1. ドローン業界の概観と成長の背景
1-1. ドローン市場の拡大
ドローンは、もともと軍事目的や測量分野の一部で利用されていた無人航空機を指します。小型カメラの高性能化やバッテリー技術の進歩、通信インフラの整備などによって、近年は民間利用が本格化してきました。特に日本国内でも、国土交通省が主体となってi-Construction推進や空の産業革命を後押しし、建設業や農業、物流の分野での実証実験や実用化が進んでいます。
建設現場では、ドローンを活用することで工事や測量の作業効率が大幅に向上します。例えば従来、人力で数日かけて行っていた測量が、ドローンを使えば数時間で完了するケースも珍しくありません。正確な3次元データが取得できるため、工事全体の計画や進捗管理も精緻化でき、コストダウンや工期短縮に貢献します。
農業分野では、農薬散布や作物の生育状況の監視などに活用され、手作業や有人ヘリコプターよりもコストを抑えられる可能性があります。さらに、将来的には5GやAI技術との連携により、自動飛行やリアルタイムでのデータ収集・解析など、一層高度な運用が期待されています。
1-2. 規制と技術発展の両輪
ドローンが普及しはじめると同時に、安全性やプライバシーに関わる法整備も進められました。日本では航空法や電波法などの関連法令が適用され、ドローン飛行の許可申請や操縦者の資格、飛行可能区域に関して様々なルールが設けられています。2022年12月にはレベル4飛行(補助者なしの有人地帯飛行)も法整備が行われるなど、安全確保と社会受容性の担保を両立させながら、段階的に規制緩和が進められているのが現状です。
技術面では、ドローン機体そのものの小型化・高性能化だけでなく、周辺システムの進化が急速に進んでいます。自動運転技術や画像解析技術、クラウドを活用したデータ管理、地理情報システム(GIS)との連携など、多方面からの技術が結集することで、ドローンの活用範囲が拡大しているのです。
こうした技術の進歩に対応するため、大企業だけでなくスタートアップや大学の研究機関など、多彩なプレイヤーがドローン事業に参入しています。その結果、新規事業の創出や業務提携、M&Aなどの動きが活発化してきました。
2. なぜドローン業界でM&Aが増えているのか
ドローン産業は、ハードウェアからソフトウェア、運用、インフラ、サービスまで多種多様な要素が関わる総合的な産業です。従来の航空機に比べて参入障壁が低いこともあり、スタートアップ企業が独自の強みを武器に市場に参入しやすい環境でもあります。しかし、その一方で以下のような課題や要因があり、企業間のM&Aが増えていると考えられます。
2-1. 研究開発費・設備投資の増大
ドローンの技術開発には、自動制御、センサー技術、画像処理アルゴリズムなど、先端的な要素が数多く必要です。さらに法規制対応のためのソフトウェア開発や、運用データの管理システム構築など、機体以外の周辺システムも高度化してきています。これらをすべて自社内で完結させるには、多大な研究開発費や設備投資が必要となります。
資本力のある大企業が、自前でドローン技術を開発しようとすると、時間もコストもかかるリスクがあります。そのため、すでに独自の技術や顧客基盤、ノウハウを持つ企業をM&Aで取り込み、開発スピードを加速させる動きが見られています。スタートアップ側も、大企業と組むことによって資金や営業ネットワークの提供を受けられ、一気に事業拡大を狙えるメリットがあります。
2-2. 規制対応・社会実装に向けた協業の必要性
ドローンを実用化するには、国土交通省をはじめとした各種官公庁の許可や承認を得る必要があり、自治体や地元住民との連携も不可欠です。個々のベンチャー企業だけで、これらの社会実装をスムーズに進めるのは難しい場合も多く、大手企業や官公庁、あるいは既存の産業プレイヤーとの協業が求められます。
M&Aはこうした協業の一形態としても機能します。大手企業がベンチャー企業を買収し、意思決定プロセスを集約することでプロジェクトを加速させたり、逆に既存の企業が新興企業を迎え入れることで新たな研究開発部門として活用したりするケースがあります。
2-3. 周辺領域との統合
ドローンは単体で完結する技術ではなく、画像解析や地図情報、物流システムなど周辺領域との結びつきが強い分野です。そのため、他業種との連携を深める目的でM&Aが行われることもあります。特に、ソフトウェアプラットフォームを提供する企業や、メンテナンスサービスを展開する企業を取り込み、ドローンビジネスを包括的に展開しようとする動きが増えています。
3. 主なM&A事例と背景・狙い
ここからは、実際に公表されている複数のドローン関連M&A事例を順番に取り上げ、それぞれの背景や狙い、そして業界にもたらすインパクトについて解説いたします。
3-1. ワキタとCSS技術開発
- 発表日: 2019年10月25日
- 概要: ワキタが、工事測量や測量機器の販売・賃貸を手がけるCSS技術開発(売上高5億1200万円、営業利益5500万円、純資産10億1000万円)の全株式を取得し子会社化
- 取得価額: 非公表
- 取得予定日: 2019年11月14日
事例の背景
ワキタは建設機械などの販売・レンタル事業で知られる企業です。一方のCSS技術開発は、「i-Construction」と呼ばれる建設工事のIT化に対応したドローンや3次元レーザースキャナー、MMS(モバイルマッピングシステム)などの最先端測量技術を持つことで注目を集めていました。
建設業界では、国土交通省が主導するi-Construction推進によって、現場業務のデジタル化やBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)の活用が求められるようになっています。施工計画の段階からデータを活用し、進捗管理や品質管理を高度化する動きは今後さらに加速することが予測されます。これに対応するためには、従来の建機販売やレンタルだけでなく、測量や解析技術といったデジタル関連のサービスを一体化させたソリューションが必要となってきました。
M&Aの狙い
ワキタは、CSS技術開発の先端測量技術を自社グループに取り込むことで、建設現場へより高付加価値なサービスをワンストップで提供することを目指したと考えられます。ドローンや3次元スキャナーなどを使った測量・解析サービスは、建設プロセスの効率化だけでなく、精緻なデータをもとにした施工計画の策定、工期短縮、労務管理の省力化などにも役立ちます。
測量技術を持つ企業とのシナジーにより、ワキタは建機事業の幅を拡大できるだけでなく、次世代の建設市場での競争力を強化できます。今後はドローンを使った3次元測量やデータ解析サービスを複合的に展開し、建設業界のデジタルシフトを支える存在へと成長する可能性があります。
3-2. マーケットエンタープライズとジラフ「最安修理ドットコム」事業
- 発表日: 2020年1月31日
- 概要: マーケットエンタープライズが、ジラフの修理業者情報プラットフォーム「最安修理ドットコム」事業を取得
- 直近売上高: 3800万円(当該事業)
- 取得価額: 7500万円
- 取得予定日: 2020年2月1日
事例の背景
マーケットエンタープライズは、インターネットに特化したリユース品(中古品)の買取・販売を主力事業としており、成長を続けている企業です。一方、ジラフが運営していた「最安修理ドットコム」は、2015年8月にiPhone修理店の料金比較サイトとしてスタートし、その後家電やカメラ、ドローンなどの修理費用比較まで対象を広げ、月間110万ページビュー、月間訪問者数57万人(2019年12月)の国内最大級の修理業者情報プラットフォームとして知られていました。
近年、ドローンは個人や企業での利用機会が増える一方、故障や破損などのリスクも高まっています。ドローンの修理・メンテナンス体制を整備することは、ドローン普及を下支えする重要な要素となっています。
M&Aの狙い
マーケットエンタープライズはリユース事業で培ったノウハウを活かし、中古品に付随する修理・メンテナンス市場も取り込みたいという狙いがありました。「最安修理ドットコム」の利用者基盤や店舗数の多さを活用することで、アフターサービスを強化し、ドローンを含む多様な商品の修理・整備に関するニーズを取り込めます。
ドローン修理市場はまだまだ発展途上ですが、ドローンの高性能化・高価格化が進むと同時に、修理需要も増大すると見込まれています。マーケットエンタープライズにとっては、中古品の買取・販売だけでなく、修理サービスやメンテナンスサービスまでを包括的に提供することで、顧客接点を広げ、収益源を多角化する効果が期待できるでしょう。
3-3. スカパーJSATホールディングス(エンルート)とNTT e-Drone Technology
- 発表日: 2021年1月18日
- 概要: スカパーJSATホールディングスの子会社で農業・産業用ドローン事業を手がけるエンルートの一部事業を、NTT e-Drone Technologyに譲渡
- 譲渡価額: 非公表
- 譲渡予定日: 2021年1月31日
事例の背景
スカパーJSATホールディングスは、衛星通信や放送事業を主力とする企業であり、子会社エンルートを通じて農業・産業用ドローン事業に取り組んできました。一方、NTTグループは通信インフラやIoT領域に強みを持ち、ドローンを活用した新規事業に可能性を見出しています。エンルートの一部事業をNTT e-Drone Technologyへ譲渡する背景には、NTTグループの通信技術や大規模ネットワークを活かし、ドローンの見通し外飛行や通信不感地帯への対応など、技術的課題の解決を目指す狙いがあります。
M&Aの狙い
NTTグループとスカパーJSATホールディングスの連携によって、山間部や離島など通信インフラが十分でない地域でのドローン運用を進める研究・開発が期待できます。特に、ドローンの遠隔制御や監視カメラ映像のリアルタイム伝送には、高速かつ安定した通信環境が不可欠です。NTTグループの通信技術を組み合わせることで、災害時の緊急支援や長距離物流など、今後のドローン活用の幅がさらに広がる可能性があります。
また、画像解析技術などのサービス領域拡大にも取り組む方針が示されており、ドローンが撮影した映像をAIで解析し、農作物の健康状態や被災地の状況を素早く把握するといった高度な応用が見込まれています。今回の事業譲渡は、そうした高度利用に向けた布石といえるでしょう。
3-4. ジョルダンとエアーズ
- 発表日: 2022年12月5日
- 概要: ジョルダンが、ドローン関連サービスのエアーズ(売上高2億7700万円、営業利益1500万円、純資産1億1800万円)の株式50.8%を取得し子会社化
- 取得価額: 2億円
- 取得予定日: 2022年12月12日
事例の背景
ジョルダンは経路探索ソフト「乗換案内」で有名な企業であり、MaaS(Mobility as a Service)と呼ばれるIT活用による次世代移動サービスの開発・提供を推進しています。一方のエアーズは、ドローンパイロットの育成(スクール運営のフランチャイズ展開)やドローン販売などを手がけている企業です。
MaaSの概念は、従来の鉄道やバス、タクシーだけでなく、シェアサイクルやライドシェア、さらにはドローン物流や空飛ぶクルマ(eVTOL)などの新モビリティを含めた総合的な移動手段の最適化を目指します。ジョルダンがエアーズを子会社化した背景には、既存の移動サービスとドローンによる移動・物流などを統合し、地方自治体や企業向けに総合ソリューションを提供したい意図があると推測されます。
M&Aの狙い
ジョルダンの「乗換案内」やMaaSプラットフォームにドローン関連サービスを組み合わせることで、ドローン飛行ルートの計画や運用管理、さらには公共交通機関との接続までを一気通貫で提供する可能性があります。地方自治体が抱える過疎地域の交通インフラ問題や、高齢化に伴う生活支援のニーズに対しても、ドローンがラストワンマイルの物流や移動手段として活躍する余地があるでしょう。
また、エアーズが展開するドローンパイロットスクールのフランチャイズネットワークは、将来的にドローン活用の人材不足を解消する上でも重要です。ジョルダンはこのネットワークを活かし、地方自治体や企業と協力して、ドローン運用の教育・研修ビジネスへと拡大することが期待されます。
3-5. Kudanと米アーティセンス
- 発表日: 2020年1月27日(最終的な子会社化完了は2021年12月10日)
- 概要: Kudanが、空間・位置認識ソフトの研究開発企業である米アーティセンス(アーティセンス・コーポレーション)を段階的に子会社化
- 売上高: 500万円(アーティセンス)
- 営業利益: △2億1200万円(アーティセンス)
- 純資産: 5億9200万円(アーティセンス)
- 取得価額: 最終的に総額約24億7000万円(3段階に分けて取得)
- 2020年1月29日: 株式12%を取得(約2億1800万円)
- 2020年6月29日: 追加取得で持株比率38%(約4億7200万円)
- 2021年12月10日: 残余株式をすべて取得し子会社化(約17億8000万円)
事例の背景
Kudanは、自動運転やロボティクス、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などに応用される空間・位置認識技術(SLAMなど)を開発・提供する企業です。一方のアーティセンスは、ドイツのミュンヘン工科大学教授で、自動運転技術の研究で著名なダニエル・クレマース氏らが2016年に創業した研究開発企業であり、同じく空間認識や画像解析などの先端的なアルゴリズムを強みとしていました。
ドローンにおいても、空間・位置認識技術は障害物回避や自律飛行、さらにはカメラ画像を使った測位などに欠かせない要素となります。自動運転やロボット工学の文脈だけでなく、ドローンの自律制御にとってもSLAM技術が重要であることから、Kudanはアーティセンスの技術を取り込み、開発力を飛躍的に高めようとしたのです。
M&Aの狙い
Kudanがアーティセンスを段階的に買収した目的は、空間認識技術の研究開発能力を強化し、世界的なシェアを狙うことにあります。ドローン業界では、機体の性能だけでなく、自動飛行の安全性やナビゲーション性能が高度化のカギを握ります。クラウドマッピングやリアルタイムの自己位置推定など、SLAM関連技術は機能の要となるだけに、最新の研究成果や高度人材を獲得することは競争力の源泉です。
この買収によってKudanは、ドローン分野だけでなく、自動運転車や産業用ロボット、AR/VR領域など幅広いセクターに対して競争力のあるソリューションを提供できる体制を強化しました。逆にアーティセンスも、Kudanと組むことで資金や事業ネットワークへのアクセスが容易になり、研究開発成果を事業化・社会実装へとスピードアップできるメリットを得たと考えられます。
4. ドローンM&Aにおけるシナジーと課題
上記の事例からもわかるように、ドローン関連M&Aにはさまざまな形態や狙いがあります。しかし、どの事例にも共通して見られるのは「強みの相互補完」「新たな市場セグメントへの進出」「技術革新への対応」という3点です。一方で、実際にM&Aを成功させるためにはいくつかの課題も存在します。
4-1. シナジーの具体例
- 技術シナジー
- ハードウェア企業とソフトウェア企業が一体化することで、製品開発やサービス提供の速度が向上する。
- 例: Kudanとアーティセンスのように、SLAM技術とドローン機体制御技術が組み合わさると、自律飛行や高精度の測位が可能になる。
- 顧客基盤の共有
- 建設機械や測量機器の販路を持つ企業が、ドローンサービス提供企業を買収して、自社顧客に対して付加価値の高い新サービスを提供できる。
- 例: ワキタとCSS技術開発の事例で、ワキタの既存顧客に対してドローン測量技術を提案できるようになる。
- 事業領域の拡大
- リユース市場の企業が、修理プラットフォームを買収することでアフターサービス領域までをワンストップで提供できるようになり、エンドユーザーとの接点を強化する。
- 例: マーケットエンタープライズが「最安修理ドットコム」を取得し、ドローンを含む幅広い修理需要に応えられるようになる。
- 研究開発投資の効率化
- ベンチャー企業の先端研究開発力と、大企業の資金力・営業力を組み合わせて市場投入までのプロセスを短縮する。
- 例: 大企業がスタートアップを買収して、プロジェクトチームを一気通貫で運営できるようにする。
4-2. 規制・技術標準化に関する課題
ドローン業界では、航空法をはじめとする各種の法規制に加え、安全管理やプライバシー、電波利用などに関するルール整備が進められています。しかし、制度面の不確定要素は依然として多く、国際標準化も含め、各国政府や国際機関との協力が欠かせません。M&Aによって事業規模が拡大すれば、そのぶん法規制対応の範囲も広がり、社内体制の整備や許認可取得がより複雑化する可能性があります。
また、ドローン同士や地上システムとのデータ交換に必要な通信プロトコルやインターフェース、セキュリティ標準などの確立も重要です。M&Aで異なる技術プラットフォームを統合する場合、こうした標準化の動向を踏まえて計画的にシステム統合を進める必要があります。
4-3. 事業領域拡大における注意点
M&Aによってドローン事業を拡大する際には、以下の点にも注意が必要です。
- オペレーショナルリスク: ドローンの操縦やメンテナンス、データ解析など、多くの専門知識が必要な業務を急拡大させると、事故やトラブルのリスクが高まる可能性があります。
- 事業モデルの検証: 特に新しい市場や技術を扱うスタートアップを買収する場合、将来的な収益モデルが不透明であることが多く、買収後の事業統合計画(PMI)が不十分だと失敗に終わるリスクがあります。
- 企業文化の違い: 大企業とスタートアップが統合する際、意思決定のスピード感や働き方に大きな差があり、衝突が生じやすいといわれています。相互にリスペクトし合い、柔軟に協力できる組織文化を構築することが重要です。
5. ドローン業界M&Aの今後の展望
これまで紹介した事例を踏まえると、ドローン業界でのM&Aは引き続き活発化すると考えられます。特に、下記のような観点でさらなる展開が期待されます。
5-1. 新たな応用分野(物流・農業・測量・災害対策など)
ドローンはすでに測量や映像撮影、農薬散布などに利用されていますが、今後はレベル4飛行の解禁やインフラ整備の進展に伴い、さらに高度な分野への応用が拡大するでしょう。例として、宅配事業者やEC企業が荷物配送にドローンを活用するケースも増えてきます。
地方自治体の防災分野でも、山間部や災害直後の被災地での捜索・支援活動へのドローン活用が期待されます。こうした分野に参入しようとする企業は、必要な技術や認可、ノウハウを持つ企業を買収して一気に参入しようとする動きが出てくると考えられます。
5-2. 5G/6G・AIとの連携強化
ドローンの遠隔制御やリアルタイムデータ解析の実現には、低遅延かつ高速大容量通信が不可欠です。5Gの普及、さらには6Gの研究開発が進むことで、ドローンがリアルタイムで膨大なデータをやり取りできるようになり、自律飛行や群制御などの高度な運用が可能になります。
このような複合技術が必要となる領域では、通信事業者やAIベンチャー企業との連携がますます重要になります。技術的には画像認識やクラウドコンピューティングとの融合が不可欠なため、ソフトウェア企業やAIスタートアップのM&Aが増える可能性があります。
5-3. 地方創生・スマートシティの文脈での活用
ドローンが物流や交通、インフラ点検、さらには観光プロモーションなどに広範囲で活用されるようになると、地域経済の活性化にも大きく寄与します。自治体と協力してスマートシティを構築するプロジェクトが全国各地で始まっており、ドローンはその一部として重要な役割を果たします。
地方自治体が主体となるプロジェクトでは、予算規模や公共性の観点から、大手企業との連携が求められやすい反面、現地で実装を担うスタートアップとの連携も不可欠です。こうした公民連携(PPP: Public-Private Partnership)の中で、M&Aを通じて事業統合を進めるケースも想定されます。
6. まとめと今後の期待
ドローン業界におけるM&Aは、技術革新が進み事業機会が拡大する中で、自社の弱みを補完し合い、新たな市場機会を創出する有効な手段です。実際に、建設機械販売会社が先端測量技術を持つ企業を傘下に収めたり、リユース企業が修理プラットフォームを取得したりと、多様な狙いのもとでM&Aが行われています。
ドローン産業が成長していくうえで、以下のようなポイントが今後の焦点となるでしょう。
- 規制と技術のバランス
ドローンの社会実装には安全・安心が欠かせません。一方で、最新技術を素早く取り込み、ビジネスチャンスを逃さない柔軟性も必要です。M&Aは、一社単独では難しい規制対応や技術開発を協力して行う上での強力な手段となります。 - 新たなサービスの創出
ドローンの強みを活かしたサービスは、測量や農業、物流、警備、インフラ点検、防災、観光など、無数に存在します。複数企業が持つノウハウや技術をM&Aで統合し、新たなサービスを生み出す動きは今後も活発化するでしょう。 - 国際競争の加速
ドローン技術はグローバルな競争も激化しています。欧米や中国では、大規模な資金調達を行うスタートアップが台頭し、世界的なシェアを獲得する可能性があります。日本企業も国内だけでなく海外の有力企業を買収・提携することで国際市場を視野に入れた事業展開を狙う動きが増えるでしょう。 - 地方創生・スマートシティとの融合
ドローンは地方の交通網やインフラ整備の課題を解決する一手段としても期待されています。地方自治体との連携や公共事業への参入を後押しするため、大手企業と地方のベンチャー企業とのM&Aを通じた協業が進む可能性が高いです。 - 人材不足への対応
ドローン操縦者の育成や、ドローン関連のシステム開発を担うエンジニアの確保は喫緊の課題です。M&Aによって専門人材を確保し、人材育成機能を取り込む動きも今後見られるでしょう。
以上のように、ドローン業界は技術とビジネスの両面で大きな転換期を迎えています。M&Aはその変革を加速させるための重要な戦略となっており、今後もさまざまな形で実施されると考えられます。今回ご紹介した事例をとおして、ドローン関連のM&Aがどのように進められ、どのような狙いを持ち、どのようなシナジーを生み出そうとしているのか、少しでもおわかりいただけましたら幸いです。
ドローンは産業や生活を大きく変革するポテンシャルを秘めています。その実用化と普及のプロセスで生まれるM&Aは、単なる企業の合併・買収という枠を超え、産業構造自体を再編し、我々の暮らしを進化させる役割を果たすでしょう。今後のドローン産業の動向や、そこにおけるM&Aの展開には引き続き注目が集まります。各企業がそれぞれの強みを活かし、協力し合うことで、より安全で便利な社会が実現することを期待したいと思います。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。