- 1. 包装資材業界におけるM&Aの概要
- 2. 国内外における主なM&Aの背景
- 3. 事例解説(個別ケーススタディ)
- 3-1. 朝日印刷<3951>によるマレーシア企業Harleigh (Malaysia) Sdn.Bhd.・Shin-Nippon Industries Sdn. Bhd.の買収
- 3-2. 日本創発グループ<7814>によるリングストンの子会社化
- 3-3. 萩原工業<7856>による東洋平成ポリマー買収
- 3-4. 藤森工業<7917>による倒産中の米HEDWIN事業買収
- 3-5. 日本製紙<3863>による豪州オローラの段ボール事業買収
- 3-6. 日本紙パルプ商事<8032>による英国PREMIER PAPER GROUP買収
- 3-7. 国際紙パルプ商事<9274>による豪州Spicers買収・Wilmaridge事業買収
- 3-8. 荏原実業<6328>によるイージェイ譲渡(Storopackへの売却)
- 3-9. 稲畑産業<8098>による大五通商買収
- 3-10. レンゴー<3941>によるマルソルホールディングス買収
- 3-11. 高島<8007>による丸紅プラックスの建材事業買収
- 3-12. 丸紅<8002>によるベトナム子会社KOA譲渡
- 3-13. 高速<7504>によるマルトモ包装・ポリックス買収
- 3-14. 三井松島産業<1518>による日本ストロー買収
- 3-15. マルハニチロホールディングス<1334>による大興製凾のレンゴー<3941>への譲渡
- 3-16. ダイナパック<3947>による城西パック、GRAND FORTUNE等の買収
- 3-17. クロップス<9428>による大明商事・七つの海の買収
- 3-18. センコー<9069>によるスマイル買収
- 3-19. サンリツ<9366>による香港・中国子会社の包装資材事業譲渡
- 3-20. シモジマ<7482>による朝日樹脂工業・大倉産業買収
- 3-21. ショーエイコーポレーション<9385>によるCS、ファインケメティックス買収
- 3-22. エフピコ<7947>によるみやこひも、上田包装企業、アペックス、インターパック買収
- 3-23. KPPグループホールディングス<9274>(旧・国際紙パルプ商事)による海外包装企業買収
- 3-24. サトーホールディングス<6287>による英国DataLase買収
- 3-25. GSIクレオス<8101>による食品向け包装フィルム加工の桜物産買収
- 3-26. cotta<3359>によるワークス(理美容通販)やアスコット、TERAZ買収
- 4. 包装資材業界M&Aの特徴的なポイント
- 5. 環境要因と技術革新がもたらすM&Aへの影響
- 6. 今後の展望とまとめ
1. 包装資材業界におけるM&Aの概要
包装資材業界は、食品・医薬品・化粧品・物流など多様な業種を顧客に持ち、景気変動に影響を受けやすい部分と安定的な需要が見込める部分が混在している業界です。日用消費財の需要が一定程度見込まれる一方で、環境負荷低減の観点からプラスチック使用への規制が進んだり、新素材開発やリサイクル技術への期待が高まったりと変化が大きい点が特徴です。
こうした変化への対応として、多くの企業がM&Aを通じて新しい技術や商品分野を取り込んだり、生産拠点を海外に拡大してコスト優位を築いたりしています。また、顧客の多国籍化やグローバルサプライチェーンの強化に対応するため、海外メーカーや流通企業の買収を通じて国際ネットワークを整備する動きも増えています。
さらに、包装資材の世界市場では、アジアやアフリカなど新興国での需要拡大が続いており、日本企業が東南アジア・オセアニア・欧米企業を買収することで海外売上比率を伸ばす例も多く見られます。逆に国内事業の整理・統合、コア事業への集中、債務超過の子会社整理といった再編も進み、M&Aは「買収」だけでなく「譲渡」や「統合」など、さまざまな形で行われています。
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2. 国内外における主なM&Aの背景
(1) グローバル展開の促進
包装資材企業の海外展開は、顧客のグローバル化にともなうサプライチェーン対応が最大の理由の一つです。大手食品メーカーや医薬品メーカーは世界各国で製造・販売を行っているため、同じ品質・規格の包装資材を現地調達で安定的に供給する必要があります。そのため、自社の海外拠点を補完するために現地企業を買収し、生産から物流・販売まで一貫する体制を整備するケースが多いです。
(2) 新素材・技術の獲得
環境規制の強化やサステナビリティへの関心が高まるなかで、バイオプラスチックやリサイクル素材、あるいは印刷・ラベリングなど特殊な技術への需要が高まっています。新規事業への進出や競争力強化のため、既存の包装資材メーカーやスタートアップ企業をM&Aによって獲得する動きが広がっています。
(3) 事業承継問題・周辺事業の切り離し
包装資材産業は中小企業も多く、後継者不足の問題が顕在化しており、事業承継型M&Aが増えています。また、大企業グループがコア事業に集中するために、業績が伸び悩む子会社や周辺事業を譲渡・売却する事例も増加しています。買い手側にとっては拡大戦略に合致する企業を取り込む好機となる一方、売り手側は事業再編や将来的な投資負担軽減を実現できます。
(4) シナジー効果の追求
大手物流企業が包装資材メーカーを買収して「商流・物流一体型」のビジネスを構築したり、紙パルプ系総合商社が包装資材専門企業を買収して取扱品目・販売網を拡大したりと、サプライチェーン全体における相乗効果を見込むケースが一般的です。また、グラビア印刷やフィルム製造など、周辺工程を取り込むことで顧客への提案力を強化する例もみられます。
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3. 事例解説(個別ケーススタディ)
以下では、実際に公表されている主なM&A事例を取り上げ、その背景や目的、今後の展望について簡潔にまとめます。
3-1. 朝日印刷<3951>によるマレーシア企業Harleigh (Malaysia) Sdn.Bhd.・Shin-Nippon Industries Sdn. Bhd.の買収
- 概要
朝日印刷は、医薬品・化粧品包材(パッケージ、添付文書、ラベルなど)の製造・販売を中核事業としています。2019年9月にマレーシアの印刷会社Harleigh (Malaysia)とShin-Nippon Industriesの両社株式を65%ずつ取得しました。 - 背景・目的
両社は1980年代後半から医薬品の包装資材分野で実績を積んでおり、朝日印刷とも取引実績がありました。ASEAN地域、特にマレーシアでの拠点を整え、朝日印刷は事業領域を拡大する狙いです。 - 効果・展望
現地生産体制の整備や現地顧客との取引拡大が期待され、朝日印刷のアジア市場におけるプレゼンス向上が見込まれます。
3-2. 日本創発グループ<7814>によるリングストンの子会社化
- 概要
2022年4月、日本創発グループは買い物用手提げ袋を中心にパッケージ・包装資材を製造するリングストン(東京都江東区)の株式を追加取得し、完全子会社化しました。 - 背景・目的
もともと第三者割当増資の引き受けにより37.83%を取得していましたが、さらなる協業強化とグループシナジー拡大を見込み、完全子会社化に踏み切りました。 - 効果・展望
両社の印刷設備やノウハウを融合し、新商品・サービスの販売機会拡大が見込まれます。買い物袋などの需要は、エコバッグやプラスチック規制の問題を抱えながらも一定の市場規模があり、今後のサステナビリティ対応でも注目されます。
3-3. 萩原工業<7856>による東洋平成ポリマー買収
- 概要
萩原工業は、合成樹脂製包装資材メーカーの東洋平成ポリマー(高知市)の全株式を取得し子会社化すると発表(2018年5月)しました。 - 背景・目的
萩原工業はフラットヤーン技術をベースにしたシートを中心に産業資材を手がけています。東洋平成ポリマーは文具、食品、医薬の包装材料で強みがあり、萩原工業の技術力を合わせることで新市場・新用途開発を加速させる狙いがあります。 - 効果・展望
双方が持つ技術や顧客基盤の融合によってシート製造やパッケージ包装の一体化が進むほか、海外展開にも期待がもたれています。
3-4. 藤森工業<7917>による倒産中の米HEDWIN事業買収
- 概要
2014年5月、包装資材メーカーの藤森工業は倒産手続き中だった米国HEDWIN CORPORATIONからプラスチック容器・フィルム事業を取得することを発表しました。 - 背景・目的
藤森工業はHEDWINから「キュービテーナー」の商標権使用許諾を受けており、同容器事業とのシナジーが期待されました。 - 効果・展望
事業買収により、北米での事業基盤強化が期待されました。倒産企業の事業を選別し買収するケースは、日本企業の海外進出においてコストを抑えながら機能を拡充できる手段として注目されています。
3-5. 日本製紙<3863>による豪州オローラの段ボール事業買収
- 概要
2019年10月、日本製紙は豪州の包装資材大手オローラから段ボール事業を買収すると発表しました。買収金額は約1243億円と大規模です。 - 背景・目的
段ボール古紙の回収から原紙、段ボール箱、関連包装資材まで一貫生産体制を整備し、オセアニア地域での事業拡大を狙います。 - 効果・展望
日本製紙はオーストラリアン・ペーパー(AP)を通じて同事業を買収し、地域全体の紙・段ボール市場で存在感を高めています。特に輸送需要の拡大が見込まれるオセアニアでの取り組みは今後も注目されます。
3-6. 日本紙パルプ商事<8032>による英国PREMIER PAPER GROUP買収
- 概要
2019年7月、日本紙パルプ商事は英国の紙・包装資材卸大手PREMIER PAPER GROUPを傘下に持つRADMS PAPER LIMITED(ウェストミッドランズ州)の株式60%を取得し子会社化しました。 - 背景・目的
国内卸売だけでなく海外卸売、製紙・加工、資源・環境、不動産賃貸と多角的に展開する日本紙パルプ商事が、英国の大手紙商を取り込むことで欧州市場での事業基盤を強化するのが主目的です。BREXIT(英国のEU離脱)後の市場変化にも対応しやすくなると考えられました。 - 効果・展望
英国第2位の売上規模を持つPREMIER PAPER GROUPの販売網や在庫・物流機能を活かし、日本紙パルプ商事は英国での包装資材事業を一層拡大していく見通しです。
3-7. 国際紙パルプ商事<9274>による豪州Spicers買収・Wilmaridge事業買収
- 概要
国際紙パルプ商事は2019年に紙・包装資材大手の豪Spicers Limitedの全株式を取得し子会社化したほか、その後も同年11月にWilmaridgeから紙・板紙などの卸売事業を取得すると発表しています。 - 背景・目的
アジア太平洋地域での事業展開を強化するM&A戦略の一環で、Spicersとは取引関係がありました。併せてWilmaridgeの事業を取り込むことで商業印刷紙・包装資材、食品用包装材などの分野で豪州内でのシェア拡大を図っています。 - 効果・展望
国際紙パルプ商事は合併後「KPPグループホールディングス」として商号変更し、さらなるグローバル化を進めています。豪州における流通網と取り扱い品目の拡大が見込まれます。
3-8. 荏原実業<6328>によるイージェイ譲渡(Storopackへの売却)
- 概要
荏原実業は、バイオプラスチック緩衝材メーカーのイージェイをドイツStoropackに譲渡すると2014年9月に発表しました。 - 背景・目的
荏原実業にとって経営資源の再配分とグループ相乗効果の最大化を検討した結果、協業関係があったStoropackへの譲渡が最適と判断しました。 - 効果・展望
バイオプラスチック分野は環境対応製品として需要が高まっており、Storopackのグローバルネットワークで拡販が期待される一方、荏原実業はコア事業に集中することが可能になります。
3-9. 稲畑産業<8098>による大五通商買収
- 概要
2023年2月、稲畑産業はウナギ加工品製造や包装資材卸を手がける大五通商(静岡市)の株式を追加取得し、子会社化すると発表しました。 - 背景・目的
稲畑産業は食品ビジネスの収益拡大を掲げており、食品包装資材の取扱いやウナギ加工品などの製造にも強みを持つ大五通商を傘下に収めることでシナジーを追求する狙いです。 - 効果・展望
食材~包装のワンストップ提案を強化でき、ECでの販売伸長にも期待できます。
3-10. レンゴー<3941>によるマルソルホールディングス買収
- 概要
レンゴーは2013年7月、重包装資材メーカーを傘下に持つマルソルホールディングス(東京都千代田区)の全株式を取得し、子会社化しました。 - 背景・目的
レンゴーはダンボール事業で知られますが、重包装分野にも力を入れており、マルソルHDが展開するコンテナバッグ事業や樹脂シート事業などを取り込むことで重包装事業の強化を図りました。 - 効果・展望
アジア地域などグローバル生産体制の拡大や、需要が伸びる穀物・化学製品向けの大型包装材市場への対応などが期待されます。
3-11. 高島<8007>による丸紅プラックスの建材事業買収
- 概要
2009年11月、高島は丸紅の子会社である丸紅プラックスから建材事業を取得すると決議しました。 - 背景・目的
高島は樹脂系製品や化成品の取扱いで知られますが、建材領域にも進出し、既存事業とのシナジーを狙っていました。 - 効果・展望
建材事業を取り込むことで販売網の拡大と効率化を図り、土木・住宅分野にも裾野を広げることが期待されます。
3-12. 丸紅<8002>によるベトナム子会社KOA譲渡
- 概要
丸紅はベトナムで段ボール原紙を製造する子会社Kraft of Asia Paperboard & Packaging Co., Ltd.(KOA)を投資会社Meico Managementに譲渡すると2024年11月に公表しました。 - 背景・目的
KOAは2018年に設立された比較的新しい事業でしたが、採算面や将来的な成長性の見込みを再検討し、事業ポートフォリオの見直しとして譲渡を決断しました。譲渡前に増資を行い債務超過を解消しています。 - 効果・展望
丸紅の包装資材事業は他にも展開されており、コア領域に集中する戦略と考えられます。譲渡先のMeico Managementによる再建が焦点となります。
3-13. 高速<7504>によるマルトモ包装・ポリックス買収
- 概要
高速は2013年4月、包装資材販売のマルトモ包装(札幌市)とポリックスの全株式を取得し子会社化しました。 - 背景・目的
食品軽包装事業の拡大をめざす高速が、北海道地域での包装資材販売会社を取り込むことによって販路を拡大する狙いがありました。 - 効果・展望
地域密着型の中小企業を買収することで、地域ネットワークや顧客基盤を獲得し、食品軽包装事業の全国展開に弾みをつける効果が見込まれます。
3-14. 三井松島産業<1518>による日本ストロー買収
- 概要
三井松島産業は2014年1月、ストロー・包装資材の製造販売を行う日本ストロー(東京都品川区)の全株式を取得し子会社化すると発表しました。 - 背景・目的
石炭事業などを主力とする三井松島産業は、非資源領域への事業拡大を模索しており、日本ストローの独自技術・ノウハウ(伸縮ストローの開発など)を高く評価しました。 - 効果・展望
ストロー市場はプラスチック規制の影響も受けていますが、日本ストローの研究開発力による紙ストローなどの新商材開発も期待され、グループの収益多様化に貢献しています。
3-15. マルハニチロホールディングス<1334>による大興製凾のレンゴー<3941>への譲渡
- 概要
2008年2月、マルハニチロHDは山口県下関市の大興製凾(段ボール・紙器製造販売)の全株式をレンゴーに譲渡すると決議しました。 - 背景・目的
水産業をコアとするマルハニチロHDは事業再編の一環として段ボール・紙器製造の周辺事業を整理。レンゴーにとっては地域拠点の補強と顧客拡大に寄与します。 - 効果・展望
レンゴーは段ボール事業をさらに強化し、マルハニチロHDは本業に集中する形となり、双方にとって合理的な再編となりました。
3-16. ダイナパック<3947>による城西パック、GRAND FORTUNE等の買収
- 概要
ダイナパックは2021年、城西パック(東京都西東京市)の株式を取得し子会社化。2018年にはマレーシアの段ボール製品メーカーGRAND FORTUNEも買収しています。 - 背景・目的
国内外で段ボール事業の需要を取り込みつつ、既存のパルプモールド拠点(マレーシア)との相乗効果を狙うものです。城西パック買収では関東圏での事業拡大、GRAND FORTUNE買収では海外展開の強化が目的です。 - 効果・展望
ダンボールや紙製品の需要は通販市場拡大の恩恵を受けており、アジア圏でも引き続き需要増が見込まれます。
3-17. クロップス<9428>による大明商事・七つの海の買収
- 概要
クロップスは2015年に包装用品販売の大明商事を買収し、2019年には自然化粧品販売の七つの海の株式を70%取得しています。 - 背景・目的
大明商事買収では包装資材中心の事業を拡大し、グループの文具事務用品事業との相乗効果を狙いました。一方、七つの海買収では化粧品卸分野に進出し、取扱い商材の多角化を図っています。 - 効果・展望
100円ショップ向け商品や通販向け商材で実績を積むクロップスが、さらなる販路拡大と新カテゴリー開拓に取り組む動きといえます。
3-18. センコー<9069>によるスマイル買収
- 概要
センコーは2011年9月、包装資材の製造や食品・雑貨卸を手掛けるスマイル(東京都板橋区)を株式92.6%取得で子会社化しました。 - 背景・目的
物流分野に加えて商流分野にも進出を図るセンコーが、スマイルの小売・外食・通販・精密機器業界など多岐にわたる販売チャネルを取り込み、一体型ビジネスモデルを構築するのが狙いでした。 - 効果・展望
物流と商流をセットで顧客に提供できる「3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)+商社機能」の強化が進み、新規顧客獲得に寄与すると期待されています。
3-19. サンリツ<9366>による香港・中国子会社の包装資材事業譲渡
- 概要
サンリツは、包装資材の販売を手がける香港子会社や中国子会社を相次いで譲渡(2015~2016年)し、中国国内の輸配送業務から撤退しました。 - 背景・目的
中国市場での採算悪化や人件費上昇により事業継続が困難となったため、国際物流に専念する再編方針が打ち出されました。 - 効果・展望
事業撤退による収益改善と、コアである国際物流サービスへの集中を推進することで安定経営を図ります。
3-20. シモジマ<7482>による朝日樹脂工業・大倉産業買収
- 概要
シモジマは2019年に朝日樹脂工業(千葉県流山市)を子会社化し、2024年11月には衛生用品販売の大倉産業(札幌市)を子会社化すると発表しました。 - 背景・目的
シモジマは包装資材や紙製品に強みがあり、朝日樹脂工業や大倉産業を取り込むことで化学樹脂包装資材や衛生用品分野を強化する狙いがあります。 - 効果・展望
「小売・流通」に強いシモジマと「工場・物流」に強みを持つ朝日樹脂工業の組み合わせで相乗効果が期待され、衛生用品分野への進出はコロナ禍も相まって今後も需要が見込まれます。
3-21. ショーエイコーポレーション<9385>によるCS、ファインケメティックス買収
- 概要
2012年に日用雑貨卸のCS、2021年に医薬部外品・化粧品受託製造のファインケメティックスを買収しています。 - 背景・目的
ショーエイコーポレーションはフィルムパッケージに強みを持ち、OEMや海外輸入品など多彩な商品を扱います。CSの販路やノウハウ、ファインケメティックスの研究開発機能を取り込むことで、新規事業育成を狙っています。 - 効果・展望
医薬部外品・化粧品分野は付加価値が高く、既存のパッケージ技術と併せて差別化を進めることが期待されます。
3-22. エフピコ<7947>によるみやこひも、上田包装企業、アペックス、インターパック買収
- 概要
エフピコは2010年代から食品包装資材メーカー・卸を相次いで買収しており、みやこひも(2014年)、上田包装企業(2016年)、アペックス(2023年9月に完全子会社化)、インターパック(2010年)といった事例があります。 - 背景・目的
食品用トレー・容器のトップ企業として、周辺分野の製造・販売会社を取り込むことで、顧客に対する製品ラインアップを強化し、一気通貫のサプライチェーンを確立する狙いです。 - 効果・展望
地域の有力企業を傘下に収めることで販売拠点を拡充し、新製品の開発・提案力も強化されます。特にリサイクルトレーや環境配慮型容器などでのリードが見込まれます。
3-23. KPPグループホールディングス<9274>(旧・国際紙パルプ商事)による海外包装企業買収
- 概要
KPPグループHD(国際紙パルプ商事からの持株会社移行後)は2019年以降、Spicers Limited(豪州)、Domain Paper (Australia) Pty Ltdからの事業取得(2023年)、イタリアTpfの買収(2024年)など海外M&Aを加速させています。 - 背景・目的
従来の紙・パルプ卸に加えて包装資材分野への進出を強めるとともに、欧米やアジア・オセアニアでの拠点拡大によりグローバルな総合商社としての地位を確立する狙いです。 - 効果・展望
粘着ラベルや印刷用紙、ビジュアルコミュニケーション、木製パッケージなど多岐にわたる領域を取り込み、総合力を高めることで多国籍顧客へのワンストップサービスが可能になります。
3-24. サトーホールディングス<6287>による英国DataLase買収
- 概要
サトーホールディングスは2016年に英国DataLaseに出資し、翌2017年に株式を追加取得して完全子会社化しました。 - 背景・目的
DataLaseの持つ「インライン・デジタル・プリンティング」技術は、レーザープリンタによる高速かつラベルレスな印字を実現し、包装資材にダイレクト印刷を可能にします。サトーはバーコード・RFIDなど自動認識技術を強みとし、次世代印刷技術を取り込むことで新規事業の柱に育てる狙いです。 - 効果・展望
従来ラベルを貼っていた工程を省略できるためコストダウンや環境負荷軽減に寄与します。サトーホールディングスは本技術のグローバル展開を推進しており、今後も成長が期待されます。
3-25. GSIクレオス<8101>による食品向け包装フィルム加工の桜物産買収
- 概要
2022年3月、GSIクレオスは仙台市の桜物産を買収しました。桜物産は食品向け包装用フィルム・包装資材の加工・販売を手がけています。 - 背景・目的
東北・北海道地域で食品関連の需要を開拓する狙いがあり、既存の事業領域を補完しつつ新たな顧客を獲得する戦略です。 - 効果・展望
GSIクレオスの商社機能と桜物産の加工技術や地域密着の営業力を組み合わせることで、さらなる業容拡大が見込まれます。
3-26. cotta<3359>によるワークス(理美容通販)やアスコット、TERAZ買収
- 概要
製菓・製パン用食材・包装資材ECの「cotta」を運営する同社は、2024年11月に理美容商材通販のワークスを子会社化(持ち株会社GCJG30の全株式取得)、2023年8月には家庭用雑貨品卸のアスコットを子会社化、2024年9月にはSES事業・システム受託開発のTERAZも買収すると発表しています。 - 背景・目的
cottaは自社ECサイトの成功モデルをほかの業界にも展開し、多角化を進める方針です。理美容業界はEC化率が低く伸びしろが大きいと判断し、ワークスの顧客基盤を活用。アスコット買収では生協向け事業の拡大を狙い、TERAZ買収ではIT面でのサービス強化を図ります。 - 効果・展望
食材・包装資材ECというコアにとどまらず、ITソリューションや雑貨流通などを含めた総合的なEC企業へと成長を目指す動きがうかがえます。
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4. 包装資材業界M&Aの特徴的なポイント
- 需要の安定性と景気の波及効果
食品、医薬品、化粧品、日用品など必需品系の需要は比較的安定している一方、産業資材や自動車部品用パッケージ、建設分野向けなどは景気に左右されやすいです。多くの包装企業が複数の需要先を持つため、M&Aによって「顧客ポートフォリオの分散」を図る狙いも大きいです。 - 環境・リサイクル対応への取り組み
世界的にプラスチック使用量削減が叫ばれており、包装資材業界は特にバイオプラスチックや紙素材への置き換え、あるいは多層フィルムのリサイクル技術などへの対応が急務です。環境対応型製品の開発・販売に強い企業の買収や技術提携を模索するケースが増加しています。 - グローバルネットワークの構築
大手食品・飲料、医薬、化粧品メーカーなどが世界規模で生産・販売を行う以上、包装資材も現地調達を求められます。そのため、包装資材メーカーはグローバル展開を不可避とし、海外企業の買収や合弁を通じて現地生産・現地販売拠点を確保します。 - 製造工程の統合とトータルソリューションの提供
包装材だけでなく、印刷・成形・物流・資材管理などを一括で提案する動きも加速しています。印刷技術や加工設備を有する企業を取り込むことで、上流から下流まで一気通貫のバリューチェーンを構築しやすくなります。 - 事業承継M&Aの増加
包装資材業界は中小企業が多く、特に地方では後継者不足が深刻です。大手企業が地域の包装資材会社を買収し、地域拠点化する事例が多いのも特徴です。
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5. 環境要因と技術革新がもたらすM&Aへの影響
(1) プラスチック規制と代替素材への関心
欧州を中心にプラスチック製ストローや使い捨てプラスチック容器への規制が強化されるなか、紙製やバイオプラスチック製品が注目されています。例えばストロー製造で強みを持つ企業や、バイオマス素材の研究開発企業を買収する動きが活発化しています。また、自治体レベルでのごみ削減施策が進むにつれ、包装資材の軽量化やリユース可能な容器の開発も急務です。
(2) デジタル印刷・スマートパッケージへの期待
QRコードやRFIDタグ、温度センサーなどをパッケージに組み込む「スマートパッケージ」は物流効率やトレーサビリティの向上に寄与します。サトーホールディングスの英国DataLase買収のように、特殊印刷技術を取り込むことで一歩先を行く包装ソリューションを提供できる点が、M&Aの大きな動機となっています。
(3) DX化とECの伸長
ECの拡大に伴い、段ボールや包装材の需要は増加傾向にあります。同時に、倉庫内でのピッキング効率や物流の自動化が進んでおり、包装材料の形態やラベル印刷にも新技術が求められています。M&Aによる技術獲得や新規顧客の取り込みは、DX化への布石でもあります。
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6. 今後の展望とまとめ
包装資材業界におけるM&Aは、今後も国内外で活発に推移する見通しです。その理由として、以下が挙げられます。
- グローバルサプライチェーン対応の深化
多国籍企業の海外生産拠点に合わせた包装資材供給体制の構築は、これからも重要性を増すと考えられます。特にアジア・オセアニア地域の需要拡大は顕著であり、日本企業が現地企業を買収して即戦力化する動きは引き続き盛んでしょう。 - 環境対応需要の拡大
SDGs達成やプラスチック規制強化の潮流は続く見込みです。バイオマス素材、リサイクル可能パッケージ、紙素材などの技術を持つ中小・ベンチャー企業は大手からの買収提案を受けやすく、今後さらにM&Aが増えていく可能性があります。 - 顧客ニーズの高度化と付加価値創造
単なる包装材の提供だけでなく、ブランディングやプロモーションも考慮したトータルデザイン、物流システムに応じた最適パッケージなど、付加価値の高い提案が求められます。これに対応するためにも異分野の企業(例えば印刷・システム開発・マーケティング系企業など)の買収が増えるでしょう。 - 事業承継問題の深刻化
地域で堅実な事業を営む包装資材メーカーや卸売企業は、後継者難から大手への譲渡を選択するケースが続出しています。買い手の大手企業にとっては、地域シェアや既存顧客を一括で引き継げるチャンスとなるため、事業承継型M&Aはますます拡大すると考えられます。 - IT・ECとの連携強化
物流・商流のDX化が進むなかで、包装資材メーカーにもITやECのノウハウが必須になりつつあります。システム開発会社やEC専門企業を取り込むことは、企業競争力の源泉となり得ます。cottaやセンコー、クロップスなどの事例はその先例といえます。
以上のように、多様な企業が包装資材業界へ新規参入したり、既存企業が事業拡大・再編を図ったりする状況が今後も続くと考えられます。包装資材は人々の生活を支え、企業のサプライチェーンを支える重要な存在です。その業界がさらなる発展を目指すために、M&Aは不可欠な手段となっています。
しかし同時に、買収後の統合プロセス(PMI: Post-Merger Integration)の成否が企業価値向上のカギを握ります。技術や設備、人材、文化などを円滑に統合し、シナジーを最大化できるかが重要です。また、環境規制や社会のサステナビリティ志向が強まるなか、これらに迅速に対応しイノベーションを興せる企業のみが長期的に生き残れるでしょう。
包装資材業界のM&Aは、グローバルな潮流や技術動向、企業の事業戦略、地域経済の事情などが複雑に絡み合うダイナミックな動きです。上記の多岐にわたる事例からも分かるように、買収や譲渡の目的は単なる規模拡大にとどまらず、企業の存続戦略や競争力強化、さらには社会課題解決へのアプローチといった意味合いを持つ場合もあります。
今後も各企業の動向に注視しつつ、新素材の研究やDX推進などで革新的な取り組みが起きれば、その技術をいち早く取り込もうとするM&Aや資本提携がさらに増えることが予想されます。包装資材産業は目立たないようでいて、私たちの生活や産業活動には不可欠な基盤であるため、そこに注力する企業の再編動向は今後も大きな注目を集めるでしょう。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。