目次
総合建設業の市場環境
総合建設業の市場環境についてのまとめ
建設業は、2023年以降から2024年にかけて様々な課題に直面しています。以下に主要な点をまとめます。
– 資材価格の変動: 建設業が利用する建材や資材の多くは海外から輸入されています。近年はウクライナ情勢の悪化や世界的な円安が影響して、資材の高騰が深刻です。工事資材の高騰は、工事費用の増加につながるため、建設業では今後も激しい価格競争に悩まされる可能性があります。
– 人材不足: 少子高齢化による後継者不足や新型コロナウイルス禍による倒産件数の増加が人材不足を深刻化させています。特に大規模プロジェクトが旺盛な地域では、施工業者や職人の確保が難しくなっています。
– 労働環境の改善: 2024年4月から、労働時間の上限規制や時間外労働時間に罰則付きで上限が設けられます。これにより、従業員の働ける時間が減るため、従来どおり事業を回すことが難しくなる可能性があります。労働環境の改善が急務です。
– 市場規模の変動: コロナ禍の影響が薄れるにつれて市場が回復し、さらに拡大していくことが予測されます。しかし、人口減少に伴う住宅需要の減少や国際競争の激化を考えると、長期的には市場が縮小していく可能性があります。
– 新たな課題の対応: 建設業界は新たな課題に対応し続ける必要があります。担い手3法の改正や労働環境の改善、DX化などの対策が必要です。
これらの課題を乗り越えるために、建設業界は自社だけの強みの発見やDX化、労働環境の改善などさまざまなアプローチを組み合わせる必要があります。
総合建設業のM&Aの背景と動向
建設業界におけるM&Aの背景と動向
近年、建設業界ではM&Aが活発に行われています。以下のポイントがその背景と動向を示しています。
– 業界の再編: 建設業は従来、M&Aが行われにくいとされていましたが、現在では活発に行われています。特に大手企業や異業種によるM&Aが増加しています。これは、商業圏の拡大や人材の確保を目的として行われています。
– 事業の多角化: 不動産会社などが建設業を傘下に収めることで、外注していた工事を内製化し、時間とコストを削減することが期待されています。これにより、事業の多角化が進んでいます。
– 地域での経営基盤の強化: 地域での経営基盤を強固にするために、地元の競合企業を買収または傘下に置くことが行われています。これにより、受注の安定化が図られます。
– 新規取引先の獲得: M&Aにより、譲渡企業の取引先も引き継ぐことが可能で、新規取引先の獲得にかかる時間を短縮できます。例えば、公共工事をメインに行っていた企業が民間に強い企業と合併した場合、公共工事だけでなく民間工事も安定して獲得することが可能です。
– 技術力や資本力を強化: 中小企業にとっては、M&Aを通じて技術力や資本力を強化し、市場での競争力を高める絶好の機会となっています。
– リスクの伴い: M&Aにはリスクも伴います。例えば、公共工事の入札参加機会が減少するといったデメリットもありますが、M&Aの活用によって自社にはない強みを獲得することで、幅広いコネクションを築くことができ、受注の安定化を図ることが可能です。
これらの動向により、建設業界におけるM&Aは企業間の競争が激化し、効率化や規模拡大を目指す動きが顕著です。
総合建設業のM&A事例
総合建設業のM&A事例
1. 前田建設工業と前田道路のM&A
– 目的: グループ内の一体感向上と技術力や顧客基盤などの経営資源の共有。
– 手法: TOB(公開買付け)。
– 結果: インフラ運営事業の拡大により、安定した高収益基盤確立が期待される。
2. 長谷工コーポレーションと総合地所のM&A
– 目的: サービスのさらなる充実。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 560千戸を超える施工実績と総合地所の経験・ノウハウが融合し、顧客ニーズに合った設計・工法の提案が可能となった。
3. 戸田建設と佐藤工業のM&A
– 目的: 東北エリアの強固な事業基盤の確立と市場シェアの拡大。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 第三者への事業承継を目指した売り手企業にとって新たな事業領域における収益基盤の確立が期待される。
4. コニシと山昇建設のM&A
– 目的: 建設事業の強化。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: コニシが山昇建設の技術力を活用し、より顧客にとって価値の高い工事を提供できるようになった。
5. 不二サッシと日本防水工業のM&A
– 目的: 外装すべてを網羅するトータルリニューアル工事の施工体制の確立。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 両社の技術力を組み合わせて、より顧客にとって価値の高い工事を提供できるようになった。
6. アサノ大成基礎エンジニアリングと三協建設のM&A
– 目的: 企業価値の向上と技術・リソースの活用。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: アサノ大成基礎エンジニアリングが三協建設のノウハウを活用し、土木事業の強化が期待される。
7. サンユー建設と行方建設のM&A
– 目的: グループ全体の競争力・収益力を強化。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 両社の得意分野・役割が異なるが、技術力や経営資本を相互活用し、大きなシナジー効果が見込まれる。
8. ナガワと鳥海建工のM&A
– 目的: ユニットハウスの製造や販売、レンタル事業の強化。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: ナガワが鳥海建工の工事請負事業を活用し、ユニットハウスの製造や販売、レンタル事業を強化する。
9. サイタホールディングスと朝倉生コンクリートのM&A
– 目的: 経営および事業の強化と業績拡大。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: サイタホールディングスが朝倉生コンクリートの生コンクリートの製造販売事業を活用し、経営資源を最適化する。
10. ナカノフドー建設とトライネットホールディングスのM&A
– 目的: ノウハウ・技術・リソースの活用と土木事業の強化。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: ナカノフドー建設がトライネットホールディングスのノウハウを活用し、土木事業の強化が期待される。
11. 矢作建設工業と北和建設のM&A
– 目的: 事業エリアの拡大と競争力の強化。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 矢作建設工業が北和建設のマンション工事やホテル・福祉施設の建築工事を活用し、事業エリアの拡大が期待される。
12. 清水建設と日本道路のM&A
– 目的: 競争力の強化と工事受注件数の拡大。
– 手法: 株式譲渡。
– 結果: 清水建設が日本道路の技術・拠点網を活用し、受注拡大と両社の顧客網の活用が期待される。
13. インフロニアHDと東洋建設のM&A
– 目的: 建築事業・土木事業の拡大。
– 手法: TOB(公開買付け)。
– 結果: インフロニアHDが東洋建設の海洋土木工事や不動産事業を活用し、事業拡大が期待される。
総合建設業の事業が高値で売却できる可能性
総合建設業の事業が高値で売却できる可能性をまとめると、以下のポイントが重要です。
– 有資格者や優れた技能者を豊富に確保する人材不足が深刻な建設業界において、有資格者や優れた技能者を確保している企業は高く評価されます。特に、平均年齢が低い企業は買い手から高く評価されやすいです。
– 競争優位性や希少性が高い強みを確立する安定した売上をもたらす顧客基盤や価値が高い設備、許認可など、競争優位性や希少性の高い強みがある企業は買い手からの評価が高まります。
– 財務体質やコンプライアンス面が健全財務やコンプライアンス面に問題がない企業は、買い手からの評価が高まります。特に、粉飾決算の有無や環境汚染などの問題を解決しておくことが重要です。
– 市場や業績が成長しているタイミングで売却する市場や業績が過去数年で大きく成長しているタイミングを選ぶことで、建設会社を相場よりも高い価格で売却しやすくなります。
– 他社にはない技術や特許を所有している特許工法や特殊な技術を有している企業は、他社が追随できない独占的な仕事を継続できる可能性があり、買い手には大きな魅力があります。
– 取引先や下請け先と良好な関係を築いている取引先や下請け企業との信頼関係が厚い企業は、信用度が高く評価される傾向にあります。
– 入札や受注実績が豊富である公共事業の入札資格を有している企業や、入札のA・B・Cランクの実績がある企業は買収後も社名を残す必要があります。
これらのポイントを踏まえると、総合建設業の事業が高値で売却できる可能性は高まります。
総合建設業の企業が会社を譲渡するメリット
総合建設業の企業が会社を譲渡する際のメリットは以下の通りです:
– スピーディーな進め方:株式譲渡は交渉が順調に進めば1ヶ月程度で終わることがあり、スピーディーに進めることができます。
– 事業や設備の包括的承継:株式譲渡では、事業や設備、従業員などを買い手がまとめて引き継ぐことができます。これにより、スケールメリットの享受や専門的なノウハウを持つ人材の取り込み、新たな事業の獲得が可能です。
– 後継者問題の解決:M&Aにより、買い手が後継者となる事業承継方法が注目されており、国や自治体もこれを推奨しています。
– 従業員の雇用維持:会社譲渡であれば、従業員の雇用契約も買い手に引き継がれます。従業員の雇用が確保できるため、廃業のリスクが軽減されます。
– 譲渡益の獲得:会社譲渡は株式の取引を伴う手法であり、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。これにより、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられることができます。
– 経営統合の柔軟性:株式譲渡では、買い手と売り手の合意次第で株式比率を自由に調整できるため、経営統合の方法は多種多様であり、意思決定のスピードや売り手の権限の範囲が変わります。
これらのメリットを活用することで、総合建設業の企業が会社を譲渡する際に多くの利点を享受することができます。
総合建設業の事業と相性がよい事業
総合建設業の事業と相性がよい事業は以下の通りです。
– 建築工事:総合建設業者は、建築工事を請け負うことが多く、設計から施工までの一貫したサービスを提供します。具体的には、設計、施工、工事管理などが含まれます。
– 土木工事:土木工事も総合建設業者が請け負うことがあり、道路やトンネル、ダムなどの工事が含まれます。土木工事のマネジメントや品質管理が重要です。
– インフラ整備:インフラ整備も総合建設業者の範囲に含まれ、水道・下水道などの社会基盤整備が行われます。
– 住宅リフォーム:住宅リフォームや改装も総合建設業者が手掛けることがあり、リフォームプランの提案や品質の確保が重要です。
– 外構工事:外構工事も行われ、庭のデザインや造園、門やフェンスの設置などが含まれます。
– 解体工事:解体工事も総合建設業者が請け負い、安全かつ効率的な解体作業が行われます。
これらの事業は、総合建設業者が一貫して請け負うことができ、工事全体のマネジメントが可能です。
総合建設業の企業がM&Aを依頼するならM&A Doがおすすめな理由
M&A Doは、総合建設業の企業様がM&Aを依頼する際におすすめのサービスです。その理由は、譲渡企業様から手数料を一切いただかないという点にあります。これにより、企業様はコストを気にせずにM&Aを進めることができます。また、豊富な成約実績を誇っており、これまで多くの企業様にご満足いただいております。さらに、総合建設業の業界にも深い知見を保有しているため、業界特有のニーズや課題に対しても的確なサポートを提供することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。