目次
  1. 1. はじめに
  2. 2. コールセンター業界の概要と特徴
    1. 2-1. コールセンターの種類と機能
    2. 2-2. 日本国内のコールセンター市場の成長要因
    3. 2-3. コールセンターを取り巻く課題と新たなニーズ
  3. 3. M&Aが盛んな背景
    1. 3-1. 事業多角化と垂直統合の目的
    2. 3-2. DX(デジタルトランスフォーメーション)との親和性
    3. 3-3. 人材確保と人件費問題への対応
  4. 4. コールセンターにおけるM&Aのメリット・デメリット
    1. 4-1. M&Aによるシナジー効果
    2. 4-2. 企業買収に伴うリスク要因
    3. 4-3. PMI(Post Merger Integration)の重要性
  5. 5. 主要事例から見るコールセンターM&Aの実態
    1. 5-1. 比較.com<2477>によるプレコのホテル予約サイト事業取得
    2. 5-2. 夢の街創造委員会<2484>による薩摩恵比寿堂の子会社化
    3. 5-3. 日本電産<6594>によるANA IMEPの子会社化
    4. 5-4. 健康コーポレーション<2928>によるエムシーツーオフィスの子会社化
    5. 5-5. 昭文社ホールディングス<9475>によるKuquluの経営陣への譲渡
    6. 5-6. レカム<3323>による大連傑作商務諮詢有限公司の子会社化
    7. 5-7. ユーグレナ<2931>によるクロレラサプライの子会社化
    8. 5-8. 岩井証券<8707>によるCSKHD傘下のコスモ証券の子会社化
    9. 5-9. モバイルクリエイト<3669>によるオプトエスピーの子会社化
    10. 5-10. もしもしホットライン<4708>関連の複数事例
    11. 5-11. 岡三証券グループ<8609>による丸三証券<8613>非対面事業の取得
    12. 5-12. 健康ホールディングス<2928>によるエムシーツーの子会社化
    13. 5-13. 伊藤忠食品<2692>による家事代行サービスのカジタク子会社化
    14. 5-14. ヤマトHD<9064>によるヤマト・スタッフ・サプライの株式譲渡
    15. 5-15. ラストワンマイル<9252>によるプレミアムビジネスサポートほか複数子会社化
    16. 5-16. フェヴリナHD<3726>によるサイエンスボーテの株式交換
    17. 5-17. フルキャストHD<4848>によるコールセンター関連子会社の譲渡・取得事例
    18. 5-18. ベインキャピタルによるベルシステム24<6183>買収
    19. 5-19. りらいあコミュニケーションズ<4708>による海外(フィリピン/ベトナム)企業の買収
    20. 5-20. フルキャストHD<4848>による光通信<9435>グループ2社の子会社化
    21. 5-21. スカラ<4845>と光通信<9435>グループ間のコールセンター関連事業取得・譲渡
    22. 5-22. ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス<3657>によるMSDホールディングス子会社化
    23. 5-23. パイプドビッツ<3831>によるアズベイスの子会社化
    24. 5-24. ネクストジェン<3842>によるティアック<6803>のボイスロギング事業取得
    25. 5-25. ワールド・ロジ<9378>によるIMJビジネスコンサルティング追加取得
    26. 5-26. ピーアンドピー<2426>によるプレミア・スタッフの子会社化
    27. 5-27. ピアラ<7044>によるPIALab.の譲渡
    28. 5-28. ファーマフーズ<2929>によるファーマフーズコミュニケーション東海の吸収合併
    29. 5-29. ビジネスブレイン太田昭和<9658>によるトゥインクルの子会社化
    30. 5-30. セコム<9735>によるベネッセHD<9783>傘下TMJの子会社化
    31. 5-31. ジャパンベストレスキューシステム<2453>によるアクトコールなどのM&A
    32. 5-32. ティーガイア<3738>によるPCテクノロジーの完全子会社化
    33. 5-33. セイノーHD<9076>による日祐の子会社化
    34. 5-34. ディア・ライフ<3245>によるNFCHD<7169>傘下新会社の子会社化
    35. 5-35. スリープログループ<2375>による関連事業の取得・譲渡
    36. 5-36. クレオ<9698>によるアダムスコミュニケーション子会社化
    37. 5-37. システムズ・デザイン<3766>によるフォー(IDカード関連)の子会社化
    38. 5-38. エフ・コード<9211>によるメディアリンク<6659>からの「sinclo」事業取得
    39. 5-39. インパクトHD<6067>によるジェイエムエス・ユナイテッド子会社化
    40. 5-40. インバウンドテック<7031>によるシー・ワイ・サポート子会社化
    41. 5-41. イーピーエス<4282>によるメディカルラインの買収
    42. 5-42. キャリアリンク<6070>によるジャパン・ビジネス・サービスの子会社化
    43. 5-43. ジェーピーエヌ債権回収<8774>によるコスモサポート買収
    44. 5-44. アクトコール<6064>によるジーエルシーのMBO譲渡
    45. 5-45. ジェイフロンティア<2934>によるAIGATEキャリア子会社化
    46. 5-46. WOWOW<4839>によるフロストインターナショナルコーポレーション子会社化
    47. 5-47. PKSHA Technology<3993>によるアーニーMLG子会社化
    48. 5-48. AKIBAホールディングス<6840>によるiconic storage子会社化
    49. 5-49. アウトソーシング<2427>のMBOによる非公開化
    50. 5-50. GFA<8783>によるネクスト・セキュリティのコールセンター事業譲渡
    51. 5-51. Casa<7196>によるプロフィットセンター子会社化
    52. 5-52. Jトラスト<8508>による西京銀行傘下の西京カード子会社化
    53. 5-53. アウトソーシング<2427>によるエコシティグループ子会社化
    54. 5-54. fonfun<2323>によるselfreeの子会社化
  6. 6. M&A後の統合プロセスと経営上の留意点
    1. 6-1. コールセンター運営におけるPMIの特徴
    2. 6-2. 人材マネジメントと教育体制の一体化
    3. 6-3. 顧客情報管理・システム統合の注意点
  7. 7. コールセンターM&Aの今後の展望
    1. 7-1. アウトソーシングとBPOのさらなる拡大
    2. 7-2. AI・RPA導入によるオペレーション変革
    3. 7-3. 地方創生とコールセンター誘致
    4. 7-4. グローバル化・多言語化への対応強化
  8. 8. まとめ

1. はじめに

企業と顧客を結ぶ接点として、コールセンターの役割は近年ますます重要性を増しています。企業側は商品・サービスの販売促進や顧客サポートを強化するための「窓口」として、あるいはマーケティングの一環として、コールセンター機能を拡充する傾向にあります。一方、消費者側からも高品質かつスピーディなサポートが求められており、24時間365日・多言語対応など、コールセンターが担う業務領域は拡大を続けています。

こうした状況下、コールセンター事業を内製化からアウトソーシングへ切り替える企業も多く、運営受託やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手掛ける企業同士でのM&Aは大きな注目を集めています。また、大手企業が新たにコールセンター機能を獲得するために専門性の高い企業を買収する事例も相次いでおり、さらに海外事業への展開や多言語対応などを視野に入れた動きも活発化してきました。

本記事では、コールセンター業界におけるM&A事例を多数参照しながら、なぜこうした動きが加速しているのか、どのような企業が参入しているのか、そしてそれらのM&Aが企業にもたらすメリットや課題は何か、といったポイントを詳細に解説してまいります。


2. コールセンター業界の概要と特徴

2-1. コールセンターの種類と機能

コールセンター業界には大きく分けてインバウンドアウトバウンドの2種類があります。インバウンドは、商品・サービスについての問い合わせやサポート依頼など、顧客からの「受信」対応を主体とするコールセンターです。テクニカルサポートやカスタマーサポートが代表例として挙げられます。
一方、アウトバウンドは、コールセンター側から電話をかけて提案営業や調査などを行う手法です。通信販売や金融商品、各種サービスの勧誘・新規顧客開拓などに用いられます。

コールセンターは企業と顧客の直接的なコミュニケーションチャネルであるため、企業のイメージを左右する極めて重要な役割を担います。特にクレーム対応やテクニカルサポートでは、電話対応の質が企業評価に直結しやすいことから、オペレーター教育や品質管理が欠かせません。

2-2. 日本国内のコールセンター市場の成長要因

日本国内のコールセンター市場は、以下のような理由により成長傾向が続いています。

  1. サービス経済化の進行
    製造業のサービス化や通信販売・ECの拡大に伴い、顧客対応の重要度が高まっています。消費者からの問い合わせに素早く対応し、満足度を高めることが競争力の源泉となっています。
  2. 通信インフラの高度化
    インターネットやモバイル通信の普及により、消費者はスマホやSNS等から問い合わせる機会が増え、コールセンターには電話だけでなくチャットやメールなどのマルチチャネル化が進行しています。
  3. 高齢化と多様化するニーズ
    高齢者向けに電話でのサポートサービスが拡充されるなど、年代や多様化するライフスタイルに合わせたコールセンターの需要が高まっています。
  4. 多言語対応需要の増大
    訪日外国人や在留外国人の増加によって、英語や中国語などを含めた多言語対応コールセンターの需要が拡大しており、企業が専門性のあるコールセンターを確保・強化しようとする動きが加速しています。

こうした背景から、コールセンター業務への投資が増え、専業企業のみならず、通信、EC、金融、旅行、製造など、さまざまな業種の企業が自前のコールセンター機能を充実させたり、外部の受託事業者に委託したりするケースが拡大しています。

2-3. コールセンターを取り巻く課題と新たなニーズ

コールセンターの運営には大きく3つの課題があります。

  1. 人材不足とオペレーター定着率の低さ
    コールセンター業界は労働集約型であるため、人材の確保や育成が大きな課題です。オペレーターの定着率が低いとサービスの品質やコストに影響が出やすいと言えます。
  2. コスト増大問題
    雇用コストや設備費用、システム投資がかさむ一方、受託単価や顧客企業の予算削減圧力が存在するため、コールセンター事業者にとっては利益確保が難しい側面もあります。
  3. DX・AIへの対応
    AIチャットボットや音声認識技術、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの導入が進む中、どこまで自動化し、どこからをオペレーターが担当すべきか、その境界を見極める必要があります。テクノロジーとの組み合わせ方が事業の成否を分ける局面です。

これらの課題や新たなニーズが、コールセンター事業の統合・集約や規模拡大の必要性をもたらし、M&Aの活発化につながっているとも言えます。


3. M&Aが盛んな背景

3-1. 事業多角化と垂直統合の目的

コールセンター事業者にとってM&Aが盛んな理由のひとつは、事業の多角化です。たとえば、通信販売事業者がコールセンターを自前で強化することで、顧客との接点を一元管理し、さまざまな販売チャネルでの統合的なマーケティングを可能にします。また、コールセンターを持つ企業同士が合併・買収することで、受託案件の大型化や対応領域の拡大が図れます。

さらに垂直統合を目指すケースも増えています。商品開発から販売、アフターサービスやサポートまでを一気通貫で行える体制を構築し、他社との差別化や利益率の向上を図るのです。

3-2. DX(デジタルトランスフォーメーション)との親和性

コールセンターとDXは非常に親和性が高い領域です。AIチャットボットやデータ分析ツールの導入により、顧客とのやり取りを高度に解析し、顧客満足度や購入率向上に生かす取り組みが注目されています。M&AによってAI技術を持つ企業を取り込む、あるいはコールセンター運営のノウハウを持つ会社を買収して自社のシステムと掛け合わせるといった動きが、さらなるイノベーションを生みやすくしていると言えるでしょう。

3-3. 人材確保と人件費問題への対応

コールセンター事業は基本的に労働集約的であるため、人材の確保が大きな課題です。慢性的な人手不足に加え、首都圏などではオペレーター確保が困難になりがちです。こうした状況から、大都市圏以外へ拠点を置く企業を買収し、地方でのオペレーションを確立する動きも見られます。とりわけ地方誘致型のコールセンターでは地代や人件費が比較的抑えられるメリットがあるため、人件費問題に対応する手段としてM&Aを活用する企業も増えています。


4. コールセンターにおけるM&Aのメリット・デメリット

4-1. M&Aによるシナジー効果

コールセンター業界でM&Aが盛んである最大の理由は、シナジー効果が得られやすいことにあります。具体的には以下のような効果が期待されます。

  1. 規模の拡大による交渉力強化
    運用拠点を複数地域に増やすことで、大手クライアントからの大型案件を獲得しやすくなります。また、システム導入や通信回線の契約などでコストダウンを図れます。
  2. ノウハウ共有によるオペレーション効率化
    買収先企業が持つ教育プログラムや品質管理手法などを取り込み、統合的な運営ノウハウを確立することでオペレーター教育が円滑になり、対応品質が上がります。
  3. サービスラインアップの拡充
    受信型、発信型の両機能を取り揃えるほか、多言語対応や夜間サポートなどの専門性を高め、新規クライアントの開拓や既存クライアントへの追加提案(クロスセル)を実現します。

4-2. 企業買収に伴うリスク要因

一方で、M&Aには当然ながらリスクも存在します。

  1. 買収価格の過大評価
    コールセンター事業は労働集約型で利益率が高くないケースも多く、買収価格が事業価値に比して過剰になると、のちの利益創出が困難になる恐れがあります。
  2. 企業文化の違いによる衝突
    オペレーター教育やシフト管理など、コールセンター運営は企業によって手法や文化が異なり、統合後に混乱を招く場合があります。
  3. クライアント流出リスク
    買収・合併による経営方針の転換やサービス変更をクライアントが嫌い、他社に乗り換えてしまう可能性も否定できません。

4-3. PMI(Post Merger Integration)の重要性

M&A成功の鍵は**PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)**にあると言われます。PMIでは以下の点が特に重要です。

  • システム・業務フローの統合
    コールセンター基幹システムの共通化やCRM(顧客関係管理)システムの集約がスムーズに進むか。
  • 教育・人事制度の統合
    オペレーターやSV(スーパーバイザー)の研修体制、人事評価、キャリアパスの共有を早期に図ることが必要。
  • ブランド・文化の共有
    コールセンター業務は顧客対応が中心であり、従業員が企業ブランドや理念を正しく理解していないと品質低下を招く可能性がある。

5. 主要事例から見るコールセンターM&Aの実態

ここでは、実際に公表されているM&A事例をもとに、買収・統合の狙いやシナジー効果について考察します。以下、膨大な事例を要点のみ整理してご紹介しながら、それぞれの背景やねらいを掘り下げていきます。


5-1. 比較.com<2477>によるプレコのホテル予約サイト事業取得

  • 取得の概要
    比較.comは、完全子会社のグローバルトラベルオンラインを通じ、プレコ(大阪市)のホテル予約サイト事業を取得。主にビジネスホテル予約のコールセンター業務と、国内ホテルオンライン予約サービスを展開する事業が対象。
  • 狙い
    比較.comは比較サイトを中心としたオンラインサービスを強みとしており、旅行関連の流通においても比較情報を提供してきた。今回の取得によって、オンライン旅行事業を強化し、コールセンター機能を併せ持つことでサービスの幅を広げることができる。
  • シナジー
    ホテル予約のコールセンター業務はインバウンド対応の典型例であり、オンラインとの連携による一貫した顧客サービスを可能にする。相乗効果として、既存の比較サイト利用者へのクロスセルが期待される。

5-2. 夢の街創造委員会<2484>による薩摩恵比寿堂の子会社化

  • 取得の概要
    夢の街創造委員会は、通信販売業の薩摩恵比寿堂を子会社化。薩摩恵比寿堂はコールセンターを活用し、高品質な焼酎などを中心とした通販事業を展開。
  • 狙い
    夢の街創造委員会は宅配注文サイト「出前館」を運営するなど、飲食関連のECやサービスを展開している。コールセンターを活用した通信販売を取り込み、飲食領域の販路拡大とユーザーの利便性向上を狙った。
  • シナジー
    コールセンター基盤のノウハウを獲得することで、既存事業との顧客対応品質を上げることが可能。また、通販分野への進出によって、BtoB・BtoCどちらにも商機が広がる。

5-3. 日本電産<6594>によるANA IMEPの子会社化

  • 取得の概要
    日本電産が、洗濯機や乾燥機用モーターを製造・販売するルーマニアのANA IMEPを子会社化。さらにコールセンターや経理などのサービスセンターとしての活用も視野に入れていると発表。
  • 狙い
    日本電産は世界規模でモーター事業を拡大しており、欧州拠点の強化を目指す。労働コストが低いルーマニアの拠点を生産とバックオフィス(コールセンター含む)機能の両面で活用し、効率性を高める狙い。
  • シナジー
    モーター事業の生産拠点のみならず、コールセンターを含むバックオフィス部門も欧州に置くことで24時間対応などグローバル顧客サポート体制を整備できると期待。

5-4. 健康コーポレーション<2928>によるエムシーツーオフィスの子会社化

  • 取得の概要
    健康コーポレーションは、子会社のエムシーツーを通じてオフィス向け文具販売を行うエムシーツーオフィスを買収。エムシーツーはテレマーケティングやコールセンター事業を展開しており、エムシーツーオフィスはアウトバウンドコールを活用している。
  • 狙い
    コールセンター運営企業同士の連携を深め、BtoB事業で培ったノウハウを共有することで、相互にオペレーターの配置や顧客への販売促進が可能になる。
  • シナジー
    人材の相互活用や効率的なコールセンター運営により、コール品質の安定化、コスト削減、クロスセルが期待できる。

5-5. 昭文社ホールディングス<9475>によるKuquluの経営陣への譲渡

  • 取得の概要
    昭文社HDはコールセンター事業子会社のKuquluを、同社社長へ譲渡。海外旅行向けのコールセンター業務がコロナ禍で不振となり、グループ再編の一環として手放す形。
  • 狙い・背景
    観光需要が急減する中、不要資産や不採算事業を整理し、グループ全体の経営をスリム化する意図がある。
  • シナジー
    当初はグループ内の旅行事業とシナジーを期待していたが、コロナ禍による需要激減で計画が頓挫。譲渡によりコールセンター事業自体は存続するが、昭文社側とのシナジーは消滅した。

5-6. レカム<3323>による大連傑作商務諮詢有限公司の子会社化

  • 取得の概要
    中国大連市の大連傑作商務諮詢を買収。日系企業向けデータエントリーサービスを展開していた同社がコールセンター事業を強化する一方、レカムはBPO事業拡大を狙う。
  • 狙い
    大連傑作はオフショアコールセンターを主力としており、人材とオペレーション拠点を手に入れることでレカムのグローバルBPO展開を加速する。
  • シナジー
    大連の人材を活用し、コスト競争力のあるコールセンターサービスを日系企業に提供することで、日中間BPO市場を開拓。

5-7. ユーグレナ<2931>によるクロレラサプライの子会社化

  • 取得の概要
    ユーグレナはクロレラの健康食品を通販するクロレラサプライを買収。同社は自社コールセンターを保有し、累計顧客数58万人にのぼる実績を有している。
  • 狙い
    ユーグレナはヘルスケア事業を強化中であり、クロレラサプライが持つコールセンターや既存顧客基盤を獲得して自社商品の販路拡大を図る。
  • シナジー
    自社プロダクトとクロレラ製品の相互販売を行い、さらにコールセンター機能を統合して顧客サポートやアップセルを促進する。

5-8. 岩井証券<8707>によるCSKHD傘下のコスモ証券の子会社化

  • 取得の概要
    岩井証券は非対面取引を強みにしていたが、コスモ証券を取り込むことで対面拠点を獲得。コスモ証券にはコールセンター取引もあり、相互補完が可能。
  • 狙い
    証券業における顧客チャネルの多様化が進む中、非対面と対面営業を組み合わせることで総合証券サービスを目指す。
  • シナジー
    岩井証券のインターネットやコールセンター機能と、コスモ証券の店舗網を連携させ、幅広い顧客層へのアプローチとサービスを提供できる。

5-9. モバイルクリエイト<3669>によるオプトエスピーの子会社化

  • 取得の概要
    モバイルクリエイトは通話録音システム開発のオプトエスピーを買収。コールセンターやテレマーケティング企業に向けた録音システムを強化する狙い。
  • シナジー
    通話録音や音声解析の技術は、コールセンターの品質向上や顧客満足度向上に直結する。モバイルクリエイトの販売チャネルを活用し、より幅広い顧客基盤に音声関連サービスを展開可能。

5-10. もしもしホットライン<4708>関連の複数事例

かつて「もしもしホットライン」の名称で知られ、現在はりらいあコミュニケーションズとして展開する同社の事例をいくつかまとめます。かつて同社はコールセンター事業を主軸に事業拡大を進め、複数の関連企業買収を行いました。

  1. もしもしホットラインによるエニーの子会社化
    • 店頭販売事業会社のエニーを買収し、コールセンターだけでなく訪問販売・対面サービスにも展開してクロスチャネル対応を目指した。
  2. 三井物産ヴィクシアの子会社化
    • インターネットを活用したマーケティングサービスとコールセンター受託事業を融合し、オンライン・オフラインの統合マーケティングを加速。
  3. ウィテラスの子会社化
    • テレマーケティングや人材派遣会社を傘下に取り込むことで、特に金融業界向けのサービス強化を図った。
  4. ソフトウエア開発のMCiを子会社化
    • コールセンターの効率化を支えるソフトウェア開発力を取り込み、付加価値の高いソリューション提供を目指す。

これら一連の買収は、コールセンター事業と周辺領域の垂直統合・水平拡大を意図し、単なる受託運営だけでなく総合的な顧客接点ソリューション企業へと成長するためのステップと言えます。


5-11. 岡三証券グループ<8609>による丸三証券<8613>非対面事業の取得

  • 取得の概要
    岡三証券が丸三証券のインターネット専用口座「マルサントレード」とコールセンター経由の非対面取引事業を吸収分割で取得。丸三証券は対面営業に特化。
  • シナジー
    岡三証券はすでにネット証券子会社を有しているが、更に口座数や非対面チャネルを拡大し、証券取引における多様な顧客を取り込みやすくなる。

5-12. 健康ホールディングス<2928>によるエムシーツーの子会社化

  • 取得の概要
    テレマーケティングやコールセンターサービスを手がけるエムシーツーを子会社化。アウトバウンド・インバウンドの両機能を強化し、主力の通信販売に活用。
  • 狙い
    健康食品や美容関連商品を扱う企業にとって、コールセンターは重要な顧客接点。自前のコールセンターを拡張することで収益基盤を強化。

5-13. 伊藤忠食品<2692>による家事代行サービスのカジタク子会社化

  • 取得の概要
    伊藤忠食品がカジタクを子会社化。カジタクは家事代行のコールセンターを設置し、外国人向けサービスなども視野に入れていた。
  • シナジー
    食品ギフトと家事代行サービスのセット販売など、新たなビジネスモデルを創造。コールセンターを顧客窓口として相互に関連したサービスを提供する狙い。

5-14. ヤマトHD<9064>によるヤマト・スタッフ・サプライの株式譲渡

  • 概要
    ヤマトHDは物流人材サービス子会社のヤマト・スタッフ・サプライ株式をワールドホールディングス傘下へ譲渡。コールセンター関連の人材サービスを主力とする会社への譲渡で事業再編。
  • 背景
    物流業界全体として効率化やコスト削減を進める中、シナジーの薄い人材事業を切り出し、コア事業に集中する意図がある。

5-15. ラストワンマイル<9252>によるプレミアムビジネスサポートほか複数子会社化

  • 複数の事例
    ラストワンマイルは、プレミアムウォーターホールディングス傘下のプレミアムビジネスサポートを子会社化したほか、インターネット無料マンション事業のSHC、同じくインターネット回線事業のベンダーなども続々と子会社化。
  • 狙い
    電気、ガス、宅配水、インターネットなど生活関連のインフラサービスをまとめてコールセンターから提案するワンストップサービスを目指す。そのために、コールセンター運営や管理業務を一括できる企業を積極的に取り込んでいる。
  • シナジー
    自社コールセンターを活用し、取得した企業の顧客やサービスをクロスセルすることで、より広範な領域での生活インフラサポートを展開し、顧客ロイヤルティを高める。

5-16. フェヴリナHD<3726>によるサイエンスボーテの株式交換

  • 取得の概要
    化粧品の通販企業サイエンスボーテを株式交換で子会社化。コールセンターによる既存顧客確保を得意とするフェヴリナHDと、新規顧客開拓が得意なサイエンスボーテを組み合わせる。
  • シナジー
    フェヴリナのコールセンター運営ノウハウとサイエンスボーテのネット広告戦略を統合し、顧客獲得からリピート促進まで一貫した仕組みづくりが可能となる。

5-17. フルキャストHD<4848>によるコールセンター関連子会社の譲渡・取得事例

  • フルキャストマーケティングの譲渡
    コールセンター業務や通信商材販売を手がける子会社フルキャストマーケティングを譲渡する一方、光通信グループのテレマーケティング会社を買収するなど、柔軟に事業再編を進めている。
  • 狙い
    フルキャストHDは製造・技術者派遣を主力とするなか、営業支援やコールセンター領域を最適化し、収益構造のバランスを取りたい意図がうかがえる。

5-18. ベインキャピタルによるベルシステム24<6183>買収

  • 概要
    コールセンター大手のベルシステム24は、米国プライベートエクイティファンドのベインキャピタルが買収。約1000億円規模のTOBを行い株式を取得。
  • 背景
    海外ファンドがコールセンター大手に出資することで、日本国内のアウトソーシング市場を再編し、グローバルでのサービス提供や経営効率化を進めたい考え。
  • シナジー
    豊富な資金力を背景にITシステムの刷新やグローバル展開を加速。日本のコールセンター事業をより高度化する狙い。

5-19. りらいあコミュニケーションズ<4708>による海外(フィリピン/ベトナム)企業の買収

  • 概要
    フィリピンやベトナムでコールセンターおよびバックオフィス事業を展開する企業を子会社化。英語や現地語のサービス提供でグローバル企業向けのCRMサービスを強化。
  • 狙い
    オフショアコールセンター拠点を確保し、コスト面と多言語対応で競争力を高める。アジアでのビジネス拡大を図る日本企業へのサポートを拡充。

5-20. フルキャストHD<4848>による光通信<9435>グループ2社の子会社化

  • 概要
    テレマーケティング事業者2社を51%ずつ取得。光通信グループとの連携により通信商材の販売やコールセンターの展開を強化。
  • シナジー
    光通信グループが持つ通信回線販売のノウハウとフルキャストHDの営業支援サービスを組み合わせることで、幅広い企業に対してコールセンターを活用した販売促進が可能。

5-21. スカラ<4845>と光通信<9435>グループ間のコールセンター関連事業取得・譲渡

  • 概要
    スカラが光通信子会社のコールセンター関連会社を買収する一方、別のタイミングでスカラが持つIP電話サービス子会社を光通信グループへ譲渡するなど、相互に事業の最適配置を図っている。
  • 狙い
    コールセンターとクラウドPBXの連携サービスをめぐって、一時的に資本提携を組んだものの、事業シナジーが思うように得られなかったため、最適なオーナーシップへ移すことでそれぞれの事業成長を図る。

5-22. ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス<3657>によるMSDホールディングス子会社化

  • 概要
    ソフト受託開発やコールセンター事業を行うMSDホールディングスを子会社化し、テスト・検証、モニタリング、カスタマーサポートなどを統合的に提供。
  • シナジー
    ゲームやITサービスの品質保証を手がけるポールトゥウィンと、MSDホールディングスのコールセンター・インフラ運用が結びつき、総合的なITアウトソーシングサービスを拡充。

5-23. パイプドビッツ<3831>によるアズベイスの子会社化

  • 概要
    コールセンター向けシステム「BizBase」を提供するアズベイスを株式交換で取得。パイプドビッツの情報資産プラットフォームと連携し、コールセンター運営を効率化するソリューションを拡充。
  • シナジー
    マーケティングオートメーションやCRM機能の強化などを通じ、顧客企業のデジタルマーケティング支援を包括的に行える。

5-24. ネクストジェン<3842>によるティアック<6803>のボイスロギング事業取得

  • 概要
    通話録音システム(ボイスロギング)事業を取得し、コンプライアンス対応や顧客サービス向上を求める企業向けのソリューションを強化。
  • シナジー
    通話録音機能を自社の通信プラットフォームに組み込むことで、コールセンター市場に幅広いサービスを提供できる。

5-25. ワールド・ロジ<9378>によるIMJビジネスコンサルティング追加取得

  • 概要
    インターネット通販の構築や売上分析、物流代行、コールセンター構築をワンストップで提供する「Sugrel(スグレル)」事業を強化するため、IMJビジネスコンサルティングの株式を追加取得。
  • シナジー
    ネット通販に必要なコールセンター運営や物流などバックエンドサービスを包括することで、顧客企業にフルフィルメントサービスを提供可能。

5-26. ピーアンドピー<2426>によるプレミア・スタッフの子会社化

  • 概要
    プレミア・スタッフはコールセンターや一般事務の人材派遣を主力。ピーアンドピーは買収によって規模拡大と人材サービス領域の補完を図る。
  • シナジー
    コールセンター派遣に強い会社を取得することで、採用や教育ノウハウを共有し、大手クライアントへの対応力向上を期待。

5-27. ピアラ<7044>によるPIALab.の譲渡

  • 概要
    コールセンター事業を手がけるPIALab.を不動産会社GREENINEに譲渡。赤字が続き、債務超過状態だったため、事業継続よりも撤退を選択。
  • シナジー(背景)
    ピアラはデジタルマーケティング支援を強みとし、コールセンター機能を補完していたが、不採算が続き本業とのシナジーが十分に得られなかった。

5-28. ファーマフーズ<2929>によるファーマフーズコミュニケーション東海の吸収合併

  • 概要
    コールセンター業務を行う子会社同士の統合で、管理体制を強化し効率化を図る。
  • シナジー
    通信販売事業にとって、コールセンターは生命線。分散していたコールセンター機能を一本化し、コスト削減や品質向上を目指す。

5-29. ビジネスブレイン太田昭和<9658>によるトゥインクルの子会社化

  • 概要
    ソフト開発やITインフラサポート、コールセンター業務などを行うトゥインクルを約30億円で買収。システム構築・運用とコールセンター業務を融合し、サービス体制を強化。
  • シナジー
    会計・コンサルが強みのビジネスブレイン太田昭和がIT領域まで手を広げ、顧客企業のあらゆるバックオフィスを包括的に支援できる体制が整う。

5-30. セコム<9735>によるベネッセHD<9783>傘下TMJの子会社化

  • 概要
    コールセンター業界で大手のTMJをセコムが買収。教育系を中心としたベネッセのアセットを活かした高度なコールセンター運営が強みだったが、ベネッセグループの再編により譲渡。
  • 狙い
    セコムはセキュリティから生活支援サービスまで幅広く展開しており、TMJの運営力を生かして多角的な顧客サポート体制を構築する狙いがある。

5-31. ジャパンベストレスキューシステム<2453>によるアクトコールなどのM&A

  • 概要
    日常生活のトラブル駆け付けサービスを展開する同社は、似たビジネスモデルを持つアクトコールおよび関連会社を買収。コールセンター機能を統合し、会員事業拡大を図る。
  • シナジー
    顧客基盤を共有し、住宅の水回りや鍵トラブルなどへ24時間対応するコールセンター体制を確立。会員向けサービスの付加価値をさらに高める。

5-32. ティーガイア<3738>によるPCテクノロジーの完全子会社化

  • 概要
    コールセンターサービスを提供するPCテクノロジーを追加出資により完全子会社化。ICT機器調達から運用支援までの一連のサービスにコールセンターを加えることで、顧客企業の安心感を高める。

5-33. セイノーHD<9076>による日祐の子会社化

  • 概要
    メール便の配布や印刷、コールセンターまで一貫して提供する日祐を買収。首都圏での配布網を強化し、物流ネットワークとコールセンターによる付帯サービスを組み合わせる。

5-34. ディア・ライフ<3245>によるNFCHD<7169>傘下新会社の子会社化

  • 概要
    コールセンターによる保険契約取次など人材派遣事業を手掛ける会社を買収し、不動産業向け派遣に加えて保険窓口派遣まで業務領域を拡大。

5-35. スリープログループ<2375>による関連事業の取得・譲渡

  • 概要
    多数のコールセンター関連企業を買収・譲渡しながら、ITサポートやBPO、テレマーケティングを強化。24時間365日マルチリンガル対応のコールセンターが特徴。
  • シナジー
    システム開発や技術者派遣と組み合わせたサービスを提供。海外赴任サポートや旅行支援にも進出し、コールセンターの活用範囲を拡大。

5-36. クレオ<9698>によるアダムスコミュニケーション子会社化

  • 概要
    電話調査を得意とするマーケティングリサーチ企業を買収し、コールセンター事業のラインナップを拡充。既存顧客への追加提案を強化。

5-37. システムズ・デザイン<3766>によるフォー(IDカード関連)の子会社化

  • 概要
    IDカード受託発行やシステム販売を行うフォーを買収。システムズ・デザインのコールセンターやバックオフィス代行サービスと組み合わせ、新たなBPOサービス拡大。

5-38. エフ・コード<9211>によるメディアリンク<6659>からの「sinclo」事業取得

  • 概要
    SaaS型Webチャットシステムを取得し、コールセンターのデジタルチャネル強化を図る。AIチャットボットなどとの連携で顧客体験の向上を狙う。

5-39. インパクトHD<6067>によるジェイエムエス・ユナイテッド子会社化

  • 概要
    セガサミーHD傘下でコールセンターやバックオフィスを受託していた企業を買収。インパクトHDの人材サービスとの親和性を高め、綜合アウトソーシングを実現。

5-40. インバウンドテック<7031>によるシー・ワイ・サポート子会社化

  • 概要
    岩手県花巻市のコールセンターを買収し、新宿・鹿児島に続く国内4拠点体制を整備。地方拠点での人材確保とコスト最適化を狙う。

5-41. イーピーエス<4282>によるメディカルラインの買収

  • 概要
    医療・医薬業界向けコールセンターを運営するメディカルラインを買収し、製薬企業や医療機関へのサポートサービスを充実。

5-42. キャリアリンク<6070>によるジャパン・ビジネス・サービスの子会社化

  • 概要
    金融機関向けコールセンター・事務代行サービスに強みを持つ会社を取得し、金融分野のBPO事業を拡大。

5-43. ジェーピーエヌ債権回収<8774>によるコスモサポート買収

  • 概要
    保証会社やクレジット会社のコールセンターに債権管理回収分野の人材を派遣するコスモサポートを買収し、債権回収業務とのシナジーを模索。

5-44. アクトコール<6064>によるジーエルシーのMBO譲渡

  • 概要
    AI関連のコールセンター運営最適化を目的に立ち上げた子会社を、副社長によるMBOで譲渡。過年度決算訂正などで新規事業の整理が必要となった背景。

5-45. ジェイフロンティア<2934>によるAIGATEキャリア子会社化

  • 概要
    医療人材紹介やコールセンター事業を行うAIGATEキャリアを買収し、医療業界向けの人材サービス領域を拡充。

5-46. WOWOW<4839>によるフロストインターナショナルコーポレーション子会社化

  • 概要
    テレマーケティングを中心としたコールセンター業務を得意とするフロストを買収し、通販・EC分野への事業拡張を試みる。

5-47. PKSHA Technology<3993>によるアーニーMLG子会社化

  • 概要
    音声認識システム開発を行うアーニーMLGを追加出資で支配権取得。コールセンター向けAI議事録作成など高度な音声ソリューションに注力。

5-48. AKIBAホールディングス<6840>によるiconic storage子会社化

  • 概要
    システム開発やコールセンター運営を手がけるiconicを買収。メモリ製品などの本業から多角化を進めるAKIBAHDが、コールセンター事業を新たな収益源と位置づけて拡大。

5-49. アウトソーシング<2427>のMBOによる非公開化

  • 概要
    製造系・技術系派遣大手のアウトソーシングが米ベインキャピタルと組んでTOBを実施し、株式を非公開化予定。急拡大するグループのガバナンスを見直すための決断。
  • コールセンター領域との関連
    アウトソーシングは製造業以外にもコールセンターや公共サービスなど多角的なアウトソーシングを展開しており、M&Aを通じて規模を拡大してきた。同社の事業再編がコールセンター市場にも影響を与える可能性がある。

5-50. GFA<8783>によるネクスト・セキュリティのコールセンター事業譲渡

  • 概要
    セキュリティソフト販売後の問い合わせ対応コールセンター業務を、MSDホールディングス側に譲渡。想定ほど顧客数が伸びず赤字が続いたため撤退。

5-51. Casa<7196>によるプロフィットセンター子会社化

  • 概要
    営業コールセンターを運営するプロフィットセンターを買収し、不動産賃貸管理向けサービスにコールセンターのノウハウを取り込む。

5-52. Jトラスト<8508>による西京銀行傘下の西京カード子会社化

  • 概要
    エステ・医療機関向けクレジットカード事業を営む西京カードを買収。自社コールセンターでの審査体制を整備し、金融関連事業を強化。

5-53. アウトソーシング<2427>によるエコシティグループ子会社化

  • 概要
    上下水道料金徴収事務やコールセンター運営を地方自治体などから受託するエコシティグループを買収。景気に左右されにくい公共系アウトソーシングを強化。

5-54. fonfun<2323>によるselfreeの子会社化

  • 概要
    SaaS型のクラウド電話システム「CallConnect」を運営するselfreeを買収。自社のSMS配信サービスと組み合わせ、コールセンターのデジタル化を加速。

6. M&A後の統合プロセスと経営上の留意点

6-1. コールセンター運営におけるPMIの特徴

コールセンター事業はオペレーターやSV、システム管理部門など人材に大きく依存します。M&A後の統合に際しては、人的なケアシステム統合の両面に注意が必要です。

  • 人的統合: 給与体系やシフト管理、教育制度などの調整を迅速に行い、オペレーター離職を防ぐ。
  • システム統合: CTI(Computer Telephony Integration)システムやCRM、ACD(自動着信分配装置)など、コールセンターの生命線となるシステムを共有・連動させる。

6-2. 人材マネジメントと教育体制の一体化

コールセンター業界では、オペレーター教育の質がサービス品質を大きく左右します。M&Aによって組織が拡大すると、教育方針や研修プログラムをどう標準化するかが課題となります。また、新卒・中途の採用基盤を共有する際には、ブランドイメージの統一や、キャリアパスの提示が不可欠です。

6-3. 顧客情報管理・システム統合の注意点

コールセンター業務では、顧客データや通話ログなど個人情報を大量に扱います。M&A後のシステム統合時にデータ移行やセキュリティ強化、プライバシーマーク等の認証取得などを円滑に行わないと、顧客満足度を下げたり、コンプライアンスリスクを高めたりする恐れがあります。


7. コールセンターM&Aの今後の展望

7-1. アウトソーシングとBPOのさらなる拡大

人手不足やコスト削減ニーズが高まる中、企業がコールセンターを自社で内製化するより、BPO事業者に委託する動きは今後も継続すると予想されます。そのため、コールセンター受託企業同士の統合や、大手コングロマリットによる買収も増えるでしょう。

7-2. AI・RPA導入によるオペレーション変革

チャットボットや音声認識システム、RPAなどのテクノロジーが急速に進化し、コールセンターはかつての「単なる電話対応部門」から「データドリブンな顧客接点」へと変化しつつあります。AI技術やクラウドPBXを持つIT企業とのM&Aがさらに活発化する可能性が高いと考えられます。

7-3. 地方創生とコールセンター誘致

テレワークや地方創生の文脈で、コールセンター誘致は地方自治体にとっても雇用創出策のひとつです。M&Aによる拠点拡大や地方への移転が進むことで、地域社会にも経済効果をもたらします。

7-4. グローバル化・多言語化への対応強化

海外旅行需要の回復や在留外国人の増加などにより、多言語対応コールセンターのニーズが高まる見込みです。東南アジアや欧州のオフショア拠点を有するコールセンター企業への買収や合弁を通じて、グローバル規模でのサポート体制を構築する動きも注目されます。


8. まとめ

コールセンター業界は、顧客接点の要として重要度を増す一方で、人材不足やコスト面での課題、技術革新への対応など、多くの変化に直面しています。このような環境下で企業が成長戦略を描く上で、M&Aは極めて有効な手段と捉えられています。

  • 事業多角化・垂直統合: コールセンターの取得によって、販売からアフターサポートまでを一気通貫で提供できるようになる。
  • AI・デジタル技術の取り込み: 専門的なAI技術やソフトウェア開発力を獲得し、自社のサービスを高付加価値化。
  • グローバル拠点の確保: オフショアコールセンターを手中に収めることで、コスト削減と多言語対応を同時に実現。
  • PMIの巧拙が成否を分ける: システムや人材の統合をいかにスムーズに行うかが、M&A成功の鍵。

本稿で挙げた事例は氷山の一角ではありますが、コールセンター業界でM&Aが果たす役割の大きさや多様な狙いを垣間見ることができます。今後も人口動態の変化やテクノロジーの進化に伴い、コールセンターの役割はさらに変革・高度化していくでしょう。企業が競争力を保ち、顧客満足度を高め続けるために、M&Aは引き続き注目される戦略の一つとなるはずです。

コールセンターは「人と組織」「システムと運用」が高度に融合した事業領域であるため、M&Aによる経営統合は難易度が高い側面もあります。しかし、適切な企業選定とPMIの実行に成功すれば、企業価値の向上と顧客体験の最適化が実現可能です。これからも、コールセンターM&Aは国内外で多様な形態をとりながら進展していくことでしょう。