目次
  1. はじめに
  2. ITコンサル業界におけるM&Aの背景
  3. M&Aを通じて期待されるシナジー効果
    1. 1. サービスラインナップの拡充
    2. 2. 人材の補完
    3. 3. 顧客基盤の拡大
    4. 4. 研究開発やソリューションの高度化
  4. 具体的事例と各社の狙い
    1. 1. 日本工営によるジオプラン・ナムテックの子会社化(2019年)
      1. 上下水道・電力などネットワーク型インフラへのIT支援強化
    2. 2. バルテスによるフェアネスコンサルティングの子会社化(2023年)
      1. SAP導入コンサルやクラウド環境構築へ強みを取り込み
    3. 3. ハイブリッドテクノロジーズによるベトナムNGS Consultingの子会社化(2024年~2025年)
      1. ベトナム市場への進出と日本・ベトナム間ビジネス拡大
    4. 4. ヒューマンクリエイションホールディングスによるグローステクノロジーズの一部事業取得(2021年)
      1. 最上流工程であるコンサルティング・要件定義の強化
    5. 5. ハイパーによる司コンピュータの子会社化(2024年)
      1. 情報インフラ設計・構築分野の強化
    6. 6. ハイパーによるマルチネットの子会社化(2017年)
      1. コンサルティング力を取り込み事業拡大
    7. 7. フューチャーアーキテクトによるライフサイエンス コンピューティングの子会社化(2012年)
      1. 医療機関向けソフトの開発拡充とヘルスケア分野への進出
    8. 8. フューチャーアーキテクトによるマレーシアBrightree Solutionsの子会社化(2011年)
      1. 東南アジア市場への進出と顧客基盤の拡大
    9. 9. フューチャーアーキテクトによるeSPORTSの子会社化(2013年)
      1. EC事業拡大とITコンサル事業とのシナジー
    10. 10. フューチャーによるキュリオシティの子会社化(2023年)
      1. リアル空間でのデザイン力とITコンサルを融合
    11. 11. トランコムによるITS子会社のSI事業譲渡(2022年)
      1. アクセンチュアへの事業譲渡と共同開発の可能性
    12. 12. テンプホールディングスによる東洋ソフトウエアエンジニアリングの子会社化(2010年)
      1. 人材ビジネスと受託開発のシナジー
    13. 13. パワーソリューションズによるイノベーティブ・ソリューションズの子会社化(2024年)
      1. DX支援の強化と開発の効率化
    14. 14. ミロク情報サービスによるMiroku Webcash Internationalの子会社化(2015年)
      1. スクレイピング機能の開発力を強化
    15. 15. テクノプロ・ホールディングスによるプロビズモの子会社化(2018年)
      1. アプリケーション開発とITコンサルの強化
    16. 16. テクノスジャパンによるブレインセラーズ・ドットコムの子会社化(2023年)
      1. ERP・CRM導入支援との相乗効果
    17. 17. シーキューブによるケーエスジャパンおよびティー・アンド・シィー・プランニングの子会社化(2018年)
      1. 情報サービス事業子会社を通じて首都圏の民需市場を開拓
    18. 18. セブンシーズホールディングスによるセブンシーズ・テックワークスの株式一部売却(2010年)
      1. 事業再編の一環としてコンサル領域を整理
    19. 19. クレスコによる高木システムの子会社化(2024年)
      1. IBM iプラットフォーム関連ビジネスでの地位向上
    20. 20. システムサポートによる米国MultiNet Internationalの全事業取得(2024年)
      1. 米国事業の東海岸・中西部進出強化
    21. 21. サークレイスによるFTLの子会社化(2023年)
      1. Salesforce連携ソリューション強化
    22. 22. エクシオグループによるシンガポールvCargo Cloudの再子会社化(2024年)
      1. 議決権行使の合意による再子会社化
    23. 23. クリーク・アンド・リバー社によるGruneの株式譲渡(2022年)
      1. 建築・Web事業とのシナジー不足による売却
    24. 24. アライドアーキテクツによるベトナムDeliveryの子会社化(2018年)
      1. オフショア開発拠点の強化と人材確保
    25. 25. イーシステムによるヒューマンライフテクノロジーおよびデジタル・インフォ・プロデュースの子会社化(2008年)
      1. 人材不足への対応とSI事業の拡大
    26. 26. ウィルグループによるハイブリィドの譲渡(2023年)
      1. 事業ポートフォリオ再編とITコンサル事業の離脱
    27. 27. フォーバルによるフリードの子会社化(2009年)
      1. ビリングサービスと総合ITコンサルの連携
    28. 28. ITbookによるコスモエンジニアリングの買収(2018年)
      1. 人材派遣とITコンサルのシナジー創出
    29. 29. SHIFTによるメソドロジックの子会社化(2016年)
      1. 技術力と人材育成ノウハウの取り込み
    30. 30. SHIFTによるネットワールドの子会社化(2023年)
      1. セキュリティー対策や開発リソースの拡充
    31. 31. PCIホールディングスによるパーソナル情報システムの子会社化(2023年)
      1. 生鮮流通分野へのシステム提案力を獲得
    32. 32. CIJによる日本ファイナンシャル・エンジニアリングの子会社化(2019年)
      1. 金融機関向けシステム開発の強化
    33. 33. サムシングホールディングスとITbookの経営統合(2018年)
      1. IoTやAIを地盤調査・改良業務に応用
    34. 34. BBHによるジャパンシステム・アワーズの受託開発/派遣事業一部取得(2011年)
      1. ITコンサル領域を補完するための事業取得
    35. 35. SJIによる香港の恒星信息(香港)の譲渡(2016年)
      1. ITコンサル事業の赤字子会社を売却
    36. 36. NTTデータによるイタリアValue Teamの子会社化(2011年)
      1. 南欧やブラジルなどへのグローバル展開強化
    37. 37. fonfunによるアドバンティブの譲渡(2019年)
      1. 受託ソフト開発事業からの撤退とコア事業集中
    38. 38. eBASEによるアイエックス・ナレッジの九州事業部門取得(2014年)
      1. アウトソーシングビジネスとSIとの相乗効果
    39. 39. RPAホールディングスによるディレクトのシステムソリューション事業譲渡(2023年)
      1. グループ事業ポートフォリオの見直し
    40. 40. カナミックネットワークによるシンガポールTHE WORLD MANAGEMENTの子会社化(2024年)
      1. ヘルスケア分野の海外展開とバックエンドシステムの強化
    41. 41. ITbookホールディングスによるNEXTの技術者派遣事業一部譲渡(2023年)
      1. 選択と集中のための事業再編
    42. 42. ITbookによるシーエムジャパンの子会社化(2013年)
      1. 動画配信技術とWebシステム開発ノウハウの拡充
  5. ITコンサル業界M&Aの今後の展望
    1. 1. DX関連企業の争奪戦の激化
    2. 2. 海外拠点・海外人材の確保
    3. 3. 縦横の統合による大規模化
    4. 4. 事業再編や集中によるスピンオフや売却
  6. まとめ

はじめに

ITコンサルティング業界は、グローバル競争の激化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速などを背景として、近年M&Aが非常に活発になっています。企業の成長戦略や事業再編の一環として、ITコンサル企業を対象にした買収・子会社化や事業譲渡がさまざまな形で行われており、業界全体の再編も進んでいる状況です。
本記事では、ITコンサル業界におけるM&Aの背景や動向、シナジー効果のポイントなどを幅広く解説するとともに、具体的な事例を交えながら詳しくご紹介いたします。ITコンサル企業のM&Aはどのように行われているのか、そしてそれが当事者企業や市場にもたらすメリットには何があるのか。これらを中心に、多角的な観点からまとめてまいります。

ITコンサル業界におけるM&Aの背景

近年のITコンサル業界は、AIやクラウド、IoTなどの先端技術を活用したプロジェクトが急増するとともに、企業や公共機関のデジタル化ニーズが高まっています。このような時代の変遷にともない、ITコンサルティング企業に求められる専門領域は多様化し、従来のシステム構築から運用・保守にとどまらず、戦略コンサルティングやデータサイエンス領域、さらには海外展開を視野に入れたグローバルサポートまで広がっています。
一方で、新技術に対応できるエンジニアやコンサルタントの確保が各社の急務となっており、中途採用や新卒採用だけでは十分な人材を確保しきれないといった課題も顕在化しています。こうした背景から、専門性をもつ企業や海外拠点を有する企業をM&Aによって取り込む動きが活発化しているのです。
また、ITコンサル企業同士だけでなく、コンサルティング業務を強化したいメーカー、インフラ企業、建設・不動産関連企業、さらにはグローバル展開を目指す国内企業が、ITコンサル会社を買収・子会社化するケースも増加傾向にあります。DXを軸に社会のさまざまな分野でIT化が進むなかで、ITコンサルティングの重要度がさらに高まっていることが、業界の再編を後押ししているといえるでしょう。

M&Aを通じて期待されるシナジー効果

ITコンサル企業のM&Aは、純粋に事業規模を拡大するだけでなく、以下のようなシナジー効果が期待されるケースが多々あります。

1. サービスラインナップの拡充

買収する企業が、対象企業の技術やノウハウを取り込むことで、コンサルティング領域を拡大することが可能です。たとえば、ERP(統合基幹業務システム)の導入コンサルに強みを持つ企業が、クラウドインテグレーションやAI導入支援を得意とする企業を取り込めば、より包括的なソリューションを顧客企業に提案できます。

2. 人材の補完

ITコンサル業界における最大の経営資源は「人材」です。熟練のコンサルタントやエンジニアの存在は、企業がプロジェクトを回していくうえで欠かせません。そのため、優秀な人材を確保する目的でM&Aを行う企業が増えています。
また、新たに取り込んだ企業のネットワークや営業力を活用して新規プロジェクトを獲得し、自社の人員を最適に配置することで、高い収益性を確保する戦略も見られます。

3. 顧客基盤の拡大

買収先企業が持つ顧客基盤を活用し、自社のサービスを幅広く展開するチャンスが得られます。特に公共事業や金融、製造業など業界特化型のソリューションを提供するITコンサル企業を取り込むことで、特定業種に強いポジションを確立しやすくなります。
さらに、海外企業とのM&Aの場合は、現地拠点やノウハウを一気に獲得できるため、グローバル展開を加速するうえでも大きな効果を発揮するのです。

4. 研究開発やソリューションの高度化

ITコンサル企業が新しい技術分野で存在感を発揮するためには、研究開発や先端ソリューションの開発が欠かせません。自社だけで開発を行うにはコストも時間も膨大にかかることがありますが、特定の技術力を持つ企業を取り込むことで、開発スピードや技術レベルを大幅に高められます。
DX時代においては、単なるシステム導入だけでなく、データ活用やAI解析、IoT連携、クラウド基盤の構築など幅広い知見が求められます。M&Aにより、こうした最先端領域への進出を一挙に実現できる可能性があります。

具体的事例と各社の狙い

ここからは、ITコンサル企業やシステムインテグレーター(SIer)などが関わった具体的なM&A事例を、時系列を含めてご紹介いたします。各事例とも、取得価額や取得割合、買収先企業の特徴などが多様です。買収の背景にあるシナジー戦略や各社が狙う成長領域についてもあわせてみていきましょう。

1. 日本工営によるジオプラン・ナムテックの子会社化(2019年)

上下水道・電力などネットワーク型インフラへのIT支援強化

日本工営は2019年5月に、インフラ関連のITコンサルティングを手がけるジオプラン・ナムテックの株式56%を取得し、子会社化しました。ジオプラン・ナムテックは、上下水道や電力、ガス、通信などネットワーク型インフラを対象とした情報システムの販売やサポートを主力業務とする企業です。
日本工営は土木・建設コンサルティングを得意としており、ジオプランのIT領域におけるシステム販売やサポート力を取り込むことで、従来の建設コンサル分野とIT技術を掛け合わせた高度な維持管理サービスを展開する狙いがありました。これにより、アセットデータの活用やインフラ関連技術の提案力を強化し、公共事業受注の拡大を目指したとみられています。

2. バルテスによるフェアネスコンサルティングの子会社化(2023年)

SAP導入コンサルやクラウド環境構築へ強みを取り込み

2023年9月、ソフトウェアテストや品質コンサルティングを手掛けるバルテスが、ITコンサルティングやシステム構築・運用を行うフェアネスコンサルティングの全株式を取得し、同社を子会社化することを決定しました。フェアネスコンサルティングはドイツSAP製統合基幹業務ソフトウエアの導入支援やミドルウエア、クラウド環境構築などの実績があり、企業の基幹システム刷新に強みを持っています。
バルテスはもともとソフトウェアテスト分野において高い評価を得ており、フェアネスコンサルティングをグループに迎え入れることで、上流工程からのコンサルティングおよびクラウド基盤構築の領域を拡充し、顧客へのサービス提供範囲を大きく広げる意図があるものと推察されます。

3. ハイブリッドテクノロジーズによるベトナムNGS Consultingの子会社化(2024年~2025年)

ベトナム市場への進出と日本・ベトナム間ビジネス拡大

ハイブリッドテクノロジーズは2024年12月に、ベトナムでITコンサルティングなどを展開するNGS Consulting Joint Stock Company(NGSC)の株式40%を取得し、取締役の指名権を有することで実質的に子会社化すると発表しました。取得予定は2025年2月下旬です。
ハイブリッドテクノロジーズはベトナムへの市場進出を成長戦略と位置付けており、ベトナム拠点を持つNGSCとの協業により、日本での事業展開を目指すNGSCの思惑とも一致しました。急成長市場のベトナムでの開発リソースやノウハウを取り込み、日本企業へのオフショア開発支援やグローバルプロジェクトの拡大を狙っていると考えられます。

4. ヒューマンクリエイションホールディングスによるグローステクノロジーズの一部事業取得(2021年)

最上流工程であるコンサルティング・要件定義の強化

ヒューマンクリエイションホールディングスは、システム開発子会社アセットコンサルティングフォースを通じて、ITコンサルティングなどを手掛けるグローステクノロジーズの一部事業を2021年6月1日に取得しました。システム開発の上流工程である要件定義やコンサルティング分野を強化し、受託事業を拡大することが狙いです。
ITコンサル領域を取り込むことで、下流工程だけではなく全体的なプロジェクトマネジメント体制の質を高め、プロジェクト全体を一貫して請け負える体制を構築すると期待されます。

5. ハイパーによる司コンピュータの子会社化(2024年)

情報インフラ設計・構築分野の強化

2024年6月、ハイパーは情報インフラ設計・構築を主力とする司コンピュータを子会社化すると発表しました。ハイパーは法人向けパソコン販売や、ネットワーク設計・構築など幅広く手がけており、司コンピュータのネットワークインフラ構築力やセキュリティソリューションを取り込むことで、さらなるソリューションビジネスの強化を目指しています。
同年8月1日付で取得が完了し、最終的な取得価額は非公表ですが、司コンピュータのネットワーク構築実績やセキュリティ対策ノウハウは、ハイパーのコンサル力と相乗効果を発揮していくと考えられています。

6. ハイパーによるマルチネットの子会社化(2017年)

コンサルティング力を取り込み事業拡大

2017年7月、ハイパーはITコンサルティングを主力とするマルチネットを4億円で買収し、完全子会社化しました。マルチネットはIT戦略策定からシステム導入、運用支援まで幅広いコンサルティング能力を有しており、ハイパーの顧客基盤やハードウェア販売のネットワークと相乗効果を狙う形です。
ハイパーにとってはITコンサルティング領域を強化することで、ハードウェアを中心としたビジネスモデルからより付加価値の高い包括的なITサービス展開への転換が図れます。

7. フューチャーアーキテクトによるライフサイエンス コンピューティングの子会社化(2012年)

医療機関向けソフトの開発拡充とヘルスケア分野への進出

フューチャーアーキテクトは2012年2月、医療機関向けソフトウエアの開発・販売を行うライフサイエンス コンピューティングが実施する第三者割当増資を引き受け、51.9%の株式を取得して子会社化しました。電子カルテ「Open Dolphin Pro」を中心に事業を展開する同社の医療関連ソリューションと、フューチャーアーキテクトのITコンサルティングのノウハウを融合することで、ヘルスケア分野へ事業を拡大する目的がありました。
また、医療機関向けのクラウドサービスも自社グループに取り込むことで、クラウド関連サービスを強化し、医療領域のITニーズに幅広く応えられる体制を整備しています。

8. フューチャーアーキテクトによるマレーシアBrightree Solutionsの子会社化(2011年)

東南アジア市場への進出と顧客基盤の拡大

フューチャーアーキテクトは2011年10月、シンガポールの連結子会社North Consulting Groupを通じて、マレーシアのBrightree Solutionsの株式51%を取得し子会社化しました。
Brightree Solutionsは統合業務システムの導入や運用・保守に強みを持ち、東南アジアでの実績を積んでいます。フューチャーアーキテクトのITコンサルティングノウハウや顧客ネットワークを活用し、急成長する東南アジア市場での顧客基盤拡大と新たなプロジェクト獲得につなげる狙いがありました。

9. フューチャーアーキテクトによるeSPORTSの子会社化(2013年)

EC事業拡大とITコンサル事業とのシナジー

2013年6月、フューチャーアーキテクトはスポーツ用品・アウトドア用品のECサイトを運営するeSPORTSを子会社化しました。EC分野の拡大と、ITコンサルティング事業との連携による新たなビジネスモデルの創出を目指したものです。
EC事業は成長分野の一つであり、フューチャーアーキテクトが得意とするIT戦略支援やシステム開発と掛け合わせることで、より高度なECプラットフォーム構築・運営が期待されました。

10. フューチャーによるキュリオシティの子会社化(2023年)

リアル空間でのデザイン力とITコンサルを融合

フューチャーは2023年4月、フランス人デザイナーであるグエナエル・ニコラ氏が創業したデザインスタジオ「キュリオシティ」を子会社化すると発表しました。インテリア・建築・プロダクトデザインで高い評価を得てきたキュリオシティのデザイン力と、フューチャーグループのITコンサルティング力を組み合わせることで、新しい価値提供が可能になると判断したのです。
予定通り取得を完了し、2023年7月に取得価額が23億1600万円であったと明らかにされました。ITとリアル空間を融合した総合的なデザイン・コンサルティングを手掛けることで、幅広い分野の顧客ニーズに対応できる体制が整うことが期待されています。

11. トランコムによるITS子会社のSI事業譲渡(2022年)

アクセンチュアへの事業譲渡と共同開発の可能性

物流大手のトランコムは2022年、ITコンサルティング子会社であるトランコムITSのシステムインテグレーション(SI)事業を、外資系コンサルティング大手のアクセンチュアに譲渡すると発表しました。トランコムITSが会社分割で新設する企業の全株式をアクセンチュアに譲渡する形です。
今回の譲渡を機に、トランコムとアクセンチュアは物流分野のDX推進やモノづくりの新たな手法確立など、新サービス開発を共同で進めるとされています。ITコンサルやSI事業が物流やサプライチェーン全体の改革と融合する象徴的な事例といえます。

12. テンプホールディングスによる東洋ソフトウエアエンジニアリングの子会社化(2010年)

人材ビジネスと受託開発のシナジー

テンプホールディングス(現パーソルホールディングス)は2011年1月、ソフトウエア受託開発やITコンサルを手掛ける東洋ソフトウエアエンジニアリングを子会社化しました。テンプはもともと人材派遣ビジネスで成長してきた企業ですが、アウトソーシング分野にも力を入れており、IT系の受託開発を扱う東洋ソフトウエアエンジニアリングを取り込むことで、企業ニーズに総合的に対応できるサービス体制を強化しました。

13. パワーソリューションズによるイノベーティブ・ソリューションズの子会社化(2024年)

DX支援の強化と開発の効率化

2024年4月、パワーソリューションズはDX支援を行うITコンサル企業イノベーティブ・ソリューションズの株式51%を3億4000万円で取得し、子会社化すると発表しました。製造業や物流業など多様な顧客に対して業務改革のコンサルやシステム内製化支援に実績をもつ同社を取り込むことで、パワーソリューションズは開発効率の向上やサービス付加価値のさらなる拡充を図る見込みです。

14. ミロク情報サービスによるMiroku Webcash Internationalの子会社化(2015年)

スクレイピング機能の開発力を強化

2015年、ミロク情報サービスはITコンサル業を行うMiroku Webcash International(MWI)の株式を追加取得し、所有割合を40%から55%に引き上げました。韓国Webcash社の日本法人としてスクレイピング技術を開発していたMWIを取り込むことで、銀行口座やクレジットカードの利用明細などを自動取得し、会計処理のデータ入力を効率化する機能をミロク情報サービス製品に組み込む狙いがありました。
従来型の会計ソフトから、よりクラウド化・自動化が進む会計サービスへ転換するうえで重要な機能を確保し、競争力を高めようとした事例といえます。

15. テクノプロ・ホールディングスによるプロビズモの子会社化(2018年)

アプリケーション開発とITコンサルの強化

テクノプロ・ホールディングスは2018年1月、アプリケーション開発やITコンサルを手掛けるプロビズモを約17億6500万円で子会社化しました。プロビズモは東京や大阪、島根、鳥取に拠点を構え、約120名のエンジニアを抱える企業で、請負開発に強みを持っています。
技術系人材派遣で大きく成長してきたテクノプロにとって、プロビズモを取り込むことで受託開発やコンサル分野の事業規模拡大と、エンジニアの確保という両面でメリットが生じると期待されました。

16. テクノスジャパンによるブレインセラーズ・ドットコムの子会社化(2023年)

ERP・CRM導入支援との相乗効果

2023年1月、テクノスジャパンはソフトウェア開発を行うブレインセラーズ・ドットコムの全株式を約7億8600万円で取得し、子会社化すると決定しました。ブレインセラーズはオンデマンドWeb帳票ソリューション「biz-Stream」を中核事業としており、帳票管理の分野で独自の強みをもっています。
テクノスジャパンが得意とするERPやCRMの導入コンサルティングとブレインセラーズの帳票ソリューションを組み合わせることで、企業システムの導入・運用における利便性を大きく高める狙いがあります。

17. シーキューブによるケーエスジャパンおよびティー・アンド・シィー・プランニングの子会社化(2018年)

情報サービス事業子会社を通じて首都圏の民需市場を開拓

シーキューブは情報サービス事業子会社フューチャーインを通じて、ITコンサルやシステム構築を主力とするケーエスジャパンとティー・アンド・シィー・プランニングの全株式を2018年5月に取得しました。どちらも首都圏を中心に活動しており、フューチャーインは両社の実績・顧客基盤を活用して民需市場への事業展開を加速させる考えです。

18. セブンシーズホールディングスによるセブンシーズ・テックワークスの株式一部売却(2010年)

事業再編の一環としてコンサル領域を整理

2010年4月、セブンシーズホールディングスはITコンサルティングを行う子会社セブンシーズ・テックワークスの株式の一部をA&Mコーポレーションへ譲渡し、出資比率を52.4%から24.7%へ下げました。
景気変動に強い事業へ再編する過程で、モバイル決済やデータセンター事業の強化を重点戦略とする方針を打ち出し、ITコンサル事業を担うテックワークスを売却する決定を下した形です。M&Aは必ずしも買収ばかりではなく、事業整理や再編のための売却も含まれます。

19. クレスコによる高木システムの子会社化(2024年)

IBM iプラットフォーム関連ビジネスでの地位向上

クレスコは2024年10月に、子会社クレスコ・ジェイキューブを通じてITコンサルティングの高木システムを7億4000万円で子会社化すると発表しました。高木システムは1988年設立で、電気・電子部品メーカー向けの基幹システム「TREE」を提供し、IBM i上での稼働実績が豊富です。
クレスコグループの開発力や販売チャンネルと、高木システムの業種特化型ソリューションを掛け合わせることで、IBM i関連ビジネスにおいてリーディングカンパニーとしての地位をより強固にする戦略が伺えます。

20. システムサポートによる米国MultiNet Internationalの全事業取得(2024年)

米国事業の東海岸・中西部進出強化

システムサポートは2024年7月に、米国子会社を通じて米国MultiNet Internationalの全事業を取得する計画を発表しました。システムサポートは2013年にカリフォルニア州シリコンバレーにSTS Innovationを設立していましたが、今回の買収により東海岸や中西部、南部などにも事業エリアを拡大する考えです。
日本人経営者が運営するMultiNet Internationalは、DXコンサルやクラウドサービスなどを在米日系企業や政府系機関に提供しており、このノウハウを取り込むことでシステムサポートのグローバル展開がさらに加速すると予想されています。

21. サークレイスによるFTLの子会社化(2023年)

Salesforce連携ソリューション強化

サークレイスは2023年10月、システム開発のFTLを買収し子会社化すると発表しました。FTLは2013年設立で、クラウドサービスにおける高速・高品質なシステム開発を強みとしており、Salesforceなどの顧客管理ソフトウエアとの連携ソリューション提供に実績があります。
サークレイスはFTLを取り込むことで、ITコンサルティング事業全体の品質向上や開発スピードの向上を図り、顧客企業へのクラウドサービス導入支援をより一層強化していくものとみられます。

22. エクシオグループによるシンガポールvCargo Cloudの再子会社化(2024年)

議決権行使の合意による再子会社化

エクシオグループはシンガポールのITコンサルティング企業vCargo Cloudについて、現地HARBOUR LAUNCHと議決権行使を合意し、再び子会社化しました。エクシオグループはvCargo Cloudの株式36%を持っていますが、同社を子会社とするには過半数の議決権をまとめる必要があり、今回HARBOUR LAUNCHからの合意を得たことで実質的な支配権を確保した形です。
vCargo Cloudは物流や貿易関連のITソリューションで実績を築いており、エクシオグループと協働することでさらに多彩なグローバルプロジェクトに対応できる基盤を強化していくとみられます。

23. クリーク・アンド・リバー社によるGruneの株式譲渡(2022年)

建築・Web事業とのシナジー不足による売却

クリーク・アンド・リバー社は2022年10月、ITコンサル・Webアプリ開発子会社のGruneの全株式75%を創業者らに譲渡しました。2020年の買収時は自社の建築・Web事業などとの相乗効果を見込んでいましたが、期待どおりの成果が得られず、さらなる発展のために創業者へ株式を戻す形となりました。
M&Aには買収だけでなく、成果が思うように上がらない場合の売却も含まれており、戦略の柔軟な転換を示す例といえます。

24. アライドアーキテクツによるベトナムDeliveryの子会社化(2018年)

オフショア開発拠点の強化と人材確保

アライドアーキテクツは2018年8月以降、ベトナムのシステム開発会社Delivery Vietnamを子会社化すると発表しました。既にハノイに子会社を設立していたアライドアーキテクツですが、ホーチミン市に拠点を持つDelivery Vietnamを取り込むことで開発リソースのさらなる拡大を狙っています。
ITコンサルティング企業をはじめとする日本企業がベトナムなど東南アジアでオフショア開発拠点を設ける動きは盛んで、人材確保と開発コスト削減の両立ができる点が大きな魅力となっています。

25. イーシステムによるヒューマンライフテクノロジーおよびデジタル・インフォ・プロデュースの子会社化(2008年)

人材不足への対応とSI事業の拡大

2008年1月、イーシステムはシステムインテグレーション(SI)事業を手がけるヒューマンライフテクノロジーとITコンサルティングのデジタル・インフォ・プロデュースを相次いで子会社化しました。当時、SI業界では慢性的なエンジニア不足が課題となっており、両社を取り込むことで70名以上の技術者を一挙に確保したのです。
技術者不足への対応は、IT系企業がM&Aを行う大きな理由の一つであり、即戦力の人材が所属する企業を買収するのは非常に効率的とされています。

26. ウィルグループによるハイブリィドの譲渡(2023年)

事業ポートフォリオ再編とITコンサル事業の離脱

ウィルグループは2023年3月、ITコンサルや社員教育サービスを提供していた子会社ハイブリィド(51.2%出資)を、HIBパートナーズに売却すると発表しました。初期の買収費用は約1450万円だった一方、今回の売却額は4億537万円であり、ハイブリィドの売上高は子会社化当時の1800万円から13億7000万円へ大きく成長を遂げました。
ウィルグループにとっては一定の成果を上げた事業であり、さらなるポートフォリオ見直しの一環として売却による資本回収を選択した形です。

27. フォーバルによるフリードの子会社化(2009年)

ビリングサービスと総合ITコンサルの連携

2009年2月、フォーバルは名古屋市を拠点とするフリードを約3億3000万円で子会社化しました。フリードが展開する「フラディオ・コレクト」という請求書の管理を簡易化するビリングサービスや、回線取次事業での強みをフォーバルグループの総合ITコンサル「アイコン」と組み合わせることで、新たな顧客獲得やサービス拡張を目指す事例です。

28. ITbookによるコスモエンジニアリングの買収(2018年)

人材派遣とITコンサルのシナジー創出

ITコンサルティング企業ITbookは2018年1月、ソフトウェア関連の人材派遣や建設工事の設計・積算を手掛けるコスモエンジニアリングを子会社化しました。ITbookは公共案件や民間のDXプロジェクトなどでのコンサル実績を積み上げるなか、人材派遣分野でのノウハウを取り込み、より幅広いソリューションを提供できる体制を目指しています。
派遣領域の拡充により、多様なプロジェクトへの柔軟な人材投入が可能となり、さらなる事業発展が期待されました。

29. SHIFTによるメソドロジックの子会社化(2016年)

技術力と人材育成ノウハウの取り込み

SHIFTは2016年9月、ソフトウェア開発やITコンサル事業を行うメソドロジックを子会社化しました。SHIFTはソフトウェアテストで急成長を続けており、メソドロジックの技術的知見やエンジニアの育成ノウハウを活用することで、自社サービス品質の底上げを図る狙いがありました。
テスト工程と開発工程を一体的にカバーする体制を強化することで、大規模プロジェクトへの対応力も向上すると考えられます。

30. SHIFTによるネットワールドの子会社化(2023年)

セキュリティー対策や開発リソースの拡充

SHIFTは2023年10月、システム開発のネットワールドを子会社化すると発表しました。ネットワールドはWeb改ざん検知サービス「WebS@T」などのセキュリティソリューションを提供しており、エンジニアの専門知識が豊富です。
ITコンサルから開発・テストまでのワンストップサービスを追求するSHIFTにとって、ネットワールドのセキュリティソリューションは重要なピースであり、今後の大規模開発案件対応力をさらに強化する見込みです。

31. PCIホールディングスによるパーソナル情報システムの子会社化(2023年)

生鮮流通分野へのシステム提案力を獲得

2023年1月、PCIホールディングスは傘下企業を通じて、ITコンサルティングとシステム開発を行うパーソナル情報システムの全株式を取得することを決定しました。パーソナル情報システムは生鮮流通分野における基幹システム開発に強みがあり、これを取り込むことでPCIホールディングスグループのシステムインテグレーション事業を強化します。
生鮮食品の流通管理は需給予測やロジスティクスシステム構築など高度なIT活用が求められる領域であり、同社のノウハウがグループの事業拡大に資するものと期待されています。

32. CIJによる日本ファイナンシャル・エンジニアリングの子会社化(2019年)

金融機関向けシステム開発の強化

CIJは2019年1月に、ITコンサルティングを行う日本ファイナンシャル・エンジニアリングの全株式を取得し、金融ビジネス事業部を拡大すると発表しました。日本ファイナンシャルは金融業界向けのシステム開発やコンサルに実績があり、この買収により金融セクターでのサービスをさらに拡充する計画が示されています。

33. サムシングホールディングスとITbookの経営統合(2018年)

IoTやAIを地盤調査・改良業務に応用

地盤関連事業を営むサムシングホールディングスとITコンサルのITbookは2018年10月、共同持株会社「ITbookホールディングス」を設立し経営統合を行いました。サムシングは年間3万件におよぶ地盤調査・改良業務のデータを活用できる顧客基盤を持ち、ITbookはIoTやAIを駆使したITコンサルに強みを持ちます。
両者のシナジーとしては、地盤調査や改良の現場でIT技術を適用することにより生産性向上やコスト削減を推進し、一方でITbookが得意とする自治体案件や公共事業でもサムシングのノウハウを活用できることが挙げられます。

34. BBHによるジャパンシステム・アワーズの受託開発/派遣事業一部取得(2011年)

ITコンサル領域を補完するための事業取得

BBHは2011年7月、ITコンサルティング分野への進出を目的に設立した子会社を通じて、ジャパンシステムとアワーズの一部システム開発事業およびIT人材派遣事業を取得しました。事業譲受による人材確保と顧客基盤獲得を狙ったもので、比較的小規模なM&A手法として事業譲渡が用いられた事例です。

35. SJIによる香港の恒星信息(香港)の譲渡(2016年)

ITコンサル事業の赤字子会社を売却

SJIは2016年10月、香港でシステム開発やITコンサルを手がける恒星信息(香港)有限公司(SJI-HK)の全株式を現地企業に譲渡しました。SJI-HKは赤字が続いており、債務超過状態に陥っていたため、グループ全体の財務改善と経営資源の集中を図るための売却とみられます。

36. NTTデータによるイタリアValue Teamの子会社化(2011年)

南欧やブラジルなどへのグローバル展開強化

NTTデータは2011年4月、ドイツ子会社を通じてイタリアのITコンサルティング企業Value Teamを子会社化することを発表しました。イタリアやブラジル、トルコなどで幅広く事業を展開しているValue Teamを取り込むことで、欧州や中南米におけるサービス体制を強化し、グローバル規模の競争力を高める戦略が背景にあります。

37. fonfunによるアドバンティブの譲渡(2019年)

受託ソフト開発事業からの撤退とコア事業集中

fonfunは2019年7月、受託ソフトウェア開発子会社のアドバンティブを設立間もないITコンサル企業AHDに譲渡しました。fonfunはリモートメールやSMS関連の自社サービスに経営資源を集中させる方針を打ち出しており、思うように利益を上げられなかったアドバンティブを切り離す判断を下したのです。

38. eBASEによるアイエックス・ナレッジの九州事業部門取得(2014年)

アウトソーシングビジネスとSIとの相乗効果

2014年12月、eBASEは子会社のeBASE-PLUSを通じてアイエックス・ナレッジの九州事業部門を取得しました。九州事業部門はITコンサルやシステムインテグレーションを行っており、赤字部門ではありましたが、eBASE-PLUSのアウトソーシングビジネスとの連携によって黒字化を図る計画です。

39. RPAホールディングスによるディレクトのシステムソリューション事業譲渡(2023年)

グループ事業ポートフォリオの見直し

RPAホールディングスは2023年10月、子会社ディレクトが手がけるシステムソリューション事業の一部を譲渡すると発表しました。当該事業は赤字が続いており、RPAホールディングスがコア領域に集中する目的での売却とみられます。譲渡価額は3500万円と開示されており、今後はRPAやAIなどの主要事業へ資源を集中させる戦略の一環です。

40. カナミックネットワークによるシンガポールTHE WORLD MANAGEMENTの子会社化(2024年)

ヘルスケア分野の海外展開とバックエンドシステムの強化

2024年11月、カナミックネットワークはシンガポールのTHE WORLD MANAGEMENT(TWM)を約6億2100万円で子会社化すると発表しました。TWMは販売管理や会計管理などのバックエンドシステムを得意とし、シンガポール企業へのコンサル実績を多く持っています。
カナミックネットワークが提供するヘルスケア・介護連携のシステム開発力と、TWMのバックエンドに強いノウハウを融合することで、東南アジア市場におけるヘルスケアITプラットフォームを一段と充実させる狙いがあります。

41. ITbookホールディングスによるNEXTの技術者派遣事業一部譲渡(2023年)

選択と集中のための事業再編

ITbookホールディングスは2023年4月、子会社NEXTが手掛ける技術者派遣事業の一部をFreeeksに譲渡しました。心斎橋オフィス・静岡オフィスの赤字部門が対象となり、譲渡価額は1億7500万円とされています。
ITbookホールディングスは関東圏を中心としたITコンサルや派遣サービスへ集中することで効率的な事業運営を目指し、地方拠点の赤字事業を切り離す判断を下したと考えられます。

42. ITbookによるシーエムジャパンの子会社化(2013年)

動画配信技術とWebシステム開発ノウハウの拡充

2013年4月、ITbookは動画配信やWeb制作を行うシーエムジャパンの発行済株式を99.2%取得し子会社化しました。ITコンサル事業とWebシステム開発を組み合わせることで、企業向けWebマーケティングや動画配信ソリューションの提供範囲を拡大する狙いがあり、これによりITbookが受け持つプロジェクトのバリエーションが増加したとみられます。

ITコンサル業界M&Aの今後の展望

以上のように、ITコンサル業界のM&Aには多様な動きがあります。とりわけ、以下のトレンドが今後も続くと予測されます。

1. DX関連企業の争奪戦の激化

AI・IoT・クラウド・ビッグデータ解析などのDX関連技術を持つ企業は引き続き高い評価を受けており、多くの企業が買収ターゲットとして注目しています。そのため、買収価格が高騰する例も増えており、将来的にも競争は激化する見通しです。

2. 海外拠点・海外人材の確保

グローバル展開を目指す日本企業が、海外でITコンサルや開発リソースを確保するケースは引き続き増加傾向です。ベトナムやインドネシアなど東南アジアのほか、ヨーロッパや北米地域へも積極的なM&Aが進む可能性があります。
オフショア開発や海外の優秀なエンジニアを取り込むことで、自国だけでは補いきれない人材不足を解消し、開発コストの優位性を保つ戦略が今後も続くと考えられます。

3. 縦横の統合による大規模化

コンサルティング業界自体が拡大・再編していく流れのなかで、ITコンサル企業もまた垂直統合・水平統合を通じてサービスの大規模化を進めるでしょう。たとえばコンサルティング大手が、ニッチな技術を持つベンチャー企業を傘下に収めたり、中堅IT企業同士が合併してより広範なソリューションを提供できるようにしたりと、今後も多角的なM&Aが見込まれます。

4. 事業再編や集中によるスピンオフや売却

買収だけでなく、事業整理やコア事業への集中を目的としたスピンオフ、子会社・事業部門の売却も多く行われています。大手企業の子会社やベンチャー企業が、経営方針の変更により一部のITコンサル事業を売却する動きは今後も続くでしょう。
これまで不採算部門だった領域が、新オーナーのもとで花開く可能性もあるため、戦略的なM&A手法のひとつとして注目が高まっています。

まとめ

本記事では、ITコンサル業界における多彩なM&A事例をご紹介し、その背景や狙い、今後の展望を解説いたしました。ITコンサル企業の買収や子会社化の動機には、技術的な補完、人材確保、顧客基盤の拡充などさまざまな要素があり、企業によってケースは大きく異なります。
しかし共通しているのは、急速に進むDX社会のなかで、ITコンサルティングの価値が高まり続けているという点です。最先端技術を活用したコンサルティングやシステム構築は、事業の競争力を左右するほど重要な領域となっています。そのため、ITコンサル企業の買収を通じた機能強化や海外拠点の獲得、研究開発の加速が、今後も各社の成長戦略の中核を占めていくでしょう。
また、事業を拡大するだけでなく、戦略上の理由で事業譲渡やスピンオフを行う例も増えており、ITコンサル業界の構造はさらに複雑化していくものと考えられます。従来型のシステム開発のみならず、DX、AI、IoT、クラウドなど幅広い領域での人材確保と技術力の吸収は、ITコンサル企業にとって優先度の高い課題であり、その解決策としてのM&Aが一段と活発化していくことが見込まれます。
企業にとってM&Aは、単なる規模拡大の手段ではなく、得意領域の補完や新市場への参入、人材獲得、研究開発力の強化など、さまざまな戦略目的を実現するための有力なオプションとなっています。ITコンサル業界を俯瞰してみると、買収・子会社化・事業譲渡など多彩なM&Aスキームが活用されており、それぞれの企業が置かれた経営環境や市場の変化に応じて最適な選択を模索していることがうかがえます。
今後も国内外のITコンサル企業やSIer、それらを取り巻く業界プレイヤーによるM&A事例は増加傾向が続くでしょう。競争力を強化するためにどの企業がどんな戦略を取るのか、それぞれの動向をウォッチしていくことで、ITコンサル業界の未来像がさらに具体化していくはずです。
本記事が、ITコンサル業界のM&A動向を俯瞰し、その狙いやポイントを理解する一助となれば幸いです。これからもDX社会を支える中核として、ITコンサル企業の重要性と市場価値がますます高まっていくことは間違いありません。企業同士がどのようなパートナーシップを築き、どのような買収・譲渡を進めるのか、その動きから目が離せない時代が続きそうです。