医療と介護の両方のニーズを持つ利用者の増加により、訪問看護の専門性を活かしたサービス提供が求められます。
オンライン診療との連携
訪問看護の場において、「看護師が患者と対面し、直接サービスを提供する」+「オンラインで遠方の医師から診療を受ける」形態に注目が集まっています(いわゆるD to P with N)。この形態により、良質なオンライン診療が確保されると期待されています。
在宅医療の提供体制改革
在宅医療は、高齢化に加え、住み慣れた自宅で過ごしたいという患者の希望をかなえ、入院医療費抑制に資するなどのメリットが期待されています。需要が急拡大しており、今後もこの傾向は続くとみられます。供給面においては、医師および財源の不足などが懸念されており、効率化を伴った提供体制の変革が不可欠です。
2024年度の診療報酬改定
2024年度の診療報酬改定では、在宅医療・訪問看護について、「質・量」双方の充実を目指すとともに、効率性を踏まえた適正化を図る予定です。例えば、地域医療連携ネットワークも活用した複数医療機関による在宅医療提供や、退院当日の複数回訪問看護の手厚い評価を行う一方で、「訪問診療の回数が極めて多い医療機関」や「同一建物居住者への訪問が極めて多い訪問看護ステーション」について評価の引き下げを行う予定です。
オンライン診療連携訪問看護業のM&Aの背景と動向
訪問看護業のM&Aは、特に高齢化社会の進展に伴い、需要の増加とともに活発化しています。以下に、オンライン診療連携訪問看護業のM&Aの背景と動向をまとめます。
### 背景
– 高齢化社会の進展:日本における高齢化が進む中、訪問看護の需要は今後も増加すると考えられています。
– 人材不足:訪問看護ステーションの数が多く、職員が不足しているため、同業間でのM&Aや事業承継が増加しています。
– 要介護度の増加:要介護度が高い状態の高齢者が増加しており、これに応じた看護サービスの需要が高まっています。
### 動向
– 関連業種とのM&A:訪問看護業界では、関連業種とのM&Aが活発に行われています。例えば、老人ホームやホスピスなどの隣接業種とのM&Aが多く見られます。これにより、人材やノウハウの共有やシナジー効果の創出が期待されています。
– 事業規模の拡大:訪問看護事業を買収することで、人材やノウハウ、オフィスなどの経営資源を獲得し、事業規模の拡大が実現できます。
– 経営資源の獲得:訪問看護事業を買収すると、経営資源の獲得や経営の先行き不安解消などのメリットが期待できます。
### M&Aの流れ
1. M&A・事業承継の専門家に相談:M&Aの手続きや注意点について専門家に相談します。
2. M&A・事業承継先の選定及び、交渉開始:適切なM&A・事業承継先を選定し、交渉を開始します。
3. M&A・事業承継先のトップと面談:M&A・事業承継先のトップと面談を行い、基本的な合意を確認します。
4. 基本合意書の締結:基本的な合意をまとめ、基本合意書を締結します。
5. デューデリジェンスの実施:M&A・事業承継先のデューデリジェンスを実施し、問題がないことを確認します。
6. 最終契約書の締結:デューデリジェンスの結果を受けて、最終契約書を締結します。
7. クロージング:最終契約書に基づいて資産の移動や対価の支払いを行います。
### M&Aの手法
– 株式譲渡:売り手企業が発行している株式を買い手企業に譲渡する手法です。主に訪問看護事業を運営する会社ごと売買する際に用いられます。
### 注意点
– 参入障壁の低さ:訪問看護ステーションの開設には人数要件が低く、参入障壁が低いですが、看護職員の確保が難しい場合があります。
以上の点が、オンライン診療連携訪問看護業のM&Aの背景と動向をまとめています。
オンライン診療連携訪問看護業のM&A事例
訪問看護業のM&A事例をまとめると、以下のような特徴と動向が見られます。
– 関連業種とのM&Aが活発:訪問看護業界では、老人ホームやホスピスなどの関連業種とのM&Aが多く発生しています。これは、人材やノウハウの共有によるメリットや、シナジー効果の創出が期待されるためです。
– 買収の目的:買収の主な目的は、事業規模の拡大や経営資源の獲得です。訪問看護事業を買収することで、人材やノウハウ、オフィスなどの経営資源を獲得し、自社が進出していないエリアの顧客を獲得することが可能です。
– M&A手法:訪問看護業のM&Aには、株式譲渡や事業譲渡などの手法が用いられます。株式譲渡は、売り手企業が発行している株式を買い手企業に譲渡する手法で、主に訪問看護事業を運営する会社ごと売買する際に用いられます。
具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
– CHCP-HNとN・フィールドのM&A:CHCP-HNは、訪問看護を中心とした在宅医療サービスを展開するN・フィールドに対する公開買付けを行い、病院・調剤薬局と一般訪問看護事業者の連携を促進しました。
– チャーム・ケア・コーポレーションとグッドパートナーズのM&A:チャーム・ケア・コーポレーションは、訪問看護を含む人材派遣・人材紹介を手掛けるグッドパートナーズを買収し、質の高い派遣人材を確保しました。
– みらかホールディングスと集い介護センターのM&A:みらかホールディングスは、東京都で訪問看護事業を展開する集い介護センターを買収し、既存事業とのシナジー効果を見込んで参入しました。
これらの事例から、訪問看護業のM&Aは関連業種との連携や経営資源の獲得を目的としたものが多く、株式譲渡や事業譲渡などの手法が用いられています。
オンライン診療連携訪問看護業の事業が高値で売却できる可能性
オンライン診療連携訪問看護業の事業が高値で売却できる可能性について、以下の点が重要です:
– DX導入による効率化:クラウド型の電子カルテやタブレットの導入により、記録作成・報告・共有にかかる時間が削減され、事業所への移動の回数が減ります。これにより、1日あたりの訪問時間数や訪問回数が増加し、売上アップにつながります。
– ケアの質向上:DXの取り組みにより、看護師の研修機会が増え、オンライン研修や録画された研修動画の利用が可能になります。これにより、看護技術の向上や知識の習得が促進されます。
– オンライン資格確認の導入:オンライン資格確認が義務化され、患者本人のモバイル端末またはPCを用いて資格情報や薬剤情報を確認できるようになりました。これにより、資格過誤によるレセプト返戻の削減や事務作業の効率化が期待できます。
– オンライン請求の導入:オンライン請求が義務化され、訪問看護ステーションが電子化されたレセプトデータをオンライン上で請求する仕組みが導入されました。これにより、紙による請求ができなくなり、効率的な事務作業が可能になります。
– データ管理の簡略化:クラウド経由でデータを閲覧・記録できるため、直行直帰の勤務スタイルが実現し、事務所への立ち寄りが不要になります。これにより、移動時間のロスや労力をカットでき、作業効率が向上します。
– 統計データの蓄積:訪問介護・看護システムでは、スタッフの稼働率や人件費率、訪問状況、請求状況、売り上げ推移などがリアルタイムで蓄積されます。これにより、経営者が定量的な情報に基づく意思決定が可能になり、経営判断の精度が向上します。
これらの要素が、オンライン診療連携訪問看護業の事業価値を高めるための重要なポイントです。
オンライン診療連携訪問看護業の企業が会社を譲渡するメリット
訪問看護業の企業が会社を譲渡するメリットを以下にまとめます。
### 譲渡側(売り手)のメリット
1. 厳しい資金繰りから解放される:
– 訪問看護の運営には多くの経費がかかり、常に資金繰りが課題となる。事業売却により、厳しい資金繰りから解放される。
2. スタッフの雇用や利用者へのサービス提供を継続できる:
– スタッフは譲受先の新しいオーナーのもと、基本的には従来通りの条件で引き続き雇用され、利用者へのサービス提供も継承される。
3. 事業の成長拡大が期待できる:
– 規模の大きな企業に統合される可能性があり、経営資源やノウハウの共有によって事業の成長拡大を図ることができる。
4. 廃業よりも少ない負担で事業から撤退できる:
– 廃業手続きには利用者の引継ぎやスタッフ関連で資金と労力を要しますが、事業売却ではこうした金銭的な負担や労力の負担が少なく事業からの撤退ができます。
5. 投資回収・現金化までの期間を短くできる:
– ストック型のビジネスである訪問看護ステーションでは長期計画で投資を回収していくことになりますが、事業売却では未来に予想される収益も価値として算定することができるため、投資回収までの期間を大幅に短縮し、現金化を早めることができます。
### 譲受側(買い手)のメリット
1. 経営資源を確保できる:
– 訪問看護ステーションを買収した譲受側の企業は、医療スタッフ、設備、顧客基盤、また事業ノウハウや地域のネットワークといった経営資源を確保することができます。
2. 事業成長とリス軽減ができる:
– 訪問看護の買収によって、新たな地域市場に参入することで、地域展開を促進し、事業の成長を実現できます。また異業種の買収では、異なる事業を展開することで、単一の事業に依存するリスクを軽減することができます。
### その他のメリット
1. DXの取り組みによる売上アップ:
– クラウド型の電子カルテとタブレットを導入することで、記録の作成・報告・共有にかかる時間を削減し、事業所への移動の回数を減らすことができ、訪問件数を増やせて売上がアップすることができます。
これらのメリットにより、訪問看護業の企業が会社を譲渡することで、多くの利点を得ることができます。
オンライン診療連携訪問看護業の事業と相性がよい事業
オンライン診療連携訪問看護業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### 1. タブレット導入
タブレットの導入はオンライン診療の基本的な要件です。訪問看護師がiPadやタブレットを使用して、医師と利用者がFaceTimeやテレビ電話で診療を行うことができます。
### 2. 電子カルテ導入
電子カルテの導入は業務効率化を目指す重要なポイントです。電子カルテを使用することで、看護記録の作成、報告書や計画書の作成、利用者の電子カルテ機能、レセプトの電子化機能などが可能になります。
### 3. 医療情報システムの活用
医療情報システムの活用は、医療情報を電子化して医療機関内の部門間や関連職種での連携を行えるシステムです。患者の身体情報や診療内容、治療の経過などをシステム上でリアルタイムに確認できるため、効率化されて医療従事者の負担が軽減されます。
### 4. 訪問看護師との連携
訪問看護師との連携はオンライン診療をスムーズに実施するために重要です。D to P with Nという形態で、医師がオンライン診療を行う際に、患者の側にいる訪問看護師へ診療の補助行為に関する指示を行うことで、点滴や注射などの薬の処方にとどまらない医療行為を行うことができます。
### 5. 情報共有と連携
情報共有と連携はオンライン診療の成功に不可欠です。医師と看護師が事前に連携を取り合い、患者の同意を得た上で患者の病状などの情報を共有し、オンライン診療で十分な情報を確認できない場合には対面診療に切り替えることが重要です。
### 6. 患者への説明と同意
患者への説明と同意はオンライン診療の基本原則です。患者にオンライン診療の限界を十分に説明し、同意を得ることが必要です。
これらのポイントを活用することで、オンライン診療連携訪問看護業がより効果的に運営され、質の高い医療サービスを提供することができます。
オンライン診療連携訪問看護業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、オンライン診療連携訪問看護業の企業がM&Aを依頼する際におすすめの理由をいくつかご紹介いたします。まず、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点が大きな魅力です。これにより、コストを気にせずに安心してご相談いただけます。また、豊富な成約実績を誇っており、多くの企業様にご満足いただいております。さらに、オンライン診療連携訪問看護業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。