目次
  1. 1. 設備工事業界とは
    1. 1-1. 設備工事業の概要
    2. 1-2. 求められる機能と業界の特徴
    3. 1-3. 近年の市場環境と課題
  2. 2. 設備工事業界におけるM&A活発化の背景
    1. 2-1. 人手不足と技術者高齢化への対応
    2. 2-2. 施工範囲拡大と一括受注への需要
    3. 2-3. 技術革新(ICT・IoT)と省エネ・脱炭素の潮流
    4. 2-4. 海外展開の加速とグローバル化
  3. 3. M&Aの目的と期待されるシナジー
    1. 3-1. サービス領域・商圏拡大
    2. 3-2. 技術ノウハウや有資格人材の確保
    3. 3-3. 施工コスト・資材調達の効率化
    4. 3-4. 海外進出や先端技術分野参入の近道
    5. 3-5. 非コア事業の売却と選択と集中
  4. 4. 主なM&A事例解説
    1. 4-1. 綜合警備保障(ALSOK)による日本ファシリオ買収(2010-2011)
    2. 4-2. 淺沼組、シンガポールEvergreen Engineering & Construction子会社化(2021-2022)
    3. 4-3. 大成温調のウッドテック買収(2023)
    4. 4-4. 東電通による武田通信子会社化(2009)
    5. 4-5. 富士電機E&C、古河総合設備、富士電機総設の3社合併(2009)
    6. 4-6. 中電工による昭和コーポレーション買収(2019-2020)
    7. 4-7. 大京によるアペックス和光子会社化(2013)
    8. 4-8. 日本エスコンが中部電力グループ入り(設備工事・スマートハウス連携強化)(2021)
    9. 4-9. 日本エコシステムの一連の買収(テッククリエイト、葵電気工業、村川設備工業)
    10. 4-10. 藤田電機工業が半導体販売事業を東海エレクトロニクスに譲渡検討(2019)
    11. 4-11. 田中商事の八汐電気(2009)・カワツウ買収(2020)
    12. 4-12. 日成ビルドによるアーバン・スタッフ買収(2018)
    13. 4-13. 日本電通の大一電業社子会社化(2017)
    14. 4-14. 藤井産業のサンユウ買収(2018)
    15. 4-15. 燦キャピタルマネージメントの高山エンジニアリング買収(2023)
    16. 4-16. 杉田エースのヨネミツ産業子会社化(2013)
    17. 4-17. 北陸電話工事のテレコムサービス買収(2012)
    18. 4-18. 東京リスマチックとTKOの合併(2008)
    19. 4-19. 千歳電気工業と保安工業の合併(2009)
    20. 4-20. レカムの住宅設備販売事業と産電テクノ譲渡(2021)
    21. 4-21. 九電工の中央理化工業買収(2021)・Asia Projects Engineering買収(2013)
    22. 4-22. 塩見ホールディングスのアペック事業譲渡(2008)
    23. 4-23. 極楽湯HDのエオネックス・利水社買収(2020)
    24. 4-24. 加賀電子の東京電電工業子会社化(2009)
    25. 4-25. 三機サービスの長沼冷暖房買収(2023)
    26. 4-26. 協和日成のガイアテック買収(2021)
    27. 4-27. ユアテックの空調企業買収(2020)・ベトナムSigma子会社化(2021)
    28. 4-28. 協和エクシオと池野通建(2010)
    29. 4-29. 丸紅のMC Marine Energy譲渡(洋上風力発電)(2017)
    30. 4-30. ミライトHDの西日本電工買収(2017)
    31. 4-31. 関電工の川崎設備工業TOB(2008)
    32. 4-32. ラックランドの協和電設買収(2017)・木戸設備工業買収(2016)
    33. 4-33. 環境管理センターのサンエイテクニクス買収(2022)
    34. 4-34. ハリマビステムのTECサービス買収(2024)
    35. 4-35. フリードによるトーネット. MBO譲渡(2008)
    36. 4-36. ヒビノのサンオー買収(2019)
    37. 4-37. マサルによる塩谷商会買収(2011)
    38. 4-38. フジ住宅の雄健建設グループ3社買収(2019-2020)
    39. 4-39. マイスターエンジニアリングのエコー防災買収(2018)
    40. 4-40. サコスの親和電気買収(2021)
    41. 4-41. スズキ太陽技術の大香電工子会社化(2016)
    42. 4-42. セキュアのジェイ・ティー・エヌ買収(2023)
    43. 4-43. コムシスHDとつうけんの経営統合(2010)
    44. 4-44. 日本ハウズイングの亜細亜綜合防災買収(2015)・メイセイ買収(2020)
    45. 4-45. コムシスHDによるワールドエコ株式交換(2022)
    46. 4-46. シーキューブの三光通信買収(2012)
    47. 4-47. ダイキアクシスのアドアシステム買収(2023)・冨士原冷機、日本エアーソリューションズ買収(2019)
    48. 4-48. エア・ウォーターの半田買収(2015)
    49. 4-49. サンフロンティア不動産のコミュニケーション開発買収(2021)
    50. 4-50. エフティグループのジャパンTSS譲渡(2024)
    51. 4-51. オートバックスセブンのPCTホールディングス買収(2024)
    52. 4-52. ウェーブロックHDのエイゼンコーポレーション買収(2022)
    53. 4-53. アサヒ衛陶(ASAHI EITO)による日本ライフエレベーション買収(2023)ほか
    54. 4-54. アサヒホールディングス<5857>の紘永工業譲渡(2019)
    55. 4-55. インターライフHDのサンケンシステム子会社化(2023)
    56. 4-56. TOKAIホールディングスの一連の建設・設備工事会社買収(中央電機工事、マルコオ・ポーロ化工、日産工業)
    57. 4-57. アイナボHDの中央窯業買収(2020)
    58. 4-58. サンテックの武蔵野工業子会社化(2014)
    59. 4-59. ASAHI EITOホールディングスのフラグシップス子会社化(2023)
    60. 4-60. JESCOホールディングスの菅谷電気工事・ベトナムPEICO買収(2017・2022)
    61. 4-61. ETSホールディングスのユウキ産業買収(2021)
    62. 4-62. アーキテクツ・スタジオ・ジャパンのSupaspace買収(シンガポール)(2024)
  5. 5. 事例から見る設備工事業界M&Aの共通点・傾向
    1. 5-1. 地域密着型企業との連携
    2. 5-2. 海外進出企業との協業・子会社化
    3. 5-3. 熱絶縁・空調・防災・エネルギー分野など多様な専門技術
  6. 6. 今後の業界展望と課題
    1. 6-1. 人材確保・技術継承への対策
    2. 6-2. DX(デジタル技術導入)と施工現場の効率化
    3. 6-3. 再生可能エネルギーや省エネ関連工事の拡大
    4. 6-4. 総合エンジニアリング企業への進化
  7. 7. まとめ

1. 設備工事業界とは

1-1. 設備工事業の概要

建設工事の中には、建物の本体を構築する「建築工事」に加え、その建物を機能させるための設備を取り付け・施工する「設備工事」があります。空調、給排水衛生、電気、通信、防災、冷暖房、太陽光発電など、幅広い分野にわたり専門性が求められます。近年は省エネルギー技術やIoT機器との連携、脱炭素への対応など、新たな要素も増え、ますます重要な役割を担っています。

1-2. 求められる機能と業界の特徴

設備工事業には以下のような特徴があります。

  1. 高い専門性: 各種工事に必要な資格(電気工事士、管工事施工管理技士、消防設備士など)が存在し、人材の技能レベルが施工品質を決定づけます。
  2. 幅広い技術領域: 公共・民間、ビル・工場・マンション・戸建など、対象物件と分野が多岐にわたるため、それぞれに応じたノウハウが必要です。
  3. サプライチェーンの複雑化: 資材の手配や下請け・協力会社との関係などが複雑で、受注から施工完了までの管理が難易度を増しています。
  4. メンテナンス需要の拡大: 建設後のメンテナンス契約やリニューアル工事までトータルに行うケースが増え、長期的な収益源となる例も多いです。

1-3. 近年の市場環境と課題

日本国内では建築需要自体は緩やかに推移していますが、設備工事においては老朽化したインフラや建物のリニューアル需要が確実に存在します。また、公共工事や再生可能エネルギー関連の案件も増加傾向にある一方で、業界全体としては少子高齢化による技術者不足や建設バブルのピークアウトなどの課題にも直面しています。そのため、業界全体が人材確保と生産性向上に注力し、M&Aを通じて施工体制の強化を図る動きが加速しているのです。


2. 設備工事業界におけるM&A活発化の背景

2-1. 人手不足と技術者高齢化への対応

電気・空調・衛生など設備工事には有資格者や高度な技能を持つ人材が不可欠ですが、人材不足と技術者の高齢化は深刻化しています。特に中小企業では後継者問題が起きやすく、そこで大手企業や投資ファンドがM&Aを行って技術者や資格をまとめて取り込む動きが増えています。

2-2. 施工範囲拡大と一括受注への需要

大きな建築プロジェクトや産業プラントでは、電気・空調・防災・通信・給排水など多種多様な設備工事が同時並行で必要です。発注者(ゼネコンや事業者)としては、できるだけ一括で発注し、工期短縮やコスト削減を狙うケースが多くなっています。従来は分業されていた領域をまとめて請け負えるようになるためには、企業規模や技術分野を統合するM&Aが有効策となるのです。

2-3. 技術革新(ICT・IoT)と省エネ・脱炭素の潮流

設備工事業界でもIoTやAI、クラウド活用などが進み、工事現場の効率化・安全性向上が図られています。また、省エネや再生可能エネルギー(太陽光・風力など)への取り組みが必須となり、これら新技術・新市場に強みを持つ企業を買収することで、自社のサービスを拡張する事例が増えています。

2-4. 海外展開の加速とグローバル化

国内の建設需要が今後大幅に伸びるわけではない現状、成長を求めて海外進出する企業が増えています。東南アジアや中東などでは、インフラ開発が盛んな国や地域が多く、日系設備工事企業が現地の同業を買収して参入する動きが加速。英語や現地資格、現地のネットワークを持つ企業を取り込むことで、一気に市場を開拓する狙いがあります。


3. M&Aの目的と期待されるシナジー

3-1. サービス領域・商圏拡大

M&Aにより異なる専門分野や商圏を獲得することで、建設プロジェクトを包括的に受注できるようになります。例えば電気設備しか扱わなかった企業が、空調設備の企業を買収することで総合設備工事として営業できるようになるケースがあります。

3-2. 技術ノウハウや有資格人材の確保

人材確保が難しい中、買収先の資格保有者や技能者をそのまま取り込むことで、自社の施工能力を大幅に高めることができる点は、設備工事業界特有の大きなメリットです。

3-3. 施工コスト・資材調達の効率化

規模が大きくなるほど、部材調達コストの削減や協力会社との交渉力向上が望めます。また、調達や工程管理などのバックオフィスを効率化できるため、結果的に収益性が高まる傾向があります。

3-4. 海外進出や先端技術分野参入の近道

海外現地法人を一から立ち上げるよりも、既存の企業を買収し、営業ネットワークやライセンスを引き継ぐ方が手っ取り早いケースが多いです。また、省エネルギーや再生エネルギーに関わる技術を持つ企業とのM&Aで、新規事業をスピーディーに立ち上げることも可能です。

3-5. 非コア事業の売却と選択と集中

大手企業が設備工事事業を手放す例も見られます(不動産開発業の一部門が設備工事を抱えていたりするなど)。その場合、当該事業を専門企業や投資ファンドが買収し、本業特化を図る親会社は売却益を得て経営資源を再配分できます。買収側もすでに実績のあるチームや顧客基盤を確保できるというウィンウィンの関係です。


4. 主なM&A事例解説

ここでは、非常に多岐にわたる設備工事業界のM&A事例を順に取り上げます。日本国内はもちろん、海外企業の買収やファンドを通じた譲渡事例、逆に非コア事業を売却する事例も含まれます。


4-1. 綜合警備保障(ALSOK)による日本ファシリオ買収(2010-2011)

背景・狙い
セキュリティ会社であるALSOKが電気工事中心の設備会社日本ファシリオを88.82%取得。警備・セキュリティに加え、建物の設備工事やメンテナンス受注を増やしたい意図があり、統合的なビル管理サービスを提供しやすくなりました。取得価額は63億円で、2011年3月末までに完了予定でしたが、2月末に完了しています。

シナジー
・警備サービスと設備管理の一体化による総合ビル管理
・既存警備先のビルや施設への設備工事受注拡大


4-2. 淺沼組、シンガポールEvergreen Engineering & Construction子会社化(2021-2022)

背景・狙い
ゼネコンの淺沼組は東南アジアのリニューアル事業を強化するため、Evergreen Engineering & Construction(シンガポール)株式を80%取得、2年後に残り20%を取得予定。最終的な取得価額は公表後55億2700万円となりました。

シナジー
・シンガポールおよびASEANでの増改築・設備工事の施工体制確立
・リニューアル案件を淺沼組の設計・施工のノウハウと組み合わせ拡大


4-3. 大成温調のウッドテック買収(2023)

背景・狙い
大成温調は空調や管工事などを主体とする設備工事会社。消火設備工事のウッドテック(千葉県印西市、年商20億円規模)を買収することで、施工管理機能の拡充と首都圏サービス強化を狙う。ウッドテックは消火設備や一般管工事に強みがあり、ファンド(ニューホライズンキャピタル)系の親会社からの株式取得。

シナジー
・空調 + 消火設備で施工範囲拡大
・首都圏における顧客サービスの一括対応


4-4. 東電通による武田通信子会社化(2009)

背景・狙い
東電通は情報通信設備工事中心の企業で、同業である武田通信を取得し経営基盤を強化。取得価額1億9700万円。営業利益が赤字だった武田通信を立て直す狙いもありました。


4-5. 富士電機E&C、古河総合設備、富士電機総設の3社合併(2009)

背景・狙い
設備工事事業を主力とする3社が、それぞれの技術と得意分野を統合し、新たな総合設備工事会社を形成。合併比率は富士電機E&C:古河総合設備:富士電機総設=1:1.2:7.4。大きなエンジニアリング力を持つ総合企業へ変貌し、多分野の顧客ニーズに対応可能となる狙い。


4-6. 中電工による昭和コーポレーション買収(2019-2020)

背景・狙い
中国電力系列の中電工は、投資業のホライズン1を買収することで、その子会社である昭和コーポレーション(熱絶縁工事)を取り込む。設備工事部門に熱絶縁技術を組み込み、幅広い施工をカバーできるように。昭和コーポは売上高215億円、営業利益12.9億円という大手の一つであり、強力な施工リソース確保が目的。


4-7. 大京によるアペックス和光子会社化(2013)

背景・狙い
マンション管理大手の大京が電気設備工事のアペックス和光を株式交換で子会社化。これにより大京が管理するマンションの電気関連工事を拡充し、グループシナジーを狙う。取得価額は未定ながら、大京グループ顧客への付加サービス提供での収益化が期待された。


4-8. 日本エスコンが中部電力グループ入り(設備工事・スマートハウス連携強化)(2021)

背景・狙い
ディベロッパーの日本エスコンが第三者割当増資を中部電力に対し実施し、同社の子会社(51.54%保有)となる。スマートハウスやエネルギー供給、設備工事連携など、エネルギー事業とのシナジーを狙う戦略的資本提携。


4-9. 日本エコシステムの一連の買収(テッククリエイト、葵電気工業、村川設備工業)

背景・狙い
日本エコシステム<9249>は高速道路保守を中心としていたが、鉄道や空調・給排水に乗り出すため立て続けに買収を実施。テッククリエイト(北陸の鉄道施設保守)、葵電気工業(名古屋市、空調設備・給排水)、村川設備工業(愛知県一宮市)。これにより設備工事やメンテナンス、鉄道インフラ分野を強化し、地域拡大を進めている。


4-10. 藤田電機工業が半導体販売事業を東海エレクトロニクスに譲渡検討(2019)

背景・狙い
電気・機械設備工事も手がける藤田電機工業は半導体部門を抱えていたが、東海エレクトロニクスに売却する方向で交渉。藤田電機は設備工事に経営資源を集中し、半導体事業を譲渡することで事業再編を図る例。


4-11. 田中商事の八汐電気(2009)・カワツウ買収(2020)

背景・狙い
電気工事材料・器具の卸売商社である田中商事が、実際の電気設備工事会社を買収。事業多角化と、販売先である電気工事会社のノウハウ活用が狙い。八汐電気の全株取得と、カワツウ(弱電、防災設備工事)の89%を取得し子会社化。顧客層拡大と施工力をグループ内に持つことで、一括ソリューション提供が可能になる。


4-12. 日成ビルドによるアーバン・スタッフ買収(2018)

背景・狙い
プレハブやユニットハウス、建築工事で知られる日成ビルドが栃木県のアーバン・スタッフ(太陽光発電設備工事)を100%取得。アーバンは30カ所超の自社太陽光発電設備を保有し、このノウハウを取り込みたい意図があった。再生エネルギー分野参入の好例。


4-13. 日本電通の大一電業社子会社化(2017)

背景・狙い
通信工事が強い日本電通が、電気設備工事に強みを持つ大一電業社(大阪市)を買収し、通信設備エンジニアリング事業に電気設備工事分野を追加。ワンストップサービスを強化。


4-14. 藤井産業のサンユウ買収(2018)

背景・狙い
藤井産業<9906>は電気機器専門商社で、IoT・省エネなど広域提案を強化。サンユウ(埼玉県、制御盤・分電盤や産業機械の電設工事)を買収して、埼玉での事業拡大と製造業向けソリューションを充実させる。


4-15. 燦キャピタルマネージメントの高山エンジニアリング買収(2023)

背景・狙い
太陽光発電の設備工事参入を目的に、特定建設業許可を持つ高山エンジニアリングを51%取得。サンテックに改称。再生エネルギー案件の工事受注増を急ぐための早期許可取得の意味合いが大きい。


4-16. 杉田エースのヨネミツ産業子会社化(2013)

背景・狙い
建築金物の卸売や排煙設備工事を行うヨネミツ産業を杉田エースが取得し、九州エリアの営業基盤を得る。排煙装置やトップライトの施工事業を組み込むことで、事業拡大を狙う。


4-17. 北陸電話工事のテレコムサービス買収(2012)

背景・狙い
北陸電話工事が、福井エリアで同業を営むテレコムサービス(売上6200万円規模)を100%取得。首都圏だけでなく北陸エリア全体の施工体制強化を図る。


4-18. 東京リスマチックとTKOの合併(2008)

背景・狙い
印刷事業の東京リスマチックは不動産管理会社TKOを吸収合併。これにより内神田事務所の所有者が同一グループになり、大型印刷機器の入れ替えや通信設備工事を機動的に進める狙い。


4-19. 千歳電気工業と保安工業の合併(2009)

背景・狙い
鉄道の強電部門に強い千歳電気工業と、信号部門に強い保安工業が合併し、鉄道電気設備工事の受注増に対応する。合併方法や比率は未定だが、鉄道インフラ投資の増加を捉えて施工体制を拡充するため。


4-20. レカムの住宅設備販売事業と産電テクノ譲渡(2021)

背景・狙い
情報通信サービスを主力とするレカム<3323>が、傘下の産電(太陽光発電やオール電化システム販売)と施工会社産電テクノをNEXTAGE GROUPに譲渡。コロナ禍での提案営業が伸び悩み、不採算化した事業を手放し、本業に集中。


4-21. 九電工の中央理化工業買収(2021)・Asia Projects Engineering買収(2013)

背景・狙い
中央理化工業(2021): 消防・防災設備工事を強化し、関東での営業基盤を拡大。
Asia Projects Engineering(2013): シンガポールで発電所工事・メンテナンス実績がある企業を82.09%取得し海外事業展開を加速。多国籍化と技術領域拡大を一挙に実現。


4-22. 塩見ホールディングスのアペック事業譲渡(2008)

背景・狙い
空調・給排水設備工事子会社アペックを戸田建設の新設会社アペックエンジニアリングへ事業譲渡。事業環境悪化による組織再編の一環として非中核事業を切り離し、財務改善を図る。


4-23. 極楽湯HDのエオネックス・利水社買収(2020)

背景・狙い
温浴施設を全国展開する極楽湯は、温泉掘削などを行うエオネックス、利水社(日本アジアグループ傘下)を子会社化し、設備工事や地質調査部門をグループ内に取り込み、温浴施設のメンテナンス体制を強化。


4-24. 加賀電子の東京電電工業子会社化(2009)

背景・狙い
電子部品商社の加賀電子が、コンピュータネットワークシステムを行う子会社加賀ソルネットを通じて電気設備工事会社の東京電電工業を取得。ネットワークソリューション分野の一括サービスを目指す。


4-25. 三機サービスの長沼冷暖房買収(2023)

背景・狙い
メンテナンス・省エネ提案が主力の三機サービス<6044>は、新潟市の長沼冷暖房(冷暖房・給排水設備工事)を買収し、新潟エリアの新規顧客開拓や施工体制強化を狙う。


4-26. 協和日成のガイアテック買収(2021)

背景・狙い
ガス工事大手の協和日成<1981>は戸建住宅向けガス配管に加え、冷暖房・給排水分野の強化を目指し、ガイアテック(外構工事含む)を買収。一括工事受注体制を構築する。


4-27. ユアテックの空調企業買収(2020)・ベトナムSigma子会社化(2021)

背景・狙い
空調企業(2020): 仙台市の空調企業を全株取得し施工力増強。
Sigma Engineering(ベトナム、2021): ベトナム全域で電気・空調・給排水工事などを展開する現地大手を子会社化し、海外事業を加速。


4-28. 協和エクシオと池野通建(2010)

背景・狙い
通信設備大手の協和エクシオが池野通建へ第三者割当増資の引き受けを通じ50.1%取得し、首都圏施工基盤の強化を図る。取得価額10.4億円。


4-29. 丸紅のMC Marine Energy譲渡(洋上風力発電)(2017)

背景・狙い
丸紅が洋上風力発電設備工事を手がけるSeajacks Internationalへの出資を一部保有していたが、MC Marine Energyを通じて保有分を商船三井<9104>に売却。洋上風力事業ポートフォリオの見直しと資本回収の一例。


4-30. ミライトHDの西日本電工買収(2017)

背景・狙い
通信設備大手のミライトHDが空調・電気設備工事の西日本電工(熊本市、売上21億円)を株式99.1%取得。一貫施工体制と九州エリアの拠点拡大を狙う。


4-31. 関電工の川崎設備工業TOB(2008)

背景・狙い
電気設備大手の関電工が川崎設備工業をTOBで50.1%取得。川崎設備は空調・給排水衛生設備工事を主とする企業で、関電工との連携により競争力強化を図る。


4-32. ラックランドの協和電設買収(2017)・木戸設備工業買収(2016)

背景・狙い
商業施設の内装施工で強いラックランド<9612>が、防災工事や給排水設備工事のノウハウを取り込むため協和電設、木戸設備工業を買収。グループ総合力を高め、施主へのワンストップサービス提供へ。


4-33. 環境管理センターのサンエイテクニクス買収(2022)

背景・狙い
環境調査・分析を手がける環境管理センター<4657>が、設備工事サンエイテクニクス(名古屋)を60%取得し、省エネや脱炭素に向けた設備工事分野を強化。工事まで含めたトータルソリューションを提供。


4-34. ハリマビステムのTECサービス買収(2024)

背景・狙い
ビル管理・清掃業務のハリマビステム<9780>が、関東で空調設備工事を展開するTECサービスを買収。設備管理や保守サービスの強化を狙う。


4-35. フリードによるトーネット. MBO譲渡(2008)

背景・狙い
情報通信機器の取付工事を行うトーネット.は、グループ外からの委託が増える一方でフリードグループとしては業務が希薄化。お互いに管理コストが負担となり、代表取締役へのMBOで株式譲渡。非中核事業の切り離し事例。


4-36. ヒビノのサンオー買収(2019)

背景・狙い
音響・映像のヒビノ<2469>が、防音設備工事のサンオーを7000万円で取得。工場・オフィス・公共施設の騒音対策を強化。子会社である日本音響エンジニアリングと組み合わせ、騒音対策の施工受注を狙う。


4-37. マサルによる塩谷商会買収(2011)

背景・狙い
防水工事を主力とするマサル<1795>が、給排水冷暖房設備の塩谷商会を子会社化し、業種を広げて総合的な改修工事を行える体制を整備。


4-38. フジ住宅の雄健建設グループ3社買収(2019-2020)

背景・狙い
フジ住宅<8860>が大阪の雄健建設(鉄骨造・RC造)、電気工事の関西電設工業、空調給排水の日建設備工業の3社をまとめて子会社化。木造以外の住宅や大型物件にも対応できる体制を整える。


4-39. マイスターエンジニアリングのエコー防災買収(2018)

背景・狙い
ファシリティー関連事業の強化を目指すマイスターエンジニアリング<4695>が、消防用設備工事を行うエコー防災を買収。設計・施工・保守まで一貫対応し、事業領域拡大。


4-40. サコスの親和電気買収(2021)

背景・狙い
建設機械レンタルなどのサコス<9641>は、親和電気を子会社化し、発電機レンタルの新需要を開拓。電気設備工事のノウハウを組み合わせることで、災害時やイベント時にレンタルビジネスを拡充できる可能性がある。


4-41. スズキ太陽技術の大香電工子会社化(2016)

背景・狙い
エネルギー分野に強みを持つスズキ太陽技術<1432>が、電気設備工事の大香電工を300万円で買収。小規模ながらも電気工事資格やノウハウを獲得し、再生可能エネルギー関連事業拡大を狙う。


4-42. セキュアのジェイ・ティー・エヌ買収(2023)

背景・狙い
セキュア<4264>は入退室管理や監視カメラシステムを扱う会社。電気通信・電気工事を行うジェイ・ティー・エヌ(横浜市)を7億9500万円で取得し、施工人員不足リスクを軽減。大規模プロジェクトにも対応可能な体制を目指す。


4-43. コムシスHDとつうけんの経営統合(2010)

背景・狙い
通信工事大手コムシスホールディングス<1721>が北海道地盤のつうけん<1940>を株式交換で子会社化。全国規模の通信工事体制を強化し、NTTグループ工事のシェア拡大を図る。つうけんは上場廃止。


4-44. 日本ハウズイングの亜細亜綜合防災買収(2015)・メイセイ買収(2020)

背景・狙い
マンション管理大手の日本ハウズイング<4781>が消防設備工事や給排水設備工事の専門企業を買収し、管理物件の工事受注を内製化。老朽化した設備更新の需要を取り込むことで収益を拡大。


4-45. コムシスHDによるワールドエコ株式交換(2022)

背景・狙い
コムシスHDが信越エリアでセメント骨材卸・ミネラルウォーター製造を行うワールドエコを株式交換で子会社化。ワールドエコ子会社の土木・建築会社や産廃事業など多様な機能を取り込み、TOSYSなどとの連携を進め、エリアでの建設・通信事業を拡大。


4-46. シーキューブの三光通信買収(2012)

背景・狙い
シーキューブ<1936>が電気通信設備会社三光通信(首都圏)を買収し、東京エリアの施工体制を強化。地方本社の企業が首都圏市場を攻略するための買収例。


4-47. ダイキアクシスのアドアシステム買収(2023)・冨士原冷機、日本エアーソリューションズ買収(2019)

背景・狙い
水回り事業を主力とするダイキアクシス<4245>が、空調・換気、給排水衛生工事企業を複数買収し、設備関連のワンストップサービスを拡大。地方に強い企業を取り込みながら全国展開を推進。


4-48. エア・ウォーターの半田買収(2015)

背景・狙い
産業ガスのエア・ウォーター<4088>が北陸の医療機器商社半田を70.03%取得。医療分野の事業拡張に加え、医療設備工事の受注や滅菌サービスなど病院向け総合ソリューション体制を強化。


4-49. サンフロンティア不動産のコミュニケーション開発買収(2021)

背景・狙い
オフィスビル再生事業で強みを持つサンフロンティア不動産<8934>が、ネットワーク工事や電気設備工事を行うコミュニケーション開発を買収。オフィスビル内のLANや電話配線などを一括で提供し、付加価値を高める。


4-50. エフティグループのジャパンTSS譲渡(2024)

背景・狙い
OA機器販売で知られるエフティグループ<2763>は、通信・電気設備工事を手がける子会社ジャパンTSSをICコーポレーションに譲渡。グループ構造の再編、非コア事業切り離しを図る。ICコーポレーションは工事〜保守までトータルで担う体制づくりを進める。


4-51. オートバックスセブンのPCTホールディングス買収(2024)

背景・狙い
オートバックスセブン<9832>が投資ファンド系列のPCT HD(電気設備工事のパワーコントロールテクニックを保有)を取得。EV充電設備など次世代自動車関連設備工事の強化へ。


4-52. ウェーブロックHDのエイゼンコーポレーション買収(2022)

背景・狙い
樹脂建材製造のウェーブロックHD<7940>が土木・管工事のエイゼンコーポレーション(前橋市)を買収し、地中熱事業を推進。エイゼンは地中熱利用設備の元請けもできる技術を持ち、新たなエネルギー事業の柱を育成。


4-53. アサヒ衛陶(ASAHI EITO)による日本ライフエレベーション買収(2023)ほか

背景・狙い
衛生陶器のアサヒ衛陶<5341>が太陽光発電設備工事の日本ライフエレベーションを株式交付で51%取得。住設機器販売から派生して太陽光・オール電化市場へ多角化。取得日は2023年4月5日で、ライフエレベーション1株につきアサヒ衛陶965株を割り当てる。


4-54. アサヒホールディングス<5857>の紘永工業譲渡(2019)

背景・狙い
貴金属リサイクル中心のアサヒHDが消防設備工事の紘永工業(売上24億円)を永和ファシリティーズへ譲渡。事業ポートフォリオ整理と経営資源集中を実施。


4-55. インターライフHDのサンケンシステム子会社化(2023)

背景・狙い
店舗内装工事大手のインターライフ<1418>が、AV機器設備工事で実績のあるサンケンシステムを5億4000万円で買収。飲食店や商業施設における音響・照明・映像設備工事の対応力を強化。


4-56. TOKAIホールディングスの一連の建設・設備工事会社買収(中央電機工事、マルコオ・ポーロ化工、日産工業)

背景・狙い
LPガス・通信事業を主力とするTOKAI<3167>が、名古屋の電気設備工事会社や大規模修繕工事会社、岐阜の建設会社などを次々に買収し、中京エリアでの建築・設備分野を強化。ガス事業との連携を深め、総合インフラ企業としての存在感を高めている。


4-57. アイナボHDの中央窯業買収(2020)

背景・狙い
タイル・住設機器などを扱うアイナボホールディングス<7539>がタイル工事の中央窯業を買収。職人不足が深刻なタイル施工領域での対応力を向上し、施工体制強化を狙う。


4-58. サンテックの武蔵野工業子会社化(2014)

背景・狙い
管工事会社サンテック<1960>が、空調管工事の武蔵野工業を子会社化。両社の工事部門を統合し、空調〜電気設備まで幅広く対応できると判断。取得額は7億円と大きめの投資。


4-59. ASAHI EITOホールディングスのフラグシップス子会社化(2023)

背景・狙い
衛生陶器や建築設備工事のASAHI EITOが商業施設管理運営のフラグシップスを株式交付で51%取得しようとしたが、有価証券届出書未提出に気付きいったん取り消し。後日、再決議で株式交付を実施。商業施設の管理ノウハウを得て、自社の設備販売・施工に繋げる戦略。


4-60. JESCOホールディングスの菅谷電気工事・ベトナムPEICO買収(2017・2022)

背景・狙い
電気設備工事のJESCO HD<1434>が、北関東の菅谷電気工事を取得して国内施工体制を強化。さらにベトナムのPEICO Construction(ハノイ)を65%取得し、ホーチミン〜ハノイと全国展開を整備。


4-61. ETSホールディングスのユウキ産業買収(2021)

背景・狙い
電気工事中心のETS HD<1789>が空調・水処理工事のユウキ産業(大阪市)を買収。ビルや工場の設備工事をまとめて請け負える体制を整えることで市場拡大。


4-62. アーキテクツ・スタジオ・ジャパンのSupaspace買収(シンガポール)(2024)

背景・狙い
高級注文住宅のアーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>が、シンガポールの内装設備工事会社Supaspaceに資本参加し、東南アジアのリフォーム・建築市場を開拓。日本製建材・設備機器の輸出も視野に入れる。


5. 事例から見る設備工事業界M&Aの共通点・傾向

ここまでの事例を俯瞰すると、次のような共通点やトレンドが見えてきます。

5-1. 地域密着型企業との連携

地場の中堅・中小設備工事会社は長年にわたり地域で実績や顧客基盤を築いているケースが多く、大手や異業種企業が参入するときには買収が近道となります。特に鉄道・高速道路保守、ビル保守などは地域ごとのネットワークが欠かせないため、地域企業を取り込むパターンが多いです。

5-2. 海外進出企業との協業・子会社化

成長市場を求めて東南アジアや海外へ出ていく企業が増えています。ベトナム、シンガポールなどに既に足場を持つ現地企業を子会社化することで、ライセンスや人脈、ノウハウを素早く獲得し、海外事業を拡大する動きが代表的です。

5-3. 熱絶縁・空調・防災・エネルギー分野など多様な専門技術

設備工事と一言でまとめても、空調、電気、給排水、防災、通信、熱絶縁、太陽光などの分野があり、それぞれ専門資格とノウハウが要求されます。多くのM&A事例は、買収先が特定の専門分野で強みを持つ会社であることが多く、そこをうまく取り込み総合力アップを図るのが典型です。


6. 今後の業界展望と課題

6-1. 人材確保・技術継承への対策

業界を牽引する技術者や職人の高齢化は急務の課題であり、大手やファンドによるM&Aが後継者不在の中堅企業を救済する動きは今後も続くでしょう。一方で、買収後の人材定着やノウハウ継承がスムーズに進むよう、PMI(統合プロセス)を丁寧に行う必要があります。

6-2. DX(デジタル技術導入)と施工現場の効率化

大規模な再開発プロジェクトやスマートシティ、脱炭素の動きに合わせて施工現場の効率化が求められ、IoTやBIM(Building Information Modeling)の活用、遠隔施工など新技術が進展します。こうした技術を得意とするベンチャーとのM&Aも増加するとみられます。

6-3. 再生可能エネルギーや省エネ関連工事の拡大

太陽光や風力、バイオマスなど新エネルギー設備工事の需要は継続的に高い水準にあります。今後は蓄電池や水素関連など新分野も広がり、対応技術を持つ企業の争奪戦が激化する可能性があります。

6-4. 総合エンジニアリング企業への進化

小規模な専門会社が単独で生き残るには限界がある一方、建築・電気・設備・ICTなど全方位で対応する総合企業は需要増が見込まれます。M&Aを通じて複数分野の施工能力を揃えた“ワンストップサービス企業”が台頭しやすい環境です。


7. まとめ

本記事では、多数の具体的M&A事例を網羅的に紹介しながら、設備工事業界の現状や再編の背景、今後の方向性を考察してきました。以下に主なポイントを整理します。

  1. M&A活性化の背景
    • 人材確保(特に有資格技術者)や後継者問題への対応
    • 一括請負・ワンストップ対応への需要増
    • 省エネ・再生可能エネルギー分野の拡大
    • 海外展開の加速
  2. 事例の多様性
    • 異業種からの参入(警備・不動産・ディベロッパー・ガス会社など)
    • 地域特化企業の買収による商圏拡大
    • 海外企業の買収で国際事業の拡大
    • ファンド保有企業をさらにM&Aで再編する動き
  3. 期待されるシナジー
    • サービス領域拡大(電気・空調・給排水など総合化)
    • 資材・施工管理の効率化
    • 海外での新規受注拡大
    • 人材・技術の継承や同業他社との競合力強化
  4. 今後の見通し
    • 人材不足が進むなかで、M&Aによる規模拡大や事業統合は引き続き続く見込み
    • IT・IoT技術、再エネ関連など新分野への参入を機にM&Aが増える可能性が高い
    • 国内需要が飽和する反面、海外案件やリニューアル案件では需要が底堅く、日系企業の活躍余地がある

設備工事は建物やインフラの寿命を左右する重要な要素であり、今後も高いレベルの技術と柔軟な工事体制が求められます。日本国内での建築需要が先細るとの見方がある一方、既存施設のメンテナンス・リノベーションや新たなエネルギー関連需要は継続するため、適切に事業を拡大・再編できる企業は引き続き成長が期待できると考えられます。

特に大きなトレンドとしては、省エネ・脱炭素やスマートシティ構想など、社会インフラの再構築が進む中で設備工事の役割が拡大している点です。それに伴い、工事の高度化・複雑化が進むため、複数分野の技術と資格を集約できる大手・中堅企業が有利になり、M&Aによる生き残りと業界再編はますます進むでしょう。

企業規模が拡大すれば資本力が増し、より大規模かつ先進的なプロジェクトに参画しやすくなりますが、一方でPMIや企業文化の統合、現場管理の標準化など運営面の課題も多々あります。成功のカギは、単なる事業領域の足し算ではなく、買収後の人材・技術・管理手法をいかに有機的に融合させるかにかかっているといえるでしょう。

国内外の大手・中堅企業やファンドの動向を見ながら、今後の設備工事業界がどのように再編され、新たなサービスを生み出していくのか注目が集まります。既に大手企業による中小企業の取り込みが活発化していますが、さらに通信・IT・エネルギー・不動産など多角的な業種との連携が進むことが予測されます。

こうした状況を踏まえ、設備工事業界は今後ますます業務効率化と高度化が求められる「生産性革命」の最前線とも言えるでしょう。現場での熟練技能と最新テクノロジーが合わさることで、新たな価値創造が期待されると同時に、経営者にとっては的確なM&A戦略・パートナー選定が将来を大きく左右することになります。

本記事で取り上げた多数のM&A事例からも、既に業界は活発に再編が進んでいることが分かります。今後も、特に以下の領域で大きな動きが予想されます。

  • 再生エネルギー・省エネ工事: 太陽光、風力、蓄電池関連など
  • 海外インフラ整備: 東南アジア、アフリカ、中南米などの発展途上国
  • スマートシティやIoTインフラ: デジタル制御やビルオートメーションシステム
  • 老朽インフラの長寿命化: 既存公共施設の補強・改修にともなう工事需要

こうした大きな潮流の中で、設備工事業界全体がさらに活性化し、業界内外のM&Aが継続的に起こる見通しです。建設投資が高止まりするわけではなく、国内市場の飽和感はあるものの、「建設バブル後の需要」を確実に捉えた企業が生き残り、グローバル市場や高度化・多角化する施工領域へと乗り出していくことでしょう。