目次
デイサービス業の市場環境
デイサービス業の市場環境は、以下の点が特に注目されています。
– 事業所数の減少:
– 2024年4月時点で全国に4万3018事業所があり、前年同月から361事業所減り、2年連続の減少となっています。
– 地域密着型通所介護が8年連続で減少しており、特に2016年と比べると22.4%(5331事業所)も少なくなっています。
– 業態別の変化:
– 通常規模・大規模の事業所数は一貫して増えているが、伸び幅が小さく、デイサービス全体の事業所数がやや大きく減る結果となっています。
– 費用額の増加:
– 2023年度のデイサービスの費用額は1兆7329億円で、前年度から2.6%(445億円)増加し、初めて1.7兆円を超えました。
– 介護保険報酬改定の影響:
– 2024年度の介護保険報酬改定では、地域包括ケアシステムの深化・推進や自立支援・重度化防止に向けた対応が重点項目として設置されています。
– 基本報酬部分ではほとんどの業態で報酬がややアップの傾向がありますが、経営状況に配慮しつつ実施されています。
– 人材不足の問題:
– 介護人材の不足が依然として深刻な問題であり、最新のデータでは6割以上の事業所が人手不足を感じています。
– 離職率に関しては改善の傾向がありますが、これにより経験者の採用がより困難な状況になっている。
– 戦略と取り組み:
– 介護保険制度の動向や時流適応が必要であり、訪問看護事業の強化や高齢者向け住宅の転換、介護事業と障がい福祉の統合などが推奨されています。
– 稼働率の向上、職員の定着率の向上、事業推進力を上げることが重要視されています。
デイサービス業のM&Aの背景と動向
デイサービス業のM&Aの背景と動向を以下にまとめます。
### 背景
1. 高齢者の増加による市場拡大
– デイサービス業界は、高齢者の増加に伴い、安定的に拡大しています。厚生労働省の統計によると、2022年の介護サービス業界全体の市場規模は10兆9080億円で、前年の10兆7494億円より増加しています。
2. 人材不足の課題
– 介護業界では、地域を問わず、人材不足が深刻化しています。M&Aを活用することで、人材確保を目的とする企業が増えています。
### 動向
1. 新規参入企業の増加
– 介護サービスを提供する従業員や有資格者を確保できるため、新規参入企業がM&Aを活用しています。介護業界は今後成長が見込まれるため、新規参入を狙う異業種企業も多い。
2. M&Aのメリット
– 施設などの拠点費用・労力を軽減できる
– M&Aによって既存の施設や土地を引き継ぐことで、施設建設や初期費用、開業までの手間や時間を大幅に削減できます。
– 従業員と利用者をそのまま引き継げる
– M&Aにより、従業員や利用者をそのまま引き継げることができます。これにより、事業の運営がスムーズになります。
– 後継者問題の解決
– M&Aにより、後継者問題が解決され、事業の継続が保証されます。
3. M&A事例
– LITALICOとnCS
– 2023年1月、LITALICOがnCSを買収し、完全子会社としました。LITALICOは介護分野でもサービスを展開しており、このM&Aはその事業展開を加速させるためでした。
– AHCグループとCONFEL・RAISE
– 2022年8月、AHCグループがCONFELおよびRAISEの発行済全株式を取得し、両社を完全子会社化しました。AHCグループは障害児向けにデイサービス事業を展開しており、このM&Aにより、幅広いサービスの創出を図りました。
– アルトがサンライフケアのデイサービス事業を譲受
– 2022年1月、アルトがサンライフケアのデイサービス事業を譲受しました。アルトは地域密着型施設の運営を強化し、サービス品質を高める狙いがありました。
### 今後の展望
1. 人材確保のためのM&A
– M&Aを活用したデイサービス業界への参入や事業規模の拡大は、人材不足の解決策として非常に有用な手段となり得るでしょう。介護業界に限らず、人材のスキルの高さと数の多さは企業価値にもつながるため、市場での優位性確保やシェア拡大のためにも人材の確保は必須の要素です。
2. 介護報酬の改定に伴うリスク
– 介護報酬がマイナス改定された場合、社会福祉法人が得られる利益は低下するため、M&Aが増加しています。経営者が事業を手離さざるを得ない状況に陥るケースもあります。
これらの点をまとめると、デイサービス業のM&Aは、高齢者の増加による市場拡大や人材不足の課題を解決するための手段として活発に行われています。
デイサービス業のM&A事例
デイサービス業のM&A事例を以下にまとめます。
### LITALICOとnCS
LITALICOは、2023年1月にnCSを買収し、完全子会社としました。
LITALICOは東証プライム上場企業で、障がい者などを対象とする就労支援や学びの場などを提供する支援サービスを行っています。nCSはデイサービスを営む会社で、LITALICOは近年介護分野でもサービスを展開しており、その事業展開を加速する目的でM&Aを実施しました。
### AHCグループとCONFEL・RAISE
AHCグループは、2022年8月にCONFELおよびRAISEの発行済全株式を取得し、両社を完全子会社化しました。
AHCグループは障害児向けにデイサービス事業を展開しており、このM&Aにより、福祉事業に特化した幅広いサービスの創出を図りました。
### ソラストと日本エルダリーケアサービス
ソラストは、2020年8月に日本エルダリーケアサービスの株式を取得し、子会社化したと発表しました。
ソラストは介護や医療領域で事業を展開しており、このM&Aは日本エルダリーケアサービスと連携することで、身体機能の維持向上を重視したサービスをスピーディかつ広範囲に拡充させていくことが狙いです。
### アイドマHDとGotoschool
アイドマHDは、2022年12月にGotoschoolが実施する第三者割当増資の引き受けを通じた資本・業務の両面における提携を決定しました。
アイドマHDの狙いは、自社の就労支援領域とGotoschoolの放課後等デイサービス、児童発達支援施設運営領域で培ってきたノウハウを連携させることで、働き手の可能性を高め、企業にとっての人材不足解消策となるソリューションの提供を図ることです。
### LITALICOとウェルモ
LITALICOは、2023年4月にウェルモが提供している児童発達支援・放課後等デイサービス「unico(ユニコ)」を買収しました。
LITALICOとunicoが持つ知見やノウハウを融合させることで、利用者の多様なニーズに答えられる高品質なサービスの提供と、エリアの拡大が狙いです。
### アルトがサンライフケアのデイサービス事業を譲受
アルトは、2022年1月にサンライフケアのデイサービス事業を譲受しました。
アルトはデイサービスと居宅支援を中心とする事業を展開しており、このM&Aにより事業規模が拡大し、従業員のキャリアアップにもつながります。
### ポラリスがMACHIKOのデイサービス事業を譲受
ポラリスは、2021年8月にMACHIKOのデイサービス事業を譲受しました。
ポラリスはリハビリ特化型の短時間デイサービスを全国展開しており、このM&Aにより事業拡大を図るとともに、自立支援介護の普及を進めていくとしています。
### シダーによるデイサービス事業の譲渡
シダーは、2021年5月にデイサービス事業所「あおぞらの里 建部デイサービスセンター」を第三者へ譲渡しました。
シダーのM&Aは、滋賀県内においてデイサービス事業を新たに計画している企業に譲渡され、シダーの事業展開および収益性改善の観点から行われました。
### ユニマット リタイアメント・コミュニティがパナソニック エイジフリーのデイサービス事業を譲受
ユニマットリタイアメント・コミュニティは、2021年4月にパナソニックエイジフリーが運営するデイサービス・ショートステイ施設6か所を譲受しました。
ユニマットリタイアメント・コミュニティは包括的な介護サービス事業を展開しており、このM&Aにより介護サービスの拡充および地域包括ケアの向上が狙いです。
### 元気な介護による幸房の子会社化
元気な介護は、2021年4月に幸房の全株式を取得して子会社化しました。
元気な介護はデイサービスや訪問介護サービスなどの総合介護事業を展開しており、このM&Aにより幸房を完全子会社化し、広島県の2事業所を加えることで介護サービスの拡充を図りました。
### リビングプラットフォームとシニアケアのM&A
リビングプラットフォームケアは、2023年12月にシニアケアより高齢者グループホーム事業を譲り受けました。
リビングプラットフォームケアは阪神南地域におけるシェア拡大を図る基盤とし、ドミナント戦略を進めて地域No.1企業を目指します。
### ケア21とトチギ介護サービスのM&A
ケア21は、2023年10月にトチギ介護サービスのデイサービス事業を譲り受けました。
ケア21は近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者のニーズに応えることが可能となり、サービスを充実させる狙いがあります。
### 学研ココファンとグランユニライフケアサービスのM&A
グランユニライフケアサービスは、2023年9月に学研ココファンから株式を譲り受けました。
グランユニライフケアサービスは高齢者住宅における介護サービスを中心とした運営業務を行い、親会社であるジェイ・エス・ビーとは業務提携契約を締結し、中長期的な協力関係を築きました。
### ケア21とエム・ケー企画のM&A
ケア21は、2023年8月にエム・ケー企画のデイサービス事業を譲り受けました。
ケア21は訪問介護・居宅介護支援・グループホーム・介護付有料老人ホームなどを首都圏・近畿圏・名古屋・仙台・広島・福岡で展開しており、このM&Aにより近隣事業所間の連携が図れ、多くの利用者ニーズに応えることが可能となりました。
### エフビー介護サービスとスマートケアタウンのM&A
スマートケアタウンは、2023年7月にエフビー介護サービスから株式を譲り受けました。
スマートケアタウンは長野県岡谷市において小規模多機能型居宅介護及び通所介護の事業所を運営しており、このM&Aにより介護サービスの充実と業務の効率化を図り、収益性の向上を目指しました。
### 夢眠ホームとシダーのM&A
シダーは、2023年6月に夢眠ホームのデイサービス事業「ラ・ナシカやまなし」を譲り受けました。
シダーは全国にデイサービスセンター、介護付有料老人ホームなどを展開しており、このM&Aによりリハビリテーション特化型のデイサービスを強化しました。
デイサービス業の事業が高値で売却できる可能性
デイサービス業の事業が高値で売却される可能性は、以下の条件に応じて高くなることがあります。
– 営業利益の高さ: 年間営業利益が高く、特に1.8倍から3.5倍程度の価格で売却されることが多いです。例えば、年間営業利益が500万円の場合、900万円から1750万円が相場です。
– 施設の特性: オリジナルのトレーニングを行う施設や、できるだけ少ない器具でリハビリやトレーニングを行う施設は、相場よりも高い価格で売却されることが多いです。
– 地域密着型: 地域密着型のデイサービスは、利用者からの満足度が高く、その口コミによって集客が行われるため、相場よりも高い価格で売却されることがあります。
– 競合施設の少なさ: 隣接地域に競合するデイサービスがない施設は、遠方の利用者も多く、相場よりも高い価格で売却される可能性があります。
– 利用者の平均介護度の高さ: 利用者の平均介護度が高く、安定して利用者の確保ができる施設は、より高い評価がつく傾向があります。
これらの条件に応じて、デイサービス事業が高値で売却される可能性が高まります。
デイサービス業の企業が会社を譲渡するメリット
デイサービス業の企業が会社を譲渡するメリットは以下の通りです。
– 売却益の獲得と: 企業がデイサービス事業を第三者に譲渡することで、売却益を得ることができます。これにより、売却益は別の事業の拡大や新たな事業展開のための資金として利用できます。また、引退後の資産として確保することで、余裕を持った生活を営むことができます。
– 事業のシナジーと立地の活用と: デイサービス事業を第三者に譲渡する際には、事業のシナジーや立地を考慮して譲渡先を選定します。譲渡先が適切であれば、事業の運営が円滑に行えるでしょう。
– 従業員の確保とキャリアアップと: デイサービス事業を売却することで、従業員の雇用が確保され、キャリアアップの機会が生まれる可能性があります。特に、大規模な事業所に譲渡される場合、従業員の働き方の幅が広がり、キャリアアップにつながる可能性があります。
– 後継者問題の解決と: デイサービス事業を売却することで、後継者問題が解決されます。特に、経営者本人が引退する際に、売却益を確保することで、創業者利益を獲得し、借入金の個人保証契約を解消することができます。
– 地域における地盤確保と: デイサービス事業を売却することで、地域における地盤が確保されます。既存の施設を買収すれば、地域における信頼と知名度を確保し、老人ホームなどの集客がしやすくなります。
– 新規エリアへの事業進出の効率化と: デイサービス事業を買収することで、新規エリアへの事業進出が効率化されます。既存の施設を買収すれば、サービス利用者も引き継ぐことができ、エリア拡大が短期間で実現できます。
– 消耗品の大量購入によるコスト削減と: デイサービス事業を拡大することで、消耗品を大量購入できるため、単価を下げることでコスト削減につながります。
これらのメリットを活用することで、デイサービス業の企業が会社を譲渡する際に多くの利点を得ることができます。
デイサービス業の事業と相性がよい事業
デイサービス業の事業と相性がよい事業を以下にまとめます。
### デイサービス業と相性がよい事業
デイサービス業は、介護保険サービスの一つで、高齢者や身体障害者が日帰りで介護施設に通い、生活機能の維持や機能訓練を受けるサービスです。以下の事業がデイサービス業と相性がよいとされています。
#### リハビリ機器・用品の販売
デイサービスでは、リハビリ特化型デイサービスを含む多くの施設で機能訓練が行われています。リハビリ機器や用品の販売は、デイサービス業と密接に関連しており、介護職員が必要とするリハビリ用具を提供することができます。リハビリ機器・用品の販売は、デイサービス業の需要に応じた商品を提供することが重要です。
#### 介護用具の製造
介護用具の製造は、デイサービス業の需要に応じて製品を開発することができます。例えば、入浴や排泄介助に必要な介護用具を製造することで、デイサービス施設の業務をサポートできます。介護用具の製造は、デイサービス施設の具体的なニーズに応じた製品を提供することが重要です。
#### 健康食品の販売
デイサービス施設では、健康管理が重要な部分です。健康食品の販売は、介護職員が提供する健康管理サービスの補完として役立ちます。特に、高齢者や身体障害者向けの健康食品を販売することで、デイサービス施設の生活サポートを強化できます。健康食品の販売は、介護職員が提供する健康管理サービスの補完として役立ちます。
#### 介護関連の教育・トレーニング
デイサービス業は、介護職員の教育・トレーニングにも大きな需要があります。介護関連の教育・トレーニングを提供することで、デイサービス施設の効果的なケアをサポートできます。介護関連の教育・トレーニングは、デイサービス施設の効果的なケアをサポートするために不可欠です。
#### 福祉施設の運営支援
デイサービス施設の運営支援は、デイサービス業と密接に関連しています。例えば、施設の管理運営支援や、介護職員の業務支援を提供することで、デイサービス施設の効率的な運営をサポートできます。福祉施設の運営支援は、デイサービス施設の効率的な運営をサポートするために重要です。
これらの事業は、デイサービス業の需要に応じて提供されることが重要です。各事業の具体的なニーズに応じたサービスを提供することで、デイサービス業の事業と相性がよい事業を実現できます。
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株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。