目次
  1. はじめに
  2. 金型業界におけるM&Aの背景と動向
    1. グローバル競争の激化
    2. 自動車業界の変革
    3. サプライチェーンの再編
    4. 技術革新への対応
    5. 事業継続の課題
  3. 事例紹介:金型業界のM&A一覧
    1. 1. 放電精密加工研究所<6469>、タイのアルミ押出用金型合弁会社を子会社化
    2. 2. 朝日インテック<7747>、金型設計・製作のニッタモールドを子会社化
    3. 3. 石塚硝子<5204>、ガラス・ペットボトル成型用金型製造の日本機械金型を子会社化
    4. 4. 富士紡ホールディングス<3104>の一連の金型会社買収
      1. 4-1. 東京金型の子会社化
      2. 4-2. IPMの子会社化
      3. 4-3. 藤岡モールドの子会社化
    5. 5. 田中精密工業<7218>、アルミダイカスト部品の鋳造金型を手がける米谷製作所を子会社化
    6. 6. 富士テクニカ宮津<6476>関連のM&A
      1. 6-1. 投資ファンドのフェニックス・キャピタルがTOBで子会社化(2013年3月15日)
      2. 6-2. 自動車用金型メーカーの宮津製作所から金型関連事業を取得(2010年9月17日)
    7. 7. 天馬<7958>、インドネシアの金型メーカーHyuk Jin Indonesiaを子会社化
    8. 8. 大豊工業<6470>、中国アルミ軸受素材メーカーの常州恒業軸瓦材料を子会社化
    9. 9. 不二精機<6400>、精密プレス加工の秋元精機工業を子会社化
    10. 10. 日進工具<6157>、プラスチック製品製造の牧野工業を子会社化
    11. 11. 双葉電子工業<6986>、プラスチック金型技術関連製品の日本ディー・エム・イーを子会社化
    12. 12. 長野計器<7715>、ダイカスト・マグネシウム金型製作の中村金型製作所を子会社化
    13. 13. 大同工業<6373>、金属プレス加工のスギムラ精工を子会社化
    14. 14. 精工技研<6834>、電子部品製造業の不二電子工業を子会社化
    15. 15. 日東精工<5957>、精密プレス金型の伸和精工を完全子会社化
    16. 16. 日本電産サンキョー<7757>、金型部品メーカーのタミーマシナリーを子会社化
    17. 17. 日本電産コパル<7756>、金型製造の合弁会社コパル・ヤマダを子会社化
    18. 18. 日本精機<7287>、超精密金型加工・成形の共栄エンジニアリングを子会社化
    19. 19. 日本マニュファクチャリングサービス<2162>、電子機器受託生産のテーケィアールを子会社化
    20. 20. 東洋鋼鈑<5453>、富士テクニカ宮津<6476>の株式を公開買付へ
    21. 21. 南部化成<7880>、合成樹脂事業のエクセル東海を取得
    22. 22. 三井化学<4183>、アーク<7873>にTOB
    23. 23. 三谷産業<8285>、金型製品メーカーの藤精工を完全子会社化
    24. 24. 三ツ知<3439>、精密機械金型の創世エンジニアリングを子会社化
    25. 25. 積水樹脂<4212>、射出成型事業のタイDaipla Systecを買収
    26. 26. 日本高周波鋼業、子会社の高周波精密で60人規模の希望退職を募集
    27. 27. 三光合成<7888>、積水工機製作所<6487>をTOBにより子会社化へ
    28. 28. 佐藤商事<8065>、子会社のエヌケーテックを高洋電機に譲渡
    29. 29. 黒田電気<7517>、京セラケミカルからタイの自動車部品用金型製造子会社を取得
    30. 30. 三光合成<7888>、インドのプラスチック成形用金型メーカーSANKO SEKISUI JRG TOOLINGを子会社化
    31. 31. 丸順<3422>、ホンダ四輪販売丸順を譲渡
    32. 32. メドレー<4480>、グッピーズ<5127>をTOBなどで子会社化
    33. 33. メディア工房<3815>、エクスクウェイドからソーシャルゲームの受託運営事業を取得
    34. 34. 三井松島ホールディングス<1518>、住宅部材製造のシステックキョーワを子会社化
    35. 35. ミネベア<6479>、プラスチック用金型メーカーの第一精密産業を子会社化
    36. 36. ニチダイ<6467>、米国子会社NICHIDAI AMERICAを韓国NAREへ譲渡
    37. 37. フィードフォースグループ<7068>、EC事業者向け出荷関連業務自動化サービスのシッピーノを子会社化
    38. 38. ワイエイシイ<6298>、金型加熱装置の国際電熱工業を子会社化
    39. 39. ミスミグループ本社<9962>、米金型部品メーカーDayton Progressなどを買収
    40. 40. テクノアソシエ<8249>、金属加工業の日本高分子工業研究所を子会社化
    41. 41. パンチ工業<6165>、マレーシアの金型部品メーカーを子会社化
      1. 41-1. パンチ工業、国内生産拠点の統廃合で200人の希望退職を募集(2023年7月5日)
    42. 42. テークスグループ<7719>、射出成型用金型の中国子会社を売却
    43. 43. タカギセイコー<4242>、精密プラスチック射出成形金型製造の中井製作所を黒田化学に譲渡
    44. 44. ティビィシィ・スキヤツト<3974>、美容室向けPOSシステム開発のVIDを子会社化
    45. 45. ダイヤモンドエレクトリックホールディングス<6699>、金型・プラスチック成形部品製造のクラフトを子会社化
    46. 46. ツバキ・ナカシマ<6464>、イタリアの樹脂成型メーカーRispaを子会社化
    47. 47. ディー・エヌ・エー<2432>、米スマートフォン向けゲームアプリのngmocoを買収
    48. 48. コアコンセプト・テクノロジー<4371>、SOLIZEから金型業務支援・生産管理システム事業を取得
    49. 49. 日本タングステン<6998>、中国の電気接点製品メーカーなど2社を子会社化
    50. 50. シリウスビジョン<6276>、特殊印刷機事業の子会社ナビタスマシナリーをツジカワに譲渡
    51. 51. プラスアルファ・コンサルティング<4071>、シフト・勤怠管理クラウドサービスのオーエムネットワークを子会社化
    52. 52. シコー<6667>、シンクテック・インベストメント傘下の中国子会社3社を取得
    53. 53. イリソ電子工業<6908>、コネクター用金型製造のエスジーディーを子会社化
    54. 54. エフテック<7212>、住友商事<8053>傘下で鋼材加工・金型製造のインドIndia Steel Summitを子会社化
    55. 55. アルコニックス<3036>の複数の買収事例
      1. 55-1. ジュピター工業の子会社化(2021年12月21日発表)
      2. 55-2. 富士プレスの子会社化(2016年12月20日発表)
      3. 55-3. ソーデナガノの子会社化(2022年4月26日発表)
    56. 56. アドウェイズ<2489>、モバイルコンテンツ事業会社のトイビィー・エンタテインメントを子会社化
    57. 57. アルインコ<5933>、金型設計・製作のウエキンを子会社化
    58. 58. クラウドワークス<3900>、IT人材ダイレクトマッチングのコデアルを子会社化
    59. 59. イチネンホールディングス<9619>、自動車装飾品製造のマルイ工業を子会社化
    60. 60. オリックス<8591>、金型大手のアーク<7873>をTOBにより子会社化へ
    61. 61. インタースペース<2122>の事業譲渡事例
    62. 62. アルファホールディングス<6633>、金型メーカーのTriTechを譲渡
    63. 63. I-PEX<6640>、MBOで株式を非公開化
    64. 64. CAC Holdings<4725>、製造業向け生産管理システムのシー・アイ・エム総合研究所を子会社化
    65. 65. TOWA<6315>関連の金型買収事例
      1. 65-1. レーザー開発のオムロンレーザーフロントを子会社化(2018年7月5日発表)
      2. 65-2. マレーシアK-Tool Engineeringから金型製造事業を取得(2023年2月27日発表)
      3. 65-3. シンガポールKINERGYの中国子会社から金型製造事業を取得(2018年9月21日発表)
  4. 金型業界M&Aの特徴と狙い
    1. 1. 技術獲得・事業領域拡大
    2. 2. サプライチェーン最適化と海外展開
    3. 3. 選択と集中・事業再生
    4. 4. EVや先端領域への対応
  5. 金型業界M&Aのメリットと課題
    1. メリット
    2. 課題
  6. 金型M&Aを成功させるためのポイント
    1. 1. 事前デューデリジェンスの徹底
    2. 2. 組織文化・品質基準のすり合わせ
    3. 3. 統合計画の具体化
    4. 4. 長期的視点とリーダーシップ
  7. 今後の展望
    1. 1. EV需要拡大と新素材対応
    2. 2. 医療・ヘルスケア分野の拡大
    3. 3. デジタル技術との融合
    4. 4. 中小企業の事業承継問題
  8. まとめ

はじめに

日本の製造業において、金型産業は欠かせない存在です。自動車、家電、電子機器、医療機器など、あらゆる分野で部品を量産する際には金型が必要になります。日本の金型産業は高い精度と技術力で世界的な評価を獲得し、一時期は世界の金型市場をリードしてきました。しかし近年は、新興国企業の台頭や自動車業界の電動化、さらにはグローバルサプライチェーンの複雑化などにより、金型業界も変革を迫られる局面に直面しています。

こうした環境変化の中で、金型企業が事業継続や成長戦略の一環として活用しているのがM&A(合併・買収)です。小規模の金型メーカーが大手企業グループに取り込まれたり、事業構造の転換のために事業譲渡が行われたりと、業界再編が進む事例が近年目立ってきました。本記事では、過去から最近に至るまでの具体的なM&A事例を通じて、その背景や目的、成果と課題を整理しながら、金型業界のダイナミックな変化を俯瞰していきます。

それでは、まず金型業界におけるM&A動向の概要を解説し、その後に具体的な事例を順を追って見ていきましょう。

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金型業界におけるM&Aの背景と動向

グローバル競争の激化

金型は、部品製造における重要な生産要素ですが、中国や韓国をはじめ、東南アジア諸国などの新興国企業が製造コストの安さを武器に参入してきたことで、価格競争が激化しています。かつては日本製金型が「高品質・高精度」として高い評価を得ていましたが、近年は新興国企業の技術力が向上し、価格優位と品質向上を両立できる企業が増えています。このように国際競争が激しくなる中で、日本の金型メーカーは高付加価値化や差別化戦略を迫られています。

自動車業界の変革

金型需要の大きな割合を占めるのが自動車業界です。従来のガソリン車に加え、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)などの普及により、自動車部品や構造が大きく変化しています。EV化に伴いアルミダイカスト部品の需要拡大や、大型化・軽量化への要求が高まる一方、内燃エンジン向け部品の需要は長期的に減少傾向にあります。その結果、金型の需要構造自体も変遷しており、メーカーは設備投資や技術開発を適切に見極める必要に迫られているのです。

サプライチェーンの再編

新型コロナウイルス感染症の拡大や地政学リスク、自然災害などにより、サプライチェーン断裂のリスクが顕在化しました。部品調達や生産拠点を多元化する動きが加速しており、金型メーカーも海外拠点展開や現地生産の強化など、サプライチェーン全体の柔軟性確保が急務となっています。このような動向も、M&Aによって海外企業や国内の協力会社を取り込む動きを後押ししています。

技術革新への対応

金型づくりには高度な職人的ノウハウが求められますが、近年ではCAD/CAM、CAE、3Dプリンタ、AIによる解析などデジタル技術が進歩し、設計や試作の効率化が可能になりました。特に次世代の金型は、微細加工技術や複合材料加工など、より高度な専門技術を要します。人材確保や技術継承が進みにくい環境下で、M&Aによる技術補完や人材獲得を図る事例も増えています。

事業継続の課題

日本の金型業界を支えてきた中小企業は、創業経営者の高齢化や後継者不足により事業承継が課題となっています。小規模工場が個人の手腕や長年の経験で技術を支え続けているケースも多いため、廃業リスクが業界全体の課題につながっているのです。そこで事業承継の一つの手段として、M&Aが利用されるパターンも増加しています。後継者がいない企業が、大手企業やファンドに買収されることで従業員の雇用を守り、技術の存続を図るという構図です。

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事例紹介:金型業界のM&A一覧

ここからは、実際に金型業界で行われたM&Aの事例について、順を追って概要を示しながら、背景や目的、シナジーなどを詳しく見ていきます。掲載順は報道日時や発表時期に沿っており、それぞれに解説を加えています。

1. 放電精密加工研究所<6469>、タイのアルミ押出用金型合弁会社を子会社化

  • 発表日: 2019年12月20日
  • 概要: 放電精密加工研究所はアルミ押出用金型製造を手がけるタイ合弁会社KYODO DIE-WORKS(KDT)の株式を追加取得し、持ち株比率を50%から51%に引き上げました。
  • 背景・目的: 同社は金型製造のみならず、自社開発のサーボプレス機や機能性塗料などの拡販にも注力しています。グローバル展開のスピードアップを図るためには、海外拠点を完全子会社化し、経営に強い関与をすることが有効と判断したのです。
  • シナジー: 今後タイ現地の顧客ニーズに迅速に対応し、サーボプレス機の導入や金型のメンテナンスサービス向上を図りつつ、関連製品の販路拡大を狙っています。

2. 朝日インテック<7747>、金型設計・製作のニッタモールドを子会社化

  • 発表日: 2024年11月14日
  • 概要: 朝日インテックは、金型設計・製作を手がけるニッタモールド(滋賀県甲賀市)の全株式を取得。ニッタモールドはタイにも生産拠点を持っています。
  • 背景・目的: 朝日インテックは、自社製品の安定供給や加工技術強化のため、金型製作技術を内製化したい狙いがありました。特に医療機器を含む精密部品分野でのリードタイム短縮を図るうえで、金型製造のノウハウ獲得は大きなメリットになると見込まれています。
  • シナジー: 朝日インテックが保有する医療分野のネットワークや品質管理体制と、ニッタモールドの高精度金型技術との融合により、ハイエンド製品への対応力が強化される見込みです。

3. 石塚硝子<5204>、ガラス・ペットボトル成型用金型製造の日本機械金型を子会社化

  • 発表日: 2023年5月10日
  • 概要: 石塚硝子は、ガラスやペットボトル成型用金型を製造する日本機械金型の全株式を取得。
  • 背景・目的: 日本機械金型とは取引関係がある企業で、ガラス容器やペットボトル分野で高い生産技術をもつ企業の取り込みにより、製造から容器デザイン、金型製作まで一貫したサービス体制を強化したい狙いがあります。
  • シナジー: ガラス容器やペットボトルの設計製造において、金型の内製化によるコスト削減、品質向上、短納期対応などの効果が期待されます。

4. 富士紡ホールディングス<3104>の一連の金型会社買収

富士紡ホールディングスは化成品事業を新たな柱と位置づけ、プラスチック用金型関連企業の買収を積極的に進めています。

4-1. 東京金型の子会社化

  • 発表日: 2018年8月31日
  • 概要: 金型設計・製造の東京金型を買収。これにより射出成形品の品質向上や一貫生産体制の強化を目指しています。

4-2. IPMの子会社化

  • 発表日: 2022年9月30日
  • 概要: プラスチック用精密金型設計・製作のIPMを傘下に収めるGFIホールディングスの全株式を取得。射出成形品関連の事業規模拡大を狙いとして、プラスチック加工技術の強化が進んでいます。

4-3. 藤岡モールドの子会社化

  • 発表日: 2019年11月29日
  • 概要: プラスチック用金型の設計・製造を行う藤岡モールドを買収。東京金型とのグループシナジーを発揮し、化成品事業全体の競争力向上が期待されています。

これら一連の買収は、富士紡HDが化成品事業(射出成形品など)を第4の柱に据え、国内外の生産体制を強化する戦略の一環です。金型の設計・製造工程を内包することで、生産効率と品質保証の両面をレベルアップさせています。

5. 田中精密工業<7218>、アルミダイカスト部品の鋳造金型を手がける米谷製作所を子会社化

  • 発表日: 2024年12月25日
  • 概要: 自動車向けアルミダイカスト部品用金型を製作する米谷製作所(新潟県柏崎市)の全株式を取得。
  • 背景・目的: 自動車の電動化に伴いアルミ部品は大型化・軽量化需要が高まっています。田中精密工業はアルミ部品の受注拡大を見据え、関連金型技術を強化する狙いがあります。
  • シナジー: 田中精密工業が持つ精密加工技術と米谷製作所のアルミ金型製作技術の融合により、EVやHV向け部品の受注拡大が期待されます。

6. 富士テクニカ宮津<6476>関連のM&A

6-1. 投資ファンドのフェニックス・キャピタルがTOBで子会社化(2013年3月15日)

  • 概要: 世界的な自動車需要の低迷や金型事業の価格下落によって経営が悪化していた富士テクニカ宮津を再生するため、投資ファンドのフェニックス・キャピタルがTOBを実施し、同社を子会社化しました。
  • 背景・目的: 2010年に企業再生支援機構の出資を受けていた富士テクニカ宮津は、再生機構の支援が一定のめどを見せたため、新たなパートナーとしてフェニックス・キャピタルが名乗りを上げた形です。
  • 買付価格: 1株当たり382円で、TOB公表前営業日の終値615円に対して約37.89%ディスカウント。

6-2. 自動車用金型メーカーの宮津製作所から金型関連事業を取得(2010年9月17日)

  • 概要: 富士テクニカが宮津製作所の金型関連事業を取得し、同時に企業再生支援機構に優先株を発行。約53億円の資金支援を受けました。主要取引銀行にも約31億3000万円の債務株式化(DES)を実施し、大幅な財務再構築を行った事例です。
  • 背景・目的: 中国企業との競争や国内過当競争の激化を踏まえ、日本の金型技術を保有する企業同士の事業統合が進められました。

7. 天馬<7958>、インドネシアの金型メーカーHyuk Jin Indonesiaを子会社化

  • 発表日: 2023年3月3日(同年4月19日子会社化完了)
  • 概要: 自動車や電子機器向けに高品質な金型を提供するインドネシアのPT. Hyuk Jin Indonesia(HJI)の全株式を取得。金型製造技術をグループ内に取り込み、プラスチック成形加工メーカーとしての競争力を強化する狙いです。
  • 背景・目的: 中期経営計画で「金型ビジネスの展開加速」を掲げていた天馬にとって、東南アジア市場で金型技術を確保することは急務でした。

8. 大豊工業<6470>、中国アルミ軸受素材メーカーの常州恒業軸瓦材料を子会社化

  • 発表日: 2012年3月28日
  • 概要: メタル(滑り軸受け)や金型事業を主軸とする大豊工業が、中国で最大のアルミ軸受素材メーカーである常州恒業軸瓦材料を完全子会社化。
  • 背景・目的: 海外初の軸受素材生産拠点を確保し、素材工程から加工工程までの一貫生産体制を海外で実現することで中国市場のシェア拡大を図りました。

9. 不二精機<6400>、精密プレス加工の秋元精機工業を子会社化

  • 発表日: 2019年9月12日
  • 概要: 精密プレス加工用金型設計・製作に加え、板金プレス部品、インサート成形品などを手がける秋元精機工業を買収。
  • 背景・目的: 不二精機は従来から樹脂成形品を主力としていましたが、金属プレス部品との複合化で新製品開発や競争力向上を目指しています。特に自動車のパワートレインが変化しても応用できる技術領域の拡張が狙いです。

10. 日進工具<6157>、プラスチック製品製造の牧野工業を子会社化

  • 発表日: 2011年2月2日
  • 概要: エンドミルなどの切削工具を主力とする日進工具が、プラスチック製品や金型の製造に強みをもつ牧野工業を買収。
  • 狙い: 金型関連事業とのシナジーを得て、切削工具の開発や販売拡大につなげる構想です。

11. 双葉電子工業<6986>、プラスチック金型技術関連製品の日本ディー・エム・イーを子会社化

  • 発表日: 2008年3月27日
  • 概要: 射出成形時のホットランナーシステムなど、プラスチック金型技術関連製品の開発に強みを持つ日本ディー・エム・イーを株式49.1%取得という形で子会社化(実質支配力基準)。
  • 背景・目的: 生産器材事業の強化を通じて、射出成形技術全般の高度化を図る狙いがありました。

12. 長野計器<7715>、ダイカスト・マグネシウム金型製作の中村金型製作所を子会社化

  • 発表日: 2019年1月31日
  • 概要: 計測制御製品の開発を手がける長野計器が、中村金型製作所(長野県諏訪市)を買収。ダイカストやマグネシウム金型の設計・製造技術を取り込み、金属成形技術を活用した新規開発案件の強化を図る狙いがあります。

13. 大同工業<6373>、金属プレス加工のスギムラ精工を子会社化

  • 発表日: 2023年1月31日(その後2024年1月31日に取得延期発表)
  • 概要: チェーン製造を主力とする大同工業は、金属プレス加工や金属プレス用金型製作を手がけるスギムラ精工(長野県岡谷市)の株式を追加取得し、持ち株比率を51%に引き上げる方針でしたが、受注状況の変化により生産移管手続きに時間を要するため取得を延期しています。
  • 背景・目的: 研究開発を大同工業、量産をスギムラ精工に分担し、生産効率を高める狙いでした。

14. 精工技研<6834>、電子部品製造業の不二電子工業を子会社化

  • 発表日: 2013年5月10日
  • 概要: 精密金型事業を主力とする精工技研が、不二電子工業(静岡市)を買収。精密複合成形や精密プレス成形などの技術を取り込み、成形品供給ビジネスへの転換を図る狙いです。

15. 日東精工<5957>、精密プレス金型の伸和精工を完全子会社化

  • 発表日: 2018年3月29日
  • 概要: めじ・ボルトを中心としたファスナー事業で知られる日東精工が、精密プレス金型や精密プレス部品を製造販売する伸和精工を買収。
  • 背景・目的: ファスナー事業との技術開発や販路相互活用を見込み、新たな技術的シナジーが期待されています。

16. 日本電産サンキョー<7757>、金型部品メーカーのタミーマシナリーを子会社化

  • 発表日: 2011年11月16日
  • 概要: 精密部品金型メーカーとして評価を得るタミーマシナリーを買収し、日本電産サンキョーの金型技術を強化するとともに、新市場開拓を進める構想です。

17. 日本電産コパル<7756>、金型製造の合弁会社コパル・ヤマダを子会社化

  • 発表日: 2008年7月22日
  • 概要: 半導体製造装置メーカーのアピックヤマダとの折半出資で設立された金型設計・製造会社コパル・ヤマダの株式所有割合を50.0%から68.4%に引き上げ、子会社化。
  • 背景・目的: 高精度金型技術を本格的に活用し、金型部門を強化・拡充する狙いです。

18. 日本精機<7287>、超精密金型加工・成形の共栄エンジニアリングを子会社化

  • 発表日: 2022年10月3日
  • 概要: 自動車や光学機械部品向けの超精密金型の加工・成形を手がける共栄エンジニアリングを子会社化。
  • 背景・目的: 金型加工や高精度成形技術を取り込むことで、日本精機グループの部品内製化率と競争力を高める狙いがあります。

19. 日本マニュファクチャリングサービス<2162>、電子機器受託生産のテーケィアールを子会社化

  • 発表日: 2011年6月22日
  • 概要: 総合EMS企業のテーケィアール(OEM・ODMサービスなど)を子会社化し、海外事業の安定化とODM・OEM事業の強化を図る。金型設計・製作やプレス加工も手がける企業で、幅広い製造技術を一括して取り込む狙いです。

20. 東洋鋼鈑<5453>、富士テクニカ宮津<6476>の株式を公開買付へ

  • 発表日: 2015年10月6日
  • 概要: 東洋鋼鈑が富士テクニカ宮津を完全子会社化する目的でTOBを実施。二段階公開買付で筆頭株主(フェニックス・キャピタル)保有分を取得した後、残余株式を取得する計画。
  • 背景・目的: 自動車プレス金型の製造技術を取り込み、グループの事業領域を拡大。

21. 南部化成<7880>、合成樹脂事業のエクセル東海を取得

  • 発表日: 2009年1月13日
  • 概要: 大型成形品を中心とする押出成形技術を持つ南部化成が、中小型成形品の特殊技術に強いエクセル東海を買収。金型製造にも強みを持ち、製販一体化によるシナジーを狙っています。

22. 三井化学<4183>、アーク<7873>にTOB

  • 発表日: 2017年11月29日
  • 概要: 三井化学はアークに対して株式の公開買い付け(TOB)を実施。アークは工業製品のモデル試作や金型製造などで事業を広げてきた企業。三井化学傘下入り後も上場は維持する方向性。
  • 背景・目的: 自動車市場や試作・金型領域のソリューション力強化。多様化、高度化する顧客ニーズに対応するための設備投資や技術開発を共同で行う狙いがあります。

23. 三谷産業<8285>、金型製品メーカーの藤精工を完全子会社化

  • 発表日: 2010年2月22日
  • 概要: エレクトロニクス関連事業セグメントを持つ三谷産業が、金型製品メーカーの藤精工を買収。その後ベトナム展開を視野に入れた金型現地製造計画を進め、グローバル生産体制を強化。

24. 三ツ知<3439>、精密機械金型の創世エンジニアリングを子会社化

  • 発表日: 2020年10月30日
  • 概要: 自動車部品向け冷間鍛造技術を持つ三ツ知が、通信・医療・自動車・半導体分野に実績を持つ創世エンジニアリング(福岡県久留米市)を買収。
  • 背景・目的: 新規顧客基盤の取り込みと事業拡大、さらに金型技術の相互補完を実現する狙いがあります。

25. 積水樹脂<4212>、射出成型事業のタイDaipla Systecを買収

  • 発表日: 2011年5月17日
  • 概要: 東南アジア市場に焦点を当てた事業拡大戦略の一環として、タイで射出成型や金型制作を手がけるDaipla Systecをダイセル化学工業とトクヤマから取得。

26. 日本高周波鋼業、子会社の高周波精密で60人規模の希望退職を募集

  • 発表日: 2022年4月29日
  • 概要: 自動車駆動系向け金型や工具の需要減に伴い、事業規模縮小と拠点統合を実施。電動化の流れで駆動系関連需要が落ち込む中、構造改革が迫られている事例です。

27. 三光合成<7888>、積水工機製作所<6487>をTOBにより子会社化へ

  • 発表日: 2015年3月6日
  • 概要: 三光合成が積水工機製作所を完全子会社化するためにTOBを実施。積水工機製作所はプラスチック成型用金型専門メーカーとして設立され、自動車部品用から医療用まで幅広い金型に対応可能。
  • 背景・目的: 海外新興メーカーとの競争が激化する中、意思決定の迅速化や戦略的事業運営体制の構築が必須と判断。

28. 佐藤商事<8065>、子会社のエヌケーテックを高洋電機に譲渡

  • 発表日: 2024年8月30日
  • 概要: 佐藤商事は事業ポートフォリオの見直しの一環で、鋼材・非鉄金属加工や金型治具製造を手がけるエヌケーテックの株式90%を高洋電機に譲渡。新潟工場は佐藤商事が新設したエヌケーテック新潟が引き継ぐ。
  • 背景・目的: グループ再編と選択と集中の一例。

29. 黒田電気<7517>、京セラケミカルからタイの自動車部品用金型製造子会社を取得

  • 発表日: 2012年4月5日
  • 概要: 黒田電気が京セラ傘下の京セラケミカルから、自動車部品用金型製造を手がけるKyocera Chemical (Thailand) Ltd.を買収。自動車産業が集中するタイでの事業基盤を強化。

30. 三光合成<7888>、インドのプラスチック成形用金型メーカーSANKO SEKISUI JRG TOOLINGを子会社化

  • 発表日: 2015年9月8日
  • 概要: インド企業SANKO SEKISUI JRG TOOLINGへの第三者割当増資を引き受け、出資比率を25%から75%に引き上げ。インド市場の金型需要を取り込む。

31. 丸順<3422>、ホンダ四輪販売丸順を譲渡

  • 発表日: 2018年3月19日
  • 概要: 自動車部品と金型の開発・製造に集中するため、ホンダ四輪販売丸順(ディーラー)を譲渡し、販売事業から撤退。

32. メドレー<4480>、グッピーズ<5127>をTOBなどで子会社化

  • 発表日: 2024年1月19日
  • 概要: 医療・介護・福祉分野の求人サイト大手グッピーズをTOBで買収。金型とは直接関係が薄いものの、M&A事例として業態転換・多角化の一例です。

33. メディア工房<3815>、エクスクウェイドからソーシャルゲームの受託運営事業を取得

  • 発表日: 2016年8月24日
  • 概要: デジタルコンテンツ制作企業による事業取得例。金型産業とは異なるが、事業譲渡(カーブアウト)の形態を示す一例。

34. 三井松島ホールディングス<1518>、住宅部材製造のシステックキョーワを子会社化

  • 発表日: 2021年1月21日
  • 概要: 非石炭事業への多角化投資として住宅部材メーカーを買収。金型開発や成形技術をグループ内で活用する狙い。

35. ミネベア<6479>、プラスチック用金型メーカーの第一精密産業を子会社化

  • 発表日: 2010年5月7日
  • 概要: 小型モーターやプラスチックギアなどを内製化するため、投資ファンドから第一精密産業を買収。

36. ニチダイ<6467>、米国子会社NICHIDAI AMERICAを韓国NAREへ譲渡

  • 発表日: 2009年2月13日
  • 概要: 米国の精密鍛造金型製造拠点を閉鎖し韓国企業に譲渡。受注減や生産コスト増大などを背景に事業再編を図った事例。

37. フィードフォースグループ<7068>、EC事業者向け出荷関連業務自動化サービスのシッピーノを子会社化

  • 発表日: 2021年10月14日
  • 概要: SaaS型クラウドサービス分野でのM&A。金型業界とは直接関係はないが、業務効率化やDX推進のための買収例。

38. ワイエイシイ<6298>、金型加熱装置の国際電熱工業を子会社化

  • 発表日: 2013年3月15日
  • 概要: ワイエイシイはヒーター関連技術とプレス金型加熱装置のノウハウを取り込むために、国際電熱工業(東京都立川市)を買収。

39. ミスミグループ本社<9962>、米金型部品メーカーDayton Progressなどを買収

  • 発表日: 2012年10月17日
  • 概要: 米国最大手の金型部品メーカーとカナダの金型部品製造事業を買収し、グローバル短納期供給体制を確立。世界市場でのシェア拡大を狙う大規模M&A。

40. テクノアソシエ<8249>、金属加工業の日本高分子工業研究所を子会社化

  • 発表日: 2008年10月31日
  • 概要: 独自の金型製作技術を持つ日本高分子工業研究所の熟練技術者を取り込み、高付加価値商品の創造と販路拡大を目指す。

41. パンチ工業<6165>、マレーシアの金型部品メーカーを子会社化

  • 発表日: 2013年8月12日
  • 概要: マレーシアのPanther Precision Toolsを完全子会社化し、東南アジアでの事業基盤を確立。

41-1. パンチ工業、国内生産拠点の統廃合で200人の希望退職を募集(2023年7月5日)

  • 概要: 国内金型部品事業をゼロ成長前提とし、生産を中国・ベトナムへ移管。コスト削減とグローバル再編を進めるため、大規模リストラに踏み切った例です。

42. テークスグループ<7719>、射出成型用金型の中国子会社を売却

  • 発表日: 2013年6月13日
  • 概要: 中国子会社である瀋陽特可思精密機械科技の金型・射出成型事業を切り離し、売却。中国市場の競争環境やコスト上昇などに対応する形です。

43. タカギセイコー<4242>、精密プラスチック射出成形金型製造の中井製作所を黒田化学に譲渡

  • 発表日: 2021年3月16日
  • 概要: グループにおける生産品目の選択と集中の一環。金型事業を切り離し、プラスチック成形品のコア領域へ資源集中。

44. ティビィシィ・スキヤツト<3974>、美容室向けPOSシステム開発のVIDを子会社化

  • 発表日: 2018年1月5日
  • 概要: 他業種でのM&A例。サブスクリプション型ビジネスモデルを取り込み、新規顧客獲得を目指す。

45. ダイヤモンドエレクトリックホールディングス<6699>、金型・プラスチック成形部品製造のクラフトを子会社化

  • 発表日: 2022年4月25日(8月24日譲渡完了)
  • 概要: 自動車用イグニッションコイルなどを主力とする同社が、プラスチック成形技術の内製化を進める狙いでクラフトを買収。

46. ツバキ・ナカシマ<6464>、イタリアの樹脂成型メーカーRispaを子会社化

  • 発表日: 2023年7月3日
  • 概要: 医療器具分野に強みを持つRispaを買収し、ヨーロッパ市場での金型開発や樹脂成形技術を取得。今後の海外販路拡大を狙う。

47. ディー・エヌ・エー<2432>、米スマートフォン向けゲームアプリのngmocoを買収

  • 発表日: 2010年10月12日
  • 概要: デジタルプラットフォーム分野でのM&A。金型業界とは関係が薄いが、事業拡大と技術確保の目的で海外ベンチャーを買収する手法の一例。

48. コアコンセプト・テクノロジー<4371>、SOLIZEから金型業務支援・生産管理システム事業を取得

  • 発表日: 2022年6月21日
  • 概要: 「KATANAVI」という金型設計製造NAVIシステム事業を買収し、自社開発基盤「Orizuru」との親和性を高める。金型のDX化を後押しする例。

49. 日本タングステン<6998>、中国の電気接点製品メーカーなど2社を子会社化

  • 発表日: 2010年3月15日
  • 概要: 中国市場での電気接点材料や精密金型の需要拡大に対応するため、現地企業を追加買収。

50. シリウスビジョン<6276>、特殊印刷機事業の子会社ナビタスマシナリーをツジカワに譲渡

  • 発表日: 2021年11月12日
  • 概要: 特殊印刷機事業が低迷し、画像検査事業への集中を図るために子会社を譲渡。

51. プラスアルファ・コンサルティング<4071>、シフト・勤怠管理クラウドサービスのオーエムネットワークを子会社化

  • 発表日: 2024年7月31日
  • 概要: IT・DX企業による顧客基盤拡大を目指す買収。金型業界には直接的な関連はありませんが、SaaS型サービスの拡充例として参考になります。

52. シコー<6667>、シンクテック・インベストメント傘下の中国子会社3社を取得

  • 発表日: 2010年11月18日
  • 概要: 金型部品・モーター製造拠点をまとめて取り込み、中国における製造体制を大幅に強化。

53. イリソ電子工業<6908>、コネクター用金型製造のエスジーディーを子会社化

  • 発表日: 2022年1月11日
  • 概要: 射出成形金型などを内製化し、コネクターの製造効率向上や品質管理を強化する戦略。

54. エフテック<7212>、住友商事<8053>傘下で鋼材加工・金型製造のインドIndia Steel Summitを子会社化

  • 発表日: 2022年3月24日
  • 概要: 住友商事が出資するインドの鋼材加工・金型製造企業をエフテックが取得。インド市場での事業拡大を狙う。

55. アルコニックス<3036>の複数の買収事例

アルコニックスは金属材料商社としての機能と製造業を組み合わせる「商社+メーカー」戦略を積極的に展開しており、金型関連企業の買収を複数進めています。

55-1. ジュピター工業の子会社化(2021年12月21日発表)

  • 概要: 精密コネクター用金属端子部品や金型製作を手がけるジュピター工業を買収。自動車やスマートフォン向けコネクター分野での需要拡大を見込む。

55-2. 富士プレスの子会社化(2016年12月20日発表)

  • 概要: 自動車向け精密プレス金型・プレス部品の製造を手がける富士プレス(愛知県大府市)を買収。生産技術力の向上を図る。

55-3. ソーデナガノの子会社化(2022年4月26日発表)

  • 概要: リチウムイオン電池向け機構部品に強みをもつソーデナガノを約88億円で買収。金型設計・製作と海外工場ネットワークを取り込み、EV時代を見据えた体制強化を実現。

56. アドウェイズ<2489>、モバイルコンテンツ事業会社のトイビィー・エンタテインメントを子会社化

  • 発表日: 2008年8月15日
  • 概要: インターネット広告大手のアドウェイズがモバイル系事業を強化するために買収した事例。

57. アルインコ<5933>、金型設計・製作のウエキンを子会社化

  • 発表日: 2021年11月9日
  • 概要: 足場材やDIY製品などを手がけるアルインコが、物流機器や建材用金属部品の深絞り成形に強いウエキン(大阪府東大阪市)を買収。

58. クラウドワークス<3900>、IT人材ダイレクトマッチングのコデアルを子会社化

  • 発表日: 2021年9月27日
  • 概要: 人材マッチングプラットフォーム同士の統合。金型業界には直接関係はありませんが、ビジネスモデル拡大のM&A例。

59. イチネンホールディングス<9619>、自動車装飾品製造のマルイ工業を子会社化

  • 発表日: 2023年9月28日
  • 概要: 自動車エンブレムや装飾部品を得意とするマルイ工業を買収。金型開発から成形品製造まで一貫して手がける体制を取り込み、合成樹脂事業におけるシナジーを期待。

60. オリックス<8591>、金型大手のアーク<7873>をTOBにより子会社化へ

  • 発表日: 2014年6月23日
  • 概要: アークが地域経済活性化支援機構のもとで再生を進める中、オリックスグループが買収。アークは積極的M&Aで事業を拡大していましたが、有利子負債の圧縮が追いつかず支援を求めた形。

61. インタースペース<2122>の事業譲渡事例

  • ローカル情報誌発行のオニオン新聞社を売却(2011年7月19日発表)
  • 通話課金型広告事業を譲渡(2009年9月8日発表)

いずれも主力事業への集中を図るための譲渡で、金型業界との直接的関連はありませんが、選択と集中の一例です。

62. アルファホールディングス<6633>、金型メーカーのTriTechを譲渡

  • 発表日: 2008年2月22日
  • 概要: アルファHDは当時、製造関連ソフトウェア事業へ注力する方向転換を行い、金型企業TriTechを売却した。

63. I-PEX<6640>、MBOで株式を非公開化

  • 発表日: 2024年11月7日
  • 概要: 旧社名・第一精工としてコネクター業界で成長してきたI-PEXが、経営陣による買収(MBO)を通じて非公開化を決定。金型技術を源流とし、パソコン・スマホ・自動車向けコネクター事業を展開。長期的視野での事業再編を目的に上場を廃止する。

64. CAC Holdings<4725>、製造業向け生産管理システムのシー・アイ・エム総合研究所を子会社化

  • 発表日: 2024年3月4日
  • 概要: 金型部門の生産管理システム「Dr.工程 Family」で知られるCIMを買収。金型製造現場の工程可視化やDX推進を支援するIT事業を強化。

65. TOWA<6315>関連の金型買収事例

65-1. レーザー開発のオムロンレーザーフロントを子会社化(2018年7月5日発表)

  • 概要: 半導体製造用精密金型・装置メーカーであるTOWAが、レーザー技術を取得して半導体後工程での新市場開拓を狙う。

65-2. マレーシアK-Tool Engineeringから金型製造事業を取得(2023年2月27日発表)

  • 概要: EV向けパワー半導体の需要拡大を見込み、東南アジアでの金型設計から製造までの一貫体制を確立する。

65-3. シンガポールKINERGYの中国子会社から金型製造事業を取得(2018年9月21日発表)

  • 概要: 中国での半導体産業育成と市場拡大を見据え、現地金型製造事業を取り込み、装置販売との相乗効果を狙う。

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金型業界M&Aの特徴と狙い

ここまで数多くの事例を紹介してまいりましたが、金型業界におけるM&Aには以下のような特徴や狙いが見受けられます。

1. 技術獲得・事業領域拡大

金型は職人的ノウハウが重要視される一方で、先端技術や大型化対応など継続的な設備投資や人材育成が必要です。そこでM&Aにより、即戦力となる技術や人材、設備を獲得し、自社の弱点を補完するケースが多く見られます。
また、自動車向け金型から家電・医療分野へ、あるいは樹脂金型からアルミダイカスト金型への拡大など、事業領域を広げるためにもM&Aは有効です。

2. サプライチェーン最適化と海外展開

国内のみならず海外拠点を確保し、現地生産・現地供給を可能とすることは、コスト競争力や納期短縮の点で大きなアドバンテージです。特にアジア各国や欧米で金型メーカーを子会社化することで、現地OEMやTier1企業との取引拡大を狙う事例が目立ちます。
また、サプライチェーンの強化を図るため、部品メーカーや素材メーカーが金型企業を取り込むケースも増えています。

3. 選択と集中・事業再生

金型企業の中には、事業不振や後継者不在により廃業の危機に瀕しているケースも少なくありません。そこに大手企業や投資ファンドが支援役として入り、事業再建やコスト削減、新たな市場開拓を支援する形でM&Aが行われます。
また、大手企業側にとっては、事業ポートフォリオの見直しで不採算部門を切り離したり、コア領域を強化するために特定の金型技術を持つ企業を買収したりするなど、「選択と集中」の経営判断がM&Aの背景となっています。

4. EVや先端領域への対応

自動車の電動化、軽量化、さらには精密電子部品や医療・ヘルスケア関連など、成長が期待される分野に取り組むには、高度な金型設計やシミュレーション技術が不可欠です。そのため、これらの先端領域向けに強みを持つ金型メーカーがM&Aのターゲットとなります。
買収側企業にとっては、既存の生産ラインを短期間に対応可能へアップグレードできる利点が大きいといえます。

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金型業界M&Aのメリットと課題

メリット

  1. 技術・ノウハウの取得
    買収先が持つ職人的技術や特許、専門人材を取り込むことで、自社内に蓄積するには長い年月がかかる技能を一気に獲得できます。
  2. 生産設備・販路の拡大
    海外工場や新規販路を一度に手に入れることができ、グローバルサプライチェーンの強化につながります。
  3. 開発スピードの向上
    金型の内製化により設計変更や試作が迅速化し、新製品投入スケジュールの短縮が可能になります。
  4. コスト削減とシナジー
    複数企業の統合による購買力の強化や設備の統廃合など、規模の経済を働かせることでコストダウンが期待できます。

課題

  1. 企業文化・技術の統合
    職人気質が強い分野ゆえに、買収後の統合プロセスで摩擦が生じることがあります。技術継承や品質管理の考え方に違いがあると、シナジー創出が遅れる可能性があります。
  2. 過剰設備・人員の整理
    生産拠点が重複すると余剰人員や設備が生まれ、再編やリストラを行わざるを得ない事例が散見されます。こうした構造改革には労使双方に大きな負担が伴います。
  3. 迅速な投資回収が難しい
    金型投資や製造設備は高額であり、開発期間も長いため、ROI(投資回収)には時間がかかります。長期的視点での計画が求められます。
  4. グローバルリスクへの対応
    地政学リスク、為替リスク、感染症拡大など、海外展開に伴う不確定要素が多くあります。現地事情に精通した人材や専門部隊を配置するなど、周到なリスク管理が必要です。

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金型M&Aを成功させるためのポイント

1. 事前デューデリジェンスの徹底

金型製造では工場の設備状況や人材スキル、稼働率、顧客リストの評価が重要です。特に金型メーカーの場合、一部の大口顧客に依存している場合があり、需要変動リスクが大きいことに注意する必要があります。
また、職人レベルでのノウハウが数値化されにくいため、現場視察やインタビューを通じた把握が欠かせません。

2. 組織文化・品質基準のすり合わせ

金型づくりは品質や納期管理が厳しく、買収側企業と被買収企業とで管理基準やQC(品質管理)手法が異なる場合があります。買収後のトラブル防止には、早期の共同プロジェクトチーム立ち上げや標準化への取り組みが不可欠です。

3. 統合計画の具体化

M&A後の統合(PMI)でどのように事業や組織を再編するかを、買収前の段階で大まかに設計しておくことが重要です。

  • 生産拠点の役割分担
  • 技術開発や試作部門の集約
  • 人員配置やリストラ計画
  • ITシステムや基幹業務システムの統合
    これらを計画的に進めることで、シナジー創出をスムーズに実現できるでしょう。

4. 長期的視点とリーダーシップ

金型ビジネスは一朝一夕で成果が出る領域ではありません。技術力を高めるには設備投資や人材育成が不可欠であり、同時に顧客からの信頼を確立するには時間がかかります。したがって、短期的な成果を求めるのではなく、中長期的な視点で統合効果を見込むリーダーシップが重要となります。

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今後の展望

1. EV需要拡大と新素材対応

自動車業界は電動化に加え、樹脂化・アルミ化などの軽量素材活用が一段と進むと見られています。バッテリーケースやインバーターケースなど、EV特有の部品金型に対応できる企業が今後の市場を牽引するでしょう。

2. 医療・ヘルスケア分野の拡大

超高齢社会を迎えた日本のみならず、海外でも医療機器需要は増加が見込まれます。精密加工技術が重要な医療機器の金型やプラスチック射出成形ニーズは今後も増大していく可能性が高く、ここでもM&Aが活発化する見通しです。

3. デジタル技術との融合

AIやデジタルツイン、3Dプリンタの活用により、金型設計・製造工程のDXはさらに進むと考えられます。既存の金型メーカーがIT系企業を買収したり、IT企業が製造業に参入する形でのM&Aが増えていく可能性もあります。実際、SOLIZEの金型業務支援システム買収などは一つの先例といえます。

4. 中小企業の事業承継問題

日本全国に数多く存在する中小金型企業では、今後も後継者不足が深刻化する恐れがあります。大手企業やファンドがこうした企業を買収することで技術を存続させ、競争力を保つケースが増えると見られます。

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まとめ

金型業界は、製造現場の根幹を担う重要な産業でありながら、世界規模の競争激化やEVシフト、そして人材・技術継承など多くの課題に直面しています。その解決策の一つとしてM&Aは有効な手段となり、多種多様な事例が展開されてきました。

  • 海外企業の買収や合弁会社の子会社化: グローバル市場でのサプライチェーン構築や技術・人材獲得を目指す。
  • 事業再生型M&A: 経営難に陥った金型メーカーをファンドや大企業が救済し、再建を図る。
  • 選択と集中・カーブアウト: 大手企業が不採算部門やコア事業とのシナジーが薄い金型子会社を売却する事例。
  • 事業承継ニーズ: 高齢化や後継者不在の中小金型企業をM&Aでつなぐ動き。

技術革新とグローバル化が進む中、金型産業は引き続き重要な役割を果たすと考えられます。しかし、コスト競争力や品質管理、人材確保のために一定規模や海外拠点が求められる現状を踏まえると、M&Aによる再編は今後も続くでしょう。特に、自動車業界の変革期にあっては、アルミダイカスト金型やプラスチック射出成形金型など、特殊技術を持つ企業が引き合いを強める可能性が高いです。

最後に、M&Aが成功裏に終わるかどうかは、買収後の統合作業(PMI)と長期的な成長戦略にかかっています。金型企業が持つ繊細な技術ノウハウは、現場力に支えられている部分が大きく、人材育成や組織風土の融合が欠かせません。買収側企業は短期的なリターンだけでなく、長期的な視野で相手企業の強みを最大限発揮させるマネジメント体制を構築する必要があります。

以上のように、金型業界のM&A動向は日本の製造業の行方を占ううえでも非常に注目度が高いテーマです。業界関係者や投資家、さらには金型需要を持つ自動車・電子機器メーカーにとっても、これらの動きは自社ビジネスに直結する重要事項といえるでしょう。本記事が、金型業界におけるM&Aの全体像や個別事例の理解に少しでも役立てば幸いです。