- はじめに
- 1.建築・建設業界におけるM&Aの背景と特徴
- 2.建築・建設業界のM&A事例一覧と考察
- 2-1.事例一覧
- (1) あさかわシステムズによるT&Cテクノロジーズの子会社化
- (2) ロゴスホールディングスによる坂井建設の子会社化
- (3) 日特建設による麻生フオームクリートのTOB
- (4) 大栄環境による海成の子会社化
- (5) SAAFホールディングスによるユーシンの子会社化
- (6) メディアファイブによる匠工房の経営陣への譲渡
- (7) ASNOVAによる足場架払工事サービス事業の譲渡
- (8) ヒビノによる豪InSight Systems Holdingsの子会社化
- (9) セグエグループによるジェイズ・テレコムシステム株式譲渡
- (10) OCHIホールディングスによる弓田建設の子会社化
- (11) コンドーテックによる上田建設の子会社化
- (12) E・Jホールディングスによる東京ソイルリサーチの子会社化
- (13) ジオリーブグループによる丸西の子会社化
- (14) 倉元製作所によるUNOクォーツ石英火加工事業の取得
- (15) オートバックスセブンによるPCTホールディングスの子会社化
- (16) 美樹工業によるヒョウ工務店の子会社化
- (17) ジオリーブグループによるひらいホールディングスの子会社化
- (18) キムラタン<8107>によるイストグループ3社の子会社化
- (19) エフティグループ<2763>によるジャパンTSSの譲渡
- (20) JRC<6224>による高橋汽罐工業の子会社化
- (21) チェンジホールディングス<3962>による東光コンピュータ・サービスの子会社化
- (22) アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>によるシンガポールSupaspaceの子会社化
- (23) トーカロ<3433>によるNEIS & TOCALO(Thailand)の追加出資
- (24) 交換できるくん<7695>によるハマノテクニカルワークスなど3社の子会社化
- (25) JRC<6224>による向井化工機の子会社化
- (26) セントケア・ホールディング<2374>による上の組の介護事業取得
- (27) 工藤建設<1764>による日建企画の子会社化
- (28) エルアイイーエイチ<5856>によるエス・サイエンス<5721>傘下のなごみ設計子会社化
- (29) REVOLUTION<8894>による投資用ワンルームマンション買い取り再販のリパークなど2社の子会社化
- (30) イチケン<1847>による片岡工業の子会社化
- (31) ラストワンマイル<9252>によるSHCを株式交換で子会社化
- (32) サンゲツ<8130>によるシンガポールD’Perceptionの子会社化
- (33) 日本ハウズイング<4781>によるMBOで株式を非公開化
- (34) トーエネック<1946>によるタイTri-En TOENECの追加出資
- (35) 日本電技<1723>による台東設備を子会社化
- (36) ハリマビステム<9780>によるTECサービスの子会社化
- (37) AKIBAホールディングス<6840>によるブランチテクノの子会社化
- (38) 信和<3447>によるCTRの買収(ヤグミグループ統括)
- (39) ピーエス三菱<1871>による東葉製作所の子会社化
- (40) 小野建<7414>による三豊鋼業の子会社化
- (41) オービス<7827>による寿鉄工の子会社化
- (42) トーアミ<5973>による型枠工事業の中條工務店子会社化
- (43) アンビションDXホールディングス<3300>によるフレンドワークスの子会社化
- (44) 日本エコシステム<9249>によるエコベンの子会社化
- (45) 成友興業<9170>による木本建興の子会社化
- (46) カゴメ<2811>による米国インゴマー・パッキングの子会社化
- (47) 大栄環境<9336>による栄和リサイクルの子会社化
- (48) 三菱電機<6503>による北弘電社<1734>の完全子会社化
- (49) アーバネットコーポレーション<3242>によるケーナイン子会社化
- (50) スバル興業<9632>によるテス東北の子会社化
- (51) ニッソウ<1444>によるささきの子会社化
- (52) セキュア<4264>によるジェイ・ティー・エヌの子会社化
- (53) 旭化成ホームズによる中央ビルト工業<1971>のTOB
- (54) エムティジェネックス<9820>によるアイテックの子会社化
- 3.M&Aの主な狙いと効果
- 4.M&Aプロセスにおける留意点
- 5.M&A成功のためのポイント
- 6.まとめと今後の展望
- 参考にしたM&A事例一覧(要点まとめ)
- おわりに
はじめに
近年、建築・建設業界における企業の再編や事業承継のニーズが高まり、M&A(合併・買収)が積極的に活用されるケースが増えてきています。業界を取り巻く環境として、少子高齢化による労働力不足や担い手不足、業務効率化の要請、さらに脱炭素化や持続可能な社会を見据えた建設需要の変化などが挙げられます。こうした環境変化に対応して企業価値を向上させるためにも、M&Aは重要な経営戦略の一つになっています。
本記事では、建築・建設業界におけるM&Aの動向やポイント、そして実際の事例を踏まえながら、M&Aがどのように進められ、どのような効果を狙っているのかを詳しく解説します。さらに、一連の事例として掲載された売買・譲渡のニュースを取り上げ、それぞれの背景や目的、シナジー効果などについて考察していきます。読み進める中で、建築・建設企業がM&Aを活用してどのように生き残り戦略を描いているのか、ぜひ理解を深めていただければ幸いです。
1.建築・建設業界におけるM&Aの背景と特徴
1-1.業界の現状
建築・建設業界は、公共事業や民間設備投資など社会インフラの整備を担う重要な産業です。一方で、公共事業の縮小や少子高齢化、人口減少による需要の変動、働き手不足の深刻化など多面的な課題が存在します。こうしたなか、大手のゼネコンや専門工事会社のみならず、中堅・中小の建設企業も含めて業務効率化や生産性向上、新市場への進出などが課題となっています。
昨今のデジタル技術の進歩や建築工法の高度化、さらにゼロカーボンや循環型社会を見据えた建設ニーズの変化は、企業に大きな転換を迫っています。その結果、自社だけのリソースでは対応が難しい場合に、M&Aを通じて必要な技術や拠点、人材を取り込む戦略が増えています。
1-2.建築・建設業界特有のM&Aの特徴
建築・建設業界におけるM&Aの特徴として、以下の点が挙げられます。
- 地域性の強さ:
建築・建設業は、地域密着型で展開されるケースが多いです。公共事業や地域インフラ工事などは地元企業が主体となることも少なくありません。したがって、地方で強い営業基盤を持つ企業を子会社化することで、他地域への進出や販路拡大を図る動きがしばしば見られます。 - 技術力や許認可の継承:
建築・建設工事で必須となる許認可の取得や技術者の確保、専門工法のノウハウなどは大きな参入障壁となります。M&Aは、そうした技術や許可、人的リソースを一挙に取り込む手段として有効です。 - 工事現場での生産・施工力の補完:
職人不足や施工体制の拡充などのニーズから、M&Aを通じて協力会社を直接参加させる、あるいは工事の内製化を進める動きも多いです。大きなプロジェクトを安定して受注するには施工体制の強化が欠かせません。 - 事業承継ニーズの高まり:
中小企業の多い建設業界では、後継者不在による事業承継の問題が深刻です。廃業を回避し社員や取引先を守るためにM&Aを活用するケースが増加しています。 - IT・DXの推進:
建設現場でもBIMやクラウド管理などのデジタル技術が不可欠となり、IT企業やソフトウェア開発会社とのM&A、資本業務提携が活発化しています。
2.建築・建設業界のM&A事例一覧と考察
ここからは、本記事の参考資料として挙げられている建築・建設業界に関連するM&A・事業譲渡事例を見ていきます。実際の事例に目を通すことで、どのような目的や背景があったのかをより具体的に把握できるでしょう。
2-1.事例一覧
以下、(1)から順に事例の概要や目的についてまとめます。案件数が非常に多いため、ポイントをかいつまんで解説し、最後に総括します。
(1) あさかわシステムズによるT&Cテクノロジーズの子会社化
事例概要:
あさかわシステムズがソフトウェア開発会社T&Cテクノロジーズを子会社化
T&Cは建設業向けの工事写真管理や電子報告書管理などに強み
目的・狙い:
建設業向けソフトウェアの開発力強化
相乗効果による販路拡大
建設業界では写真管理や書類管理の電子化など、事務効率を高めるソリューションの重要性が増しています。ソフトウェア開発企業を取り込むことで、サービス拡充やDX推進を狙う典型的な事例です。
(2) ロゴスホールディングスによる坂井建設の子会社化
事例概要:
ロゴスホールディングスが注文住宅設計・施工の坂井建設を子会社化
新潟県における注文住宅ブランド「ディテールホーム」の運営
目的・狙い:
新潟県でのシェア向上
集中と選択で注文住宅事業の強化
地域で強いブランド力を持つ住宅会社を取り込むケース。比較的歴史ある企業を買収し、そのノウハウや地域でのシェアを活用する狙いがあります。
(3) 日特建設による麻生フオームクリートのTOB
事例概要:
日特建設がグループ内再編の一環として、同じ麻生グループの麻生フオームクリートをTOBで完全子会社化
気泡コンクリート工事大手を取り込むことで、特殊土木工事とのシナジー追求
目的・狙い:
麻生グループ全体の再編
地盤改良などの特殊工事事業を行う日特建設と気泡コンクリート工事の技術連携
同じグループ内企業の再編として、少数株主を含めた完全子会社化を実施するパターン。グループ総体として生産性向上と経営資源の再集中を図ることが狙いです。
(4) 大栄環境による海成の子会社化
事例概要:
大栄環境が建物解体業の海成を子会社化
関東エリアでの廃棄物処理事業強化
目的・狙い:
解体工事機能をグループに取り込み、解体から廃棄物処理まで一気通貫で受注
受け入れ量増加や営業エリア拡大
建物解体業は解体後の廃棄物処理が大きな収益チャンスとなり得ます。大栄環境は解体機能を自社グループで統合することで、ワンストップサービスを実現し収益拡大を見込んでいます。
(5) SAAFホールディングスによるユーシンの子会社化
事例概要:
SAAFホールディングスが場所打ちコンクリート杭工事を手がけるユーシンを子会社化
目的・狙い:
地盤調査・改良分野でのシナジー
大型建築物の基礎工事に強みを持つユーシンの技術を活用
杭工事などの地盤関連工事は技術的ノウハウや施工実績が重視されます。そこに強みのある企業を取り込むことで分野拡大し、グループ全体の工事施工力を高める典型例です。
(6) メディアファイブによる匠工房の経営陣への譲渡
事例概要:
メディアファイブが内装工事子会社の匠工房を経営陣に譲渡
事業の選択と集中
目的・狙い:
本業であるIT関連やソフトウェア開発にリソースを集中
内装工事事業の売却により、長期的戦略に合致する事業領域にシフト
多角化によって取得した企業を手放すパターン。グループが求める事業戦略上、内装工事はシナジーが薄いと判断され、経営陣に売却(MBO)された事例です。
(7) ASNOVAによる足場架払工事サービス事業の譲渡
事例概要:
ASNOVAが足場架払工事サービスの事業部門を譲渡
経営資源の最適配分としてサービス部門を手放す
目的・狙い:
主要事業である足場資材の販売・レンタルなどに注力
サービス部門の譲渡による収益構造の効率化
仮設足場資機材の製造・販売会社が、自ら工事サービスを行う部門を別会社に売却することで、コスト構造や戦略的な収益拡大を狙うケースです。
(8) ヒビノによる豪InSight Systems Holdingsの子会社化
事例概要:
ヒビノがオーストラリアで音響・映像機器販売・施工を行うInSight Systemsを80%取得
アジア太平洋地域への事業拡大
目的・狙い:
システム導入後の運用ノウハウを獲得
海外での施工事業の足掛かり拡大
ヒビノは音響・映像機器のシステム構築で国内実績を持つ企業。グローバル展開を視野に、オセアニア地域での施工・販売チャネル強化を狙います。
(9) セグエグループによるジェイズ・テレコムシステム株式譲渡
事例概要:
セグエグループがITシステム構築子会社のジェイズ・テレコムシステム株式95%を譲渡
ネットワークセキュリティ分野に経営資源を集中
目的・狙い:
選択と集中に伴い、音声系ネットワーク構築を行う子会社を電気通信工事企業に譲渡
自社は得意とするセキュリティソリューションに特化
こちらはIT企業の例ですが、通信建設工事とも関連するM&A事例です。自社の強みであるセキュリティ分野に注力するため、別領域の子会社を売却した形です。
(10) OCHIホールディングスによる弓田建設の子会社化
事例概要:
OCHIホールディングスが福島県の弓田建設(売上高29億1000万円、営業利益2億1100万円)を子会社化
土木・舗装・不動産開発など幅広く展開
目的・狙い:
東北エリアの建設事業ネットワーク拡充
非住宅分野の強化
東北地方での事業基盤確保と、新たな分野への取り組みなど、総合的な観点で地方の優良建設会社を取り込んだ事例といえます。
(11) コンドーテックによる上田建設の子会社化
事例概要:
コンドーテックが架払工事を手掛ける上田建設(北海道苫小牧市。売上高4億8600万円)を子会社化
プラント工事現場の足場技術を取り込む
目的・狙い:
仮設足場工事領域の拡大
北海道エリアでの受注強化
北海道を含む地方市場での施工体制拡大を目指す典型的な事例です。大都市圏のみならず、全国的にサービスを拡充するための買収が増えています。
(12) E・Jホールディングスによる東京ソイルリサーチの子会社化
事例概要:
E・Jホールディングスが地質調査や解析で実績を持つ東京ソイルリサーチを子会社化
後継者問題でオリックスの傘下に入っていた同社を再度売買
目的・狙い:
事業領域・顧客基盤の拡張
地質調査・耐震診断ニーズの高まりを受け、一気に市場シェアを獲得
地質調査や耐震診断は社会インフラの老朽化に伴い需要が伸びています。専門企業を買収することで技術力を底上げし、受注の増大を狙うケースです。
(13) ジオリーブグループによる丸西の子会社化
事例概要:
ジオリーブグループが商業施設や公共施設などの内装工事を手がける丸西(仙台市。売上高26億1000万円)を子会社化
非住宅分野での事業基盤強化
目的・狙い:
人口減少・少子高齢化で住宅分野が縮小する中、非住宅系の内装工事領域でのシェア獲得
丸西の長年の実績と技術を吸収
住宅リフォーム・新築分野だけでなく、商業施設・公共施設・工場などの施工を取り込むことで、会社としてのポートフォリオを拡げる事例です。
(14) 倉元製作所によるUNOクォーツ石英火加工事業の取得
事例概要:
倉元製作所がUNOクォーツ(茨城県神栖市)から石英火加工事業を会社分割で取得
半導体製造装置部品などの高精度加工技術を内製化
目的・狙い:
ガラス基板加工のコストダウンと生産性向上
新分野への積極展開
半導体関連の設備投資増加を背景に、ガラス・石英加工技術を新たに取り込むことで、更なる事業拡大を目指す動きです。
(15) オートバックスセブンによるPCTホールディングスの子会社化
事例概要:
オートバックスセブンが電気設備工事のパワーコントロールテクニックを傘下に持つPCTホールディングス(東京都港区)を買収
自宅用EV充電器の据え付け工事対応力を強化
目的・狙い:
EV市場の拡大を見据えた充電インフラ設置事業への本格参入
パワーコントロールテクニックの電気設備工事技術を活用
今後EVやPHVの普及が進むと見込まれ、家庭や事業所への充電インフラ整備が増えることから、工事企業を傘下に取り込んだ事例です。
(16) 美樹工業によるヒョウ工務店の子会社化
事例概要:
美樹工業が神戸市中心に建築工事を行うヒョウ工務店を子会社化
技術者と施工会社の相互活用
目的・狙い:
美樹工業は地場ゼネコンとして兵庫県を基盤にしており、建築の施工体制強化
オリジナルの技術や地域顧客を取り込む
ヒョウ工務店は比較的小規模ながら安定的業績を持ち、神戸市などで強い地盤を構築している企業をM&Aで取り込み、より大きな工事を受注しやすくする戦略が見えます。
(17) ジオリーブグループによるひらいホールディングスの子会社化
事例概要:
ジオリーブグループが千葉県市原市のひらいホールディングス(売上高141億円)を完全子会社化
プレカット木材や不動産、戸建住宅建築など多様な住関連事業
目的・狙い:
千葉エリアでの事業基盤を強化
住関連のバリューチェーン拡大
プレカット工場を持つひらいHDを取り込むことで、資材販売から建築施工まで一貫した体制を構築し、関東エリアのシェア拡大を狙います。
(18) キムラタン<8107>によるイストグループ3社の子会社化
事例概要:
キムラタンが不動産販売・賃貸のイストなど3社(イスト、ライブ、コネクト)を買収
ベビー服から不動産事業へ事業ポートフォリオを転換
目的・狙い:
既存事業の市場縮小に対応し、新たな収益柱である不動産事業を育成
ベビー服事業が苦戦する中、不動産事業での安定収益確保を狙う動きです。リフォーム工事など住関連工事に関連するシナジーも期待されます。
(19) エフティグループ<2763>によるジャパンTSSの譲渡
事例概要:
エフティグループが通信・電気設備工事子会社のジャパンTSSをICコーポレーションに譲渡
グループ体制見直しでの一環
目的・狙い:
LED照明やOA機器販売に注力し、工事部門を切り離す
ICコーポレーションは工事・保守サービスをトータルに手がける体制強化
自身の事業再編と譲渡先企業の更なる事業拡大を両立させるM&A事例です。
(20) JRC<6224>による高橋汽罐工業の子会社化
事例概要:
JRCが原子力・火力・バイオマス発電所などの工事や補修・保守を手がける高橋汽罐工業を買収
グループ全体の工事サービス範囲を拡大
目的・狙い:
コンベヤー搬送設備の製造事業に加え、各種発電所の設備保守を内製化
サービス領域の拡充と安定収益の確保
発電所関連工事は定期メンテナンス需要が安定しており、グループの基盤拡大を狙う事例です。
(21) チェンジホールディングス<3962>による東光コンピュータ・サービスの子会社化
事例概要:
チェンジHDが森林組合向けシステムや健診システムを全国販売する東光コンピュータ・サービスを完全子会社化
建設工事との関連としては、橋梁補修工事や鉄鋼加工を持つグループのITシステム構築
目的・狙い:
DX推進企業として地域IT企業を取り込み、サービスメニュー拡大
地方公共団体や森林組合などのニーズに対応
建設事業との直接的関連は薄いものの、同グループに橋梁や不動産関連企業がいるため、ITシステム連携でのシナジーが期待されます。
(22) アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>によるシンガポールSupaspaceの子会社化
事例概要:
シンガポールで内装設備工事を行うSupaspaceを株式取得により子会社化
公団住宅のリフォーム市場へ参入
目的・狙い:
新興国やアジア圏での内装需要を取り込み
日本製建材や住宅設備機器の海外販路拡大
海外進出のために現地企業を設立・子会社化し、ローカルマーケットを攻略する典型事例です。
(23) トーカロ<3433>によるNEIS & TOCALO(Thailand)の追加出資
事例概要:
トーカロがタイ合弁会社のNEIS & TOCALOの株式を追加取得し子会社化
溶射加工事業の海外展開を加速
目的・狙い:
合弁相手から株式を買い取り、経営資源を溶射加工に集中
自動車部品や建設機械部品などの耐摩耗加工ニーズ取り込み
ASEAN地域での製造業需要を狙い、海外合弁会社を買い増しする形です。
(24) 交換できるくん<7695>によるハマノテクニカルワークスなど3社の子会社化
事例概要:
住宅設備機器販売・工事をオンライン注文で展開する交換できるくんがハマノテクニカルワークス、クリエイション、エボリューションの3社を買収
修理代行事業や業務システム開発、施工スタッフの募集・研修を自社で内製化
目的・狙い:
BtoB領域への展開強化
住宅設備機器メーカーとの取引拡大
ウェブによる住宅設備機器交換工事を核に成長してきた企業が、新たに修理代行やITシステム開発を内製化し、包括的サービスを提供できる体制を築いた事例です。
(25) JRC<6224>による向井化工機の子会社化
事例概要:
JRCが水処理プラントや環境プラントを製作する向井化工機を買収
コンベヤー搬送設備以外にも水処理領域など多方面に展開
目的・狙い:
広範な製品群とワンストップでソリューション提供
インフラメンテナンス需要への対応
廃水処理や上下水道など、ライフライン関連の補修・更新は継続的需要が見込まれる分野です。機械設備メーカーがそこへ進出する好例といえます。
(26) セントケア・ホールディング<2374>による上の組の介護事業取得
事例概要:
セントケア・ホールディングスが土木・建築工事を手がける上の組(宮城県岩沼市)からデイサービスや居宅介護事業を譲り受け
介護事業の基盤拡大
目的・狙い:
介護需要が拡大する宮城県内でのシェア拡大
建設会社による介護参入からの撤退背景を活用
建設会社が運営する介護事業を専門企業に売却する、選択と集中の事例でもあります。
(27) 工藤建設<1764>による日建企画の子会社化
事例概要:
工藤建設が不動産賃貸仲介の日建企画を完全子会社化
建物管理などのサービス拡充
目的・狙い:
工藤建設は大規模修繕や建築事業に強み
日建企画の家賃管理・入居者募集ノウハウと合わせて管理事業の成長
建設工事と不動産管理・仲介の一体運営で顧客満足度を高めるパターンです。
(28) エルアイイーエイチ<5856>によるエス・サイエンス<5721>傘下のなごみ設計子会社化
事例概要:
なごみ設計はリフォーム工事を手がける企業
エルアイイーエイチが流通や教育関連など多角事業を手放す中、新たに建築領域を取得
目的・狙い:
建築領域を新事業の柱として育成
相乗効果の低い事業は他社へ売却し、なごみ設計はグループ内でノウハウを発揮
クロスボーダーでなくとも、自社の事業ポートフォリオを積極的に入れ替える動きを示しています。
(29) REVOLUTION<8894>による投資用ワンルームマンション買い取り再販のリパークなど2社の子会社化
事例概要:
不動産リノベーションを強みとするREVOLUTIONがリパーク、REGALEの2社(投資用不動産売買・仲介)を子会社化
物件仕入れ・顧客ターゲット拡充
目的・狙い:
異なる仕入れ先・顧客基盤を持つ兄弟会社の同時買収
不動産事業領域の総合化
中古物件の改装・リフォーム工事にもシナジーが期待される案件です。
(30) イチケン<1847>による片岡工業の子会社化
事例概要:
イチケンが総合建設業の片岡工業(千葉県一宮町)を子会社化
地域の公共工事や舗装工事などで実績
目的・狙い:
グループシナジーの追求
関東エリアの受注強化
イチケンは飲食や商業施設の建築に強みを持つゼネコン。片岡工業は1886年創業と歴史が深く、地場での公共・土木案件に強い企業を取り込むことで地域的展開を広げます。
(31) ラストワンマイル<9252>によるSHCを株式交換で子会社化
事例概要:
ラストワンマイルはインターネット回線取次を主力とする
SHCはインターネット無料マンション事業やコールセンター運営などを手がける
目的・狙い:
インターネット無料マンション事業の強化
設置工事や運用管理も含めたトータルサービスの構築
IoT時代に伴う通信インフラ整備の一環で、ネットワーク系工事が増えるパターンの事例といえます。
(32) サンゲツ<8130>によるシンガポールD’Perceptionの子会社化
事例概要:
内装商材を扱うサンゲツが空間デザインや内装工事のD’Perceptionを買収
東南アジア地域でのサービス拡張
目的・狙い:
シンガポール拠点を中心に商業施設やオフィスの内装需要を取り込む
インテリア商品の開発・取り扱い強化
国内の内装需要が成長鈍化する中、海外市場へ展開していくための買収です。
(33) 日本ハウズイング<4781>によるMBOで株式を非公開化
事例概要:
日本ハウズイングが米ゴールドマン・サックスと組んでMBOを実施
長期的視点で構造改革を進めるため上場廃止
目的・狙い:
3つの老い(建物老朽化、管理人高齢化、居住者高齢化)対策を中長期で推進
株式非公開化により機動的にグループ内再編
マンション管理事業を主力とし、不動産管理や建物修繕工事、リフォームなどにも広く関わる企業がMBOで非公開化する事例です。
(34) トーエネック<1946>によるタイTri-En TOENECの追加出資
事例概要:
トーエネックがタイの電気・空調管工事子会社を49%から49%+αへ出資比率を高め子会社化
事業立て直しと海外展開
目的・狙い:
新興国市場での電気設備工事需要
ガバナンス強化で経営再建
海外子会社との合弁比率を高め、意思決定を迅速化する事例の一例です。
(35) 日本電技<1723>による台東設備を子会社化
事例概要:
空調計装工事を中心とする日本電技が空調計装工事施工会社の台東設備(東京都墨田区)を買収
大規模空調計装工事の体制強化
目的・狙い:
大型化・高度化する空調計装案件に備えた技術者確保
工事体制の拡充による品質向上
機能補完を重視したM&Aです。
(36) ハリマビステム<9780>によるTECサービスの子会社化
事例概要:
ビル管理業のハリマビステムが空調設備工事業のTECサービス(埼玉県上尾市)を買収
設備保守や工事関連業務の強化
目的・狙い:
ビル管理・清掃だけでなく、設備面の工事保守を自社内で行い総合サービス化
顧客の多様なニーズに対応
設備工事を内製化してワンストップ対応を狙う代表例です。
(37) AKIBAホールディングス<6840>によるブランチテクノの子会社化
事例概要:
移動体基地局建設など電気通信工事を行うブランチテクノ(名古屋市)を買収
中部エリアの通信工事体制強化
目的・狙い:
5GやIoT関連の需要拡大に対応
施工リソースを拡充
通信建設工事は今後さらに需要が見込まれる領域であり、地域展開を強化する事例です。
(38) 信和<3447>によるCTRの買収(ヤグミグループ統括)
事例概要:
信和が足場施工大手のヤグミグループを統括するCTR(愛知県一宮市)を買収
東海地方最大規模の仮設施工企業を取り込み仮設足場事業を拡充
目的・狙い:
既存の仮設資材製造・販売に加え、施工まで一体で提供する体制の構築
全国有数の規模へ成長
足場関連では各地域の老舗大手を合併・買収する例が増えています。全国規模で施工を実現する狙いです。
(39) ピーエス三菱<1871>による東葉製作所の子会社化
事例概要:
プレストレストコンクリート(PC)工事向け鋼製型枠など製造する東葉製作所(千葉市)を子会社化
PC橋梁工事の型枠技術強化
目的・狙い:
PC構造のコンクリート二次製品型枠を自社内で確保
競合優位性と品質向上
PC橋梁は今後のインフラ維持更新において注目分野。型枠は重要資材なので、内製化がメリットになります。
(40) 小野建<7414>による三豊鋼業の子会社化
事例概要:
鉄筋販売大手の小野建が兵庫県伊丹市の三豊鋼業を買収
鉄筋工事や販売加工を強化
目的・狙い:
京阪神エリアでの営業拡大
鉄筋製品の加工・施工サービスをワンストップ化
鉄筋は建築工事に不可欠な資材。加工と施工を取り込み、首都圏・近畿圏での需要を掴む動きです。
(41) オービス<7827>による寿鉄工の子会社化
事例概要:
オービスが鉄骨加工・鋼構造物工事を行う寿鉄工(鳥取県米子市)を買収
重量鉄骨製作分野へ進出
目的・狙い:
Hグレード認定工場の稼働を活かし、高層ビルや大型施設の鉄骨製作を取り込む
建築鉄骨はハイグレードの工場認定が重要。今回のM&Aでオービスは重量鉄骨市場に参入し、建設工事受注領域を拡げました。
(42) トーアミ<5973>による型枠工事業の中條工務店子会社化
事例概要:
トーアミが福岡県の型枠工事会社中條工務店を買収
子会社の渡部建設との連携強化
目的・狙い:
土木・建築工事領域の拡大
地方拠点での営業力向上
溶接金網やワイヤーメッシュを扱うトーアミが施工機能を取得し、上流~下流まで対応する総合力を狙う事例です。
(43) アンビションDXホールディングス<3300>によるフレンドワークスの子会社化
事例概要:
不動産DXを推進するアンビションDXが内装・原状回復工事のフレンドワークス(東京都中野区)を買収
リノベーションから原状回復までの一貫対応
目的・狙い:
サービス範囲拡大で賃貸管理・運用を効率化
入居後対応や退去後の工事まで一貫体制
不動産管理のライフサイクル全体をカバーして付加価値を高める動きです。
(44) 日本エコシステム<9249>によるエコベンの子会社化
事例概要:
日本エコシステムが全熱交換機の施工・販売を手がけるエコベン(東京都武蔵野市)を買収
中部・関東の空調工事事業を強化
目的・狙い:
省エネソリューションに欠かせない全熱交換機の施工技術を取得
相互の販売拠点を融合
空調工事は脱炭素や省エネ対応で高いニーズがあるジャンルとなっています。
(45) 成友興業<9170>による木本建興の子会社化
事例概要:
都内で舗装工事を中心に手がける成友興業が神奈川で水道工事に強い木本建興を買収
首都圏での技術交流・基盤拡大
目的・狙い:
地域エリア拡大と公共工事受注増
水道工事の経験と実績を取り込む
公共インフラ系の工事を獲得する上で、水道事業に強みのある企業を取り込む戦略です。
(46) カゴメ<2811>による米国インゴマー・パッキングの子会社化
事例概要:
カゴメがトマト加工品大手インゴマー・パッキングを70%取得
トマトペーストやダイストマトなどを米国から安定調達
目的・狙い:
一次加工~二次加工の垂直統合
世界レベルの原料調達網を構築
食品メーカーですが、設備投資や工場建設、プラント改修工事も伴うため、建設業界とも間接的に関連する事例です。
(47) 大栄環境<9336>による栄和リサイクルの子会社化
事例概要:
建物解体工事や廃棄物収集運搬を行う栄和リサイクル(東京都新宿区)を大栄環境が買収
関東エリアの廃棄物処理業態を強化
目的・狙い:
解体廃棄からリサイクルまで一貫体制の確立
既存施設と合わせて受け入れシェア拡大
同種の解体・廃棄物処理のM&Aでは、地域拡大とワンストップサービスを目指す事例が多いです。
(48) 三菱電機<6503>による北弘電社<1734>の完全子会社化
事例概要:
北弘電社は電力関連工事や屋内配線工事、ファクトリーオートメーションなどを展開
赤字転落や債務超過により自力再建が困難となり、三菱電機が株式交換で救済
目的・狙い:
グループ内で設備工事・再エネ工事など総合的に扱う
事業破綻を回避し、地域インフラや取引先を保護
大企業による再建型M&Aです。建設・電気工事人材や取引先を守りつつ再編が進みます。
(49) アーバネットコーポレーション<3242>によるケーナイン子会社化
事例概要:
投資用ワンルームマンション開発を主力とするアーバネットが戸建・テラスハウス分譲のケーナインを買収
川崎・横浜エリアで事業拡大
目的・狙い:
首都圏郊外エリアでの分譲住宅に参入
土地仕入れ、設計・工事のノウハウを活用
投資用マンションに加え、ファミリー向け戸建て事業を拡充するM&Aです。
(50) スバル興業<9632>によるテス東北の子会社化
事例概要:
スバル興業が太陽光発電設備の設置工事や保守を行うテス東北を買収
太陽光発電所の維持管理強化
目的・狙い:
自社で重点とする再エネ発電所のO&M(運営・保守)体制充実
仙台拠点を確保し東北での事業拡大
太陽光発電や再生可能エネルギーへのシフトが進む中、工事・管理スキルを獲得する例です。
(51) ニッソウ<1444>によるささきの子会社化
事例概要:
賃貸住宅向け原状回復・リフォーム工事を行うニッソウが外装塗装工事を主軸とするささきを買収
首都圏でのリフォーム事業拡大
目的・狙い:
外壁塗装や防水など専門技術を内製化
賃貸アパート・マンションの保守拡張
リフォーム事業は新築需要減に伴い拡大すると予測されています。その一環で外装系会社をM&Aで取得する事例です。
(52) セキュア<4264>によるジェイ・ティー・エヌの子会社化
事例概要:
ビル入退室管理や監視カメラシステム構築のセキュアが電気通信・電気工事を行うジェイ・ティー・エヌを買収
施工人員不足のリスクを軽減
目的・狙い:
自社セキュリティシステム導入の際の工事を内製化
顧客ニーズへの迅速対応
専門技術者を抱えることで、プロジェクトの品質と施工スピードを確保する流れです。
(53) 旭化成ホームズによる中央ビルト工業<1971>のTOB
事例概要:
旭化成ホームズが鉄骨部材を供給する中央ビルト工業を完全子会社化
新設住宅着工戸数減少を背景に協業体制を一層強化
目的・狙い:
一体運営でコスト削減や研究開発の効率化
ジャスダック上場の中央ビルト工業をTOBで買収
(54) エムティジェネックス<9820>によるアイテックの子会社化
事例概要:
エムティジェネックスが関西で電気工事業を営むアイテック(京都市)を買収
オフィスビル内装工事や駐車場管理に続く新事業領域
3.M&Aの主な狙いと効果
上記のように多数の事例が存在しますが、それらを俯瞰してみると、大きく分けて以下のような狙いが浮かび上がります。
3-1.事業領域の拡大・補完
建築・建設業界でのM&Aでは、施工体制の拡充や不足する技術・人材の補完、さらには新市場への参入が多く見られます。解体・廃棄物処理業との連携(大栄環境が解体業者を買収する事例など)、土木・建築の複合工事への進出、災害対応工事のノウハウ獲得などが典型例です。業種が複数にまたがると工事一式受注が可能になり、コスト削減や品質向上を図りやすくなります。
3-2.施工効率の向上とコスト削減
工事原価の大部分を占める労務費と資材費を低減する目的で、協力会社を子会社化し、人材確保と効率的な資材調達を狙うケースが増えています。特に協力会社や職人不足が深刻化するなか、M&Aにより職人集団を組織ごと取り込むことは非常に有力な手段といえます。
3-3.地域密着型企業の獲得
地方のインフラ工事など公共事業に強い企業を買収することは、大都市圏の会社にとっては新エリアで受注を拡げるうえで魅力的です。公共事業は地元企業優先の面が色濃いため、M&Aで地域シェアと営業拠点を確保し、収益源を増やす動きが盛んです。
3-4.事業承継問題の解決
オーナー経営者の高齢化、少子化などで後継者不在の課題が目立つ建設業では、経営者が引退を控える中でM&Aによるバトンタッチが増えています。これにより、従業員の雇用維持や既存取引先の保護、さらには自治体案件の安定受注が継続可能となるメリットがあります。
3-5.海外展開の足がかり
シンガポールやタイ、オーストラリアなど海外企業を買収して現地拠点を設ける事例も多いです。日本国内の建設市場は長期的に縮小傾向が予想されるなか、新興国や海外先進国のインフラ需要や再開発、再エネプロジェクトを取り込む動きが活発化しています。これには現地企業との合弁設立や買収が効果的です。
4.M&Aプロセスにおける留意点
建築・建設業界特有の事情として、M&Aのプロセスではいくつかの留意点があります。
4-1.技術者や職人の確保・引き留め
企業価値の源泉は「人材」であり、買収した企業の職人や技術者が流出するとシナジーは得られません。M&Aの初期段階から、エンジニアの処遇やキャリアビジョンを丁寧にすり合わせる必要があります。
4-2.許認可や資格の継承
建設業許可(特定・一般)、電気工事業許可、設計事務所登録など各種許認可や資格の扱いには注意が必要です。M&Aのスキームによっては許認可を引き継げない場合があり、会社分割などの手法やアドバイザーの助言が欠かせません。
4-3.工事契約や完成保証の取り扱い
公共工事の入札資格、継続中の工事契約、完成保証などは企業の信用力に依存します。M&A後に元請が変わった場合や合併による社名変更があった場合には、発注者の承諾を得るなどの手続きが発生します。
4-4.のれんや多額の有形固定資産評価
建設業の工場や作業場、保有機械(重機・施工機械など)は価値評価が難しい場合があるため、デューデリジェンスで適切な査定が重要です。また、M&A後に大きく経営方針が変わると、のれんの減損リスクを抱えることもあるので注意が必要です。
5.M&A成功のためのポイント
建築・建設業界のM&Aを成功させるための主なポイントとして以下が挙げられます。
5-1.事業戦略の明確化
なぜM&Aを行うのか、どのような領域・技術を取り込みたいのかをはっきりと定義することが重要です。建築・建設の現場力、設計力、機械設備リース、ビルメンテナンス、公共工事、海外事業など、多岐にわたる中から自社がどこを強化し、どのような将来像を描くかを事前に整理します。
5-2.PMI(統合後の施策)の準備
M&A後のPMI(Post Merger Integration)は非常に重要です。人事制度や施工現場の管理方法、安全衛生管理ルールなどをスムーズに統合しないと、効果が得られないばかりか社員の離職や現場混乱を招く恐れがあります。買収前にPMI計画を策定することが成功要因です。
5-3.現場主導のコミュニケーション
本社レベルでの契約締結だけでなく、実際に施工管理や工事を行う現場のスタッフ同士が新体制に納得し協力し合えるよう丁寧な説明が必要です。工期・予算管理など現場のルールが企業文化の違いで混乱するケースは少なくありません。
5-4.専門家との連携
M&Aアドバイザーや弁護士、会計士、税理士、社労士など専門家との連携が必須です。建設業独自の許可や資格、下請取引の契約条件、公共工事の入札参加資格など多くの項目をチェックする必要があります。早期に専門家を交えて慎重なデューデリジェンスを行いましょう。
6.まとめと今後の展望
建築・建設業界はこれまで公共事業の拡大や民間設備投資に支えられてきましたが、少子高齢化による需要減や労働力不足などの課題が顕在化しています。その一方で、インフラの老朽化や災害対応など、新たな需要もあり、建設DXや環境対応工事、海外進出といった成長の芽も存在します。
こうした環境下で、M&Aはビジネス拡大やリスク分散、事業承継のソリューションとしてますます重要な経営戦略の選択肢になっています。本記事で取り上げた通り、解体・廃棄物処理事業との連携や地盤改良企業の買収、海外工事会社の合併など、さまざまな形でシナジーが期待されています。
ただし、M&Aの成否は、買収後の統合やターゲット企業との相乗効果をいかに引き出すかにかかっています。設備投資の管理や人材育成、経営理念の共有、安全衛生管理の統合など、多くのプロセスを丁寧に進める必要があるでしょう。
今後、さらに脱炭素や省エネ、インフラ更新、災害対策、スマートシティなどのニーズが高まることで、建設業界の再編はより活発になると考えられます。こうした流れの中で、企業規模の拡大だけでなく、技術や人材の獲得、海外展開といった戦略を実現するために、M&Aは一層効果的な手段として注目され続けるでしょう。
参考にしたM&A事例一覧(要点まとめ)
あさかわシステムズによるT&Cテクノロジーズ子会社化
ロゴスHDによる坂井建設買収
日特建設の麻生フオームクリートTOB
大栄環境による海成買収
SAAFホールディングスによるユーシン子会社化
メディアファイブによる匠工房譲渡(経営陣買収)
ASNOVAが敦賀工事センター譲渡
ヒビノによる豪InSight Systems子会社化
セグエグループがジェイズ・テレコムシステム株式譲渡
OCHIHDが弓田建設を子会社化
コンドーテックが上田建設を子会社化
E・JHDによる東京ソイルリサーチ子会社化
ジオリーブGが丸西子会社化
倉元製作所がUNOクォーツ石英火加工事業を取得
オートバックスセブンによるPCTHD買収
美樹工業がヒョウ工務店を子会社化
ジオリーブGがひらいホールディングス子会社化
キムラタンがイストグループ3社を子会社化
エフティGがジャパンTSSを譲渡
JRCが高橋汽罐工業子会社化
チェンジHDが東光コンピュータ・サービス子会社化
アーキテクツ・スタジオ・ジャパンによるシンガポールSupaspace買収
トーカロがNEIS & TOCALO(Thailand)子会社化
交換できるくんがハマノテクニカルワークスなど3社子会社化
JRCが向井化工機を子会社化
セントケア・HDが上の組介護事業取得
工藤建設が日建企画子会社化
エルアイイーエイチがなごみ設計を子会社化
REVOLUTIONがリパークとREGALEを買収
イチケンが片岡工業を子会社化
ラストワンマイルがSHCを子会社化(株式交換)
サンゲツがシンガポールD’Perceptionを子会社化
日本ハウズイングがMBOで非公開化
トーエネックがタイTri-En TOENECへの追加出資
日本電技が台東設備を買収
ハリマビステムがTECサービスを子会社化
AKIBAHDがブランチテクノ子会社化
信和がCTR買収しヤグミグループ取り込み
ピーエス三菱が東葉製作所を子会社化
小野建が三豊鋼業を子会社化
…(中略)…
これらの事例からも分かるように、建築・建設分野のM&Aは同業同士の水平統合だけでなく、解体、廃棄物、設備工事、地質調査、IT関連など多角的な分野との垂直統合も盛んです。企業ごとに戦略・背景・目的は異なるものの、「不足しているものを外部から取り込む」という点は共通しており、その結果として建築・建設業界の再編が加速しています。
おわりに
本記事では建築・建設業界のM&Aに関して、具体的な事例一覧や背景、目的、成功要因などを数多く取り上げながら詳説してまいりました。業界の特性としては、地域性の強さや専門技術・許認可の継承、事業承継ニーズといった視点が重要となる点が見えてきます。
今後も公共インフラや民間設備投資の見直し、人口動態の変化、建設テック・DXの進歩などさまざまな要素が相まって、建築・建設業界はさらなる構造変革を迫られることが予想されます。その中でM&Aは、企業が経営資源を効果的に拡充し、競争力を高めるために有力な選択肢です。
ただし、買収後の統合(PMI)や人的マネジメントなど、課題も多いのが建設M&Aの現実です。工事現場での安全確保、品質管理、下請け・協力会社との関係構築、人材育成を円滑に行うには、事前の準備や専門家の活用、そして従業員やステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
それでもなお、業界全体としてM&Aの必要性と意義は高まっています。事業継続や新事業創出、海外進出など、さまざまな局面でM&Aをうまく活用することで、企業と業界全体が持続的な発展を遂げることが期待されます。
以上が、建築・建設業界におけるM&A動向や具体事例に基づく解説です。今後も多様な事業提携・企業統合が行われる中で、本記事が皆様の理解や検討に少しでもお役に立てば幸いです。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。