- 第一章:建設機械レンタル・リース業界の概要
- 第二章:建設機械レンタル・リース業界におけるM&Aの背景
- 第三章:具体的なM&A事例とその意味合い
- 3-1. 東京センチュリーによるFMIの子会社化
- 3-2. 日立キャピタル(現・三菱HCキャピタル)によるCLE Canadian Leasing Enterprisesの子会社化
- 3-3. 日本鋳造と日立建機による新東北メタル株式譲渡
- 3-4. 東芝機械(現・芝浦機械)とナブテスコによるハイエストコーポレーションの株式譲渡
- 3-5. 東芝機械(現・芝浦機械)のインドL&T Plastics Machinery買収
- 3-6. 清鋼材による中国子会社の譲渡
- 3-7. 前田製作所による介護用品事業の一部取得
- 3-8. 日立建機によるKCMの子会社化
- 3-9. 日立建機によるH-E Parts Internationalなど2社の子会社化
- 3-10. 日立建機によるインドのTelco Construction Equipment Company(テルコン社)買収
- 3-11. 虹技によるアルミ合金鋳造の小口合金鋳造所子会社化
- 3-12. 横浜ゴムによるグッドイヤーの鉱山・建設機械用タイヤ事業取得
- 3-13. 佐藤商事による阪神特殊鋼の子会社化
- 3-14. 佐藤商事による青木ホールディングス自動車部品製造事業の取得
- 3-15. 三菱製鋼によるインドネシア特殊鋼鋼材メーカーの子会社化
- 3-16. 九州鉄道によるキャタピラー九州の建設機械販売事業取得
- 3-17. 三菱製鋼の希望退職募集
- 3-18. 小糸製作所による米国セプトンの追加出資
- 3-19. ユアサ商事による丸建サービスの子会社化
- 3-20. ユアサ商事による富士重工ハウス(現・富士クオリティハウス)の子会社化
- 3-21. ワキタによるグランドアースなど2社の子会社化
- 3-22. リアルコムによるWWBの株式交換
- 3-23. ワキタによる信陽機材グループ3社の子会社化
- 3-24. ワキタによるヤマケイ、泉リース、日東レンタルなど多数の子会社化
- 3-25. 象印マホービンによる日立建機ティエラの玄米保冷庫事業取得
- 3-26. オカダアイヨンによる米国TT&Eグループからの事業取得
- 3-27. カーリットホールディングスによる東洋発條工業の子会社化
- 3-28. コンセックによる丸金建設の子会社化
- 3-29. イハラサイエンスによる中国建設機械メーカー出資
- 3-30. カナモトによる多数のM&A事例
- 3-31. ニッパンレンタルのMBOによる非公開化
- 3-32. マルカによる食品機械製造のミヤザワ子会社化
- 3-33. ゼロによるIKEDAの子会社化
- 3-34. 日本トムソンによる中国ベアリングメーカーUBC上海の子会社化
- 3-35. ガリバーインターナショナル(現・IDOM)による海外建機事業の譲渡
- 第四章:M&Aから読み解く建設機械レンタル・リース業界の動向
- 第五章:M&A実施に伴うシナジーと課題
- 第六章:今後の展望と戦略ポイント
- 第七章:まとめ
第一章:建設機械レンタル・リース業界の概要
1-1. 建設機械レンタル・リース業界とは
建設機械レンタル・リース業界は、建設現場で用いられる重機や小型機械、仮設資材、さらには補修や解体に必要なアタッチメントなどの貸与を通じて、工事会社やゼネコン、各種工事関連企業の施工をサポートする事業を中心としています。多くの企業が、機械を貸与するだけでなく、メンテナンスや修理、アフターサービス、機械オペレーターの派遣など、建設現場のニーズに応じた包括的なサービスを提供する形態へと進化してきております。
建設業界は工事規模や景気動向の影響を受けやすいため、大量の機械を所有して固定費を大きく抱えるリスクを避けたい施工会社や工事会社にとって、必要な時に必要な機械を必要な台数だけレンタル・リースできる仕組みは極めて合理的です。そのため、国内外を問わず、建設機械レンタル・リース業界は継続的に需要を確保してきました。
特に日本国内では公共事業や再開発プロジェクト、災害復興工事などが一定の需要を支えてきましたが、近年は新型コロナウイルス感染拡大や労働力不足、資材価格の高騰などが業績に影響を与える局面がありました。一方で、ICTやデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した「i-Construction」の推進や、海外インフラ市場の拡大など、技術面・地域面での新たなチャンスも生まれています。
1-2. レンタル・リース企業のビジネスモデルと収益構造
建設機械レンタル・リース企業のビジネスモデルは、機械本体を所有し、それを顧客企業に一定期間貸し出して使用料を得る形です。これに加え、修理やメンテナンスなどの保守サービスの提供で追加の収益を狙うケースも多くなっております。さらに、近年では機械の販売や下取り、中古建機の輸出、さまざまなサービスとのパッケージ提供など、従来の枠を超えた多角的な収益機会を追求する動きが強まっています。
しかしながら、機械の更新投資や在庫管理、メンテナンス体制の確保には大きな資本が必要です。また、事業の拡大を図るには全国規模の拠点網や海外進出も視野に入れる必要があり、そのためには企業同士が資本提携や買収を通じて力量を高めることが重要となっています。こうした背景が、M&Aを活発化させる大きな要因となっているのです。
第二章:建設機械レンタル・リース業界におけるM&Aの背景
2-1. 業界再編の大きな流れ
建設機械レンタル・リース業界がM&Aを通じて再編を進めている背景には、大きく以下のような要因が挙げられます。
- 市場競争の激化と規模拡大の必要性
建設機械レンタル業界には大手から中小まで多数のプレーヤーが存在し、価格やサービスの差別化が熾烈になっています。一定の規模と資本力がないと、多様化する顧客ニーズや技術進歩に対応しきれず、業務効率を高められないリスクがあります。そのため、買収や合併によって企業の規模拡大や営業エリアの広域化を進める動きが続いています。 - ICT化・DXの進行による投資圧力
国土交通省が推進する「i-Construction」や海外の大規模案件でのICT活用など、建設業界でも高度なデジタル技術や情報通信技術の導入が急速に進んでいます。レンタル企業もICT対応建機やクラウド管理システムなどの投資が求められるため、資本力のある企業が小規模の企業を取り込み、技術投資やサービス強化を行うケースが増加しています。 - 海外展開の加速とサプライチェーン強化
国内市場の成長が限定的になりつつある中、成長性の高い新興国を中心とした海外展開が重要になっています。特にインドやアジア地域では大規模インフラ需要が見込まれ、建設機械のレンタル・リース事業でも高い成長余地があります。海外企業の買収や合弁を通じて、現地生産体制や販売ネットワークを獲得しようとする動きは近年特に顕著です。 - 業界内外の相互補完・シナジー追求
レンタル・リース企業が単独で全てのサービスを提供するのは難しく、販売やメンテナンス、ICTソリューション、さらに物流網など、さまざまな領域を複合的にカバーする必要が生じています。そのため、例えば金融系リース会社との資本提携によるファイナンス機能強化や、製造メーカーとの連携でアフターサービスを充実化させるなど、多角的なM&Aが行われています。
2-2. 金融業界の参入とリース機能強化
銀行系や総合リース系の金融企業も、建設機械や輸送機械分野でのリース事業に強い関心を持ち始め、積極的なM&Aを実施しています。これは、建設機械が高額である一方、公共事業や大手ゼネコン、海外インフラ事業など比較的安定した需要が期待できるためです。リース企業としては、設備投資に対するファイナンス業務や中古機の流通網との連携といった新しいビジネスチャンスにつながります。
実際に、東京センチュリーや日立キャピタル(現・三菱HCキャピタル)などは、海外の販売・アフターサービスを手がける企業を次々と買収し、建設機械における「ワンストップ・サービス」体制を整える動きを加速させています。これはリース・ファイナンスだけでなく、メンテナンスや修理、リースアップ機材の中古販売まで包含する一貫サービスモデルで市場競争力を高める戦略といえます。
第三章:具体的なM&A事例とその意味合い
ここからは、実際に建設機械レンタル・リース業界、あるいは建設機械関連分野で行われたM&Aの事例をいくつかご紹介いたします。具体的な取引を概観することで、各企業がどのような狙いと戦略のもとでM&Aを行っているのかを理解する手がかりになります。
3-1. 東京センチュリーによるFMIの子会社化
東京センチュリーは米国で小型建設機械や樹木整備機器の販売、アフターサービスを行うFiber Marketing International, Inc.(FMI)の全株式を取得しました。東京センチュリーはもともと金融サービスを提供するリース・ファイナンス分野の企業でしたが、近年は実際の販売・アフターサービスにまで踏み込み、「ワンストップ・サービス」を拡充する動きを強めています。
この子会社化により、販売・ファイナンス・アフターサービスが一体となることで、顧客企業は資金調達から機械調達、メンテナンスまでをまとめて利用することができるようになります。特にFMIは小型建機や樹木整備機器など、北米で需要が高まっている分野を得意としているため、東京センチュリーの提供するリース・ファイナンスとの組み合わせによってさらなるシェア拡大が期待できます。
3-2. 日立キャピタル(現・三菱HCキャピタル)によるCLE Canadian Leasing Enterprisesの子会社化
日立キャピタルはカナダの自動車やヘルスケア機器、建設機械などのファイナンス事業を展開するCLE Canadian Leasing Enterprisesの全株式を取得し、事業拡大を目指しました。日立キャピタルは古くから国内外で建機ファイナンスを手がけてきましたが、パートナーだったCLEを完全子会社化することで一体的な事業運営が可能になります。
カナダは資源開発など建設需要のある国であり、ファイナンス事業を通じて収益機会が大きい市場です。こうした海外市場でのリース・ファイナンス事業を拡充する動きは、他の大手リース・金融企業にも多く見られます。
3-3. 日本鋳造と日立建機による新東北メタル株式譲渡
日本鋳造は完全子会社であった新東北メタルの株式の一部を日立建機に譲渡し、出資比率を100%から49%に減じました。これは製造業(鋳鋼品製造)と建設機械メーカーが資本関係を通じて連携を強化する例です。鋳造技術を持つ新東北メタルと大手建機メーカーである日立建機の協業によって技術力の向上と安定的な収益確保が見込めます。
特に鋳物などの素形材分野は、建機の主要部品として欠かせない存在です。日立建機としては部品調達先への戦略的投資で安定供給と品質向上を図り、日本鋳造としては開発・技術リソースを相手方と共有することで経営を安定化できるメリットがあります。
3-4. 東芝機械(現・芝浦機械)とナブテスコによるハイエストコーポレーションの株式譲渡
東芝機械は油圧機器メーカーのハイエストコーポレーションをナブテスコに譲渡し、成型機や工作機械など本業である装置産業へ経営資源を集中させました。一方、ハイエストコーポレーションは規模の大きいナブテスコグループに入ることで技術優位性を保ちながら継続的に発展する道を選択しました。
建機に用いられる油圧機器は需要の大きい分野ですが、グローバル競争が激化しているため、開発投資や生産効率向上のための資本が必要となります。こうした売り手と買い手の利害が一致した典型例といえます。
3-5. 東芝機械(現・芝浦機械)のインドL&T Plastics Machinery買収
東芝機械がインドのプラスチック加工メーカーL&T Plastics Machineryを子会社化した事例は、インドという新興国市場の開拓を狙った買収の代表例といえます。インド市場において射出成形機の需要増が見込まれる一方、建設機械や重工業など多分野に事業を展開するLarsen & Toubro Limitedからの株式取得で販路や知名度を一挙に広げようとする戦略です。
建設機械業界においても、インドは今後ますますインフラ整備が進む市場であり、他の日本企業も同様にインド企業の買収や合弁によって現地展開を強化しています。
3-6. 清鋼材による中国子会社の譲渡
清鋼材は中国子会社である昆山清陽精密機械有限公司の全出資持ち分を現地企業へ譲渡しました。コロナ禍など経営環境の変化による事業再編の一環とされています。建設機械や産業機械向けの鋼材部品製造は中国市場でも需要がありますが、経営環境の先行きが読みにくい中で企業は選択と集中を迫られています。
特に中国市場では、現地企業との合弁や出資比率調整などがよく行われ、必要に応じて撤退や譲渡が選ばれる場合も珍しくありません。
3-7. 前田製作所による介護用品事業の一部取得
前田製作所がサンネットワーク中部から介護用品レンタル事業の一部地域を取得した事例は、一見すると建設機械事業と関係ないようにみえます。しかし、同社は建設機械レンタルで培った流通・整備ノウハウを介護用品の分野にも活かそうとし、地域に根ざした新たな事業展開を進めています。
建設機械レンタル企業が介護福祉用品レンタルへ参入する動きは、機材の洗浄やメンテナンスのノウハウ、保管倉庫の活用など共通点が多いため、将来の多角化として検討する企業は少なくありません。
3-8. 日立建機によるKCMの子会社化
日立建機は川崎重工業傘下でホイールローダーを手がけるKCMを完全子会社化し、技術融合や生産効率の向上を狙いました。建設機械のグローバル競争はメーカー間での激しい市場争いが続いており、ホイールローダーなどの製品ラインナップ拡充と技術強化は日立建機にとって重要な施策でした。
大型から中小型まで幅広いラインナップを揃えることは、世界市場でのシェア拡大に直結します。一方、川崎重工も建機事業を整理することで資源を航空機や船舶、鉄道など他の注力分野に集中できます。
3-9. 日立建機によるH-E Parts Internationalなど2社の子会社化
日立建機は鉱山・建設機械設備のサービス・ソリューション事業を行う米国H-E Parts International LLCなどを約276億円で取得しました。鉱山や建設現場でのアフターサービスや部品供給は、高い利益率と継続収益が期待できる領域です。
こうしたバリューチェーンを強化する動きは建機メーカーにとって不可欠であり、単に機械を販売するだけでなく、顧客の要望に合わせた低コスト・高効率のメンテナンスサービスを確立することが競争力に直結します。
3-10. 日立建機によるインドのTelco Construction Equipment Company(テルコン社)買収
日立建機はインドのテルコン社の出資比率を40%から60%に引き上げ子会社化しました。インド市場での油圧ショベルやバックホーローダなどの生産体制を現地に確立し、市場拡大期におけるシェア維持と製品の品質向上を狙いました。
インドは世界有数の建設機械市場へと成長しており、各社がしのぎを削る激戦地です。ここでしっかりと現地生産・販売ネットワークを築き、コスト面でも競争優位を得ることは長期的に大きなメリットとなります。
3-11. 虹技によるアルミ合金鋳造の小口合金鋳造所子会社化
虹技は主に鋳物製造事業や環境エンジニアリング、機能材料を扱っていますが、アルミニウム合金鋳造事業を展開する小口合金鋳造所を子会社化しました。建設機械分野や半導体・液晶など幅広い領域での需要を取り込む狙いがうかがえます。
従来の鉄鋳物に加え、軽量化・低燃費化へのニーズが高まる中で、アルミ合金素材の技術を取り込むことは重要な戦略です。建機部品でも軽量化技術は注目されており、アルミニウム合金鋳造技術の獲得は新たな市場開拓に直結する可能性があります。
3-12. 横浜ゴムによるグッドイヤーの鉱山・建設機械用タイヤ事業取得
横浜ゴムは米グッドイヤーから鉱山・建設機械用タイヤ事業を約1424億円で取得し、生産財タイヤ事業の成長戦略を大きく前進させました。従来、横浜ゴムは農業機械用タイヤ分野では世界トップクラスですが、鉱山・建設機械用の大型タイヤ市場は手薄でした。
建機向けの大型タイヤは収益性が高く、インフラ投資拡大が見込まれる地域では安定した需要があります。競争法承認後の早期取得完了を目指すことで、OHT(オフハイウェイタイヤ)事業を一層強化しようとする狙いが読み取れます。
3-13. 佐藤商事による阪神特殊鋼の子会社化
佐藤商事は、農業・建設機械向けの特殊鋼販売を行う阪神特殊鋼を子会社化し、販売網の相互活用を通じてサプライチェーンの高度化を狙いました。特殊鋼は建設機械の重要部材であり、高い品質が求められるため安定供給と効率的な流通が不可欠です。
建設機械のグローバル化が進む中、鋼材の安定供給ネットワークは競合優位性の源泉となります。佐藤商事が特殊鋼サプライヤーを傘下に収めることで、供給網の強靱化や部品製造との連携強化が期待されます。
3-14. 佐藤商事による青木ホールディングス自動車部品製造事業の取得
佐藤商事は、青木ホールディングスの自動車部品製造事業を取得し、商用車や建設機械向け部品の製造と拡販を図りました。近年、自動車分野だけでなく建設機械分野でも高度な部品製造技術や品質管理が求められており、こうした部品事業の強化は欠かせません。
商社である佐藤商事が製造事業に踏み込む形ですが、部品製造ノウハウと流通ネットワークが融合することで、より広範な付加価値を提供できるようになります。
3-15. 三菱製鋼によるインドネシア特殊鋼鋼材メーカーの子会社化
三菱製鋼は、インドネシアで特殊鋼鋼材を製造するPT. JATIM TAMAN STEEL MFG.を子会社化しました。ASEAN各国での需要増加を見込み、現地生産体制を強化することで自動車や建設機械などのユーザー企業の現地調達ニーズに応えようとするものです。
インドネシアは東南アジア最大級の市場を持ち、インフラ投資や自動車需要の拡大が続いています。特殊鋼の一貫生産体制を構築し、より迅速かつ低コストで現地企業に対応できる強みを持つことは、グローバルサプライチェーンでの競争力を大きく高めます。
3-16. 九州鉄道によるキャタピラー九州の建設機械販売事業取得
九州鉄道はキャタピラー九州の建設機械販売事業を会社分割の形で取得し、鉄道以外の新規分野へ参入を図りました。建設機械販売事業には安定した需要が見込めるものの、専門性や販売ネットワーク、メンテナンス拠点の拡充など多くの課題があります。
鉄道会社としての信用力や地域拠点などを活かしながら、キャタピラー製品の扱いを継続しつつ事業拡大を進める動きは、いわば異業種参入の象徴的な事例ともいえます。鉄道事業のみならず他のインフラ領域でのノウハウ活用を狙っている点が特徴です。
3-17. 三菱製鋼の希望退職募集
三菱製鋼は新型コロナウイルス感染拡大の影響などによる業績悪化を受け、希望退職を募集しました。特別退職金や再就職支援を提供する方針ですが、建設機械や産業機械、自動車など主要ユーザー業界の減産によって同社の需要が大幅に落ち込んだためです。
M&Aは買収だけではなく、時にはリストラや事業縮小も組み合わせながら経営戦略を再編する過程で行われます。製鋼分野は景気変動に敏感であり、需要が大きく落ち込んだ時期に思い切ったリストラ策をとることで財務基盤を立て直す動きが増えています。
3-18. 小糸製作所による米国セプトンの追加出資
自動車用照明機器で有名な小糸製作所が、車載用センサー「LiDAR」を製造する米国セプトンへの追加出資を通じて子会社化を検討した事例があります。LiDARは建設機械や産業機械向けにも応用が期待されるため、自動車以外の領域にも展開可能です。
このように、自動車産業と建設機械産業との技術シナジーを狙うM&Aも増えています。自動運転技術や安全運行システムの需要が建設機械にも波及し、LiDARなど先端技術を取り込むことでオフハイウェイ車両(農業機械、建設機械など)の自動化を進める例が典型です。
3-19. ユアサ商事による丸建サービスの子会社化
ユアサ商事は建機修理・メンテナンスを行う丸建サービスの株式を取得し、メンテナンス・レンタル機能を強化しました。建設機械の販売・レンタルにおいて、修理やメンテナンス拠点が充実していることは顧客にとって大きな安心材料となります。
総合商社としての幅広い商品・資材の取り扱いに建設機械関連サービスが加わることで、ワンストップの営業提案が可能になります。丸建サービスの既存顧客や整備網を取り込むことで、ユアサ商事の販売力やサービス力が飛躍的に拡大する見込みです。
3-20. ユアサ商事による富士重工ハウス(現・富士クオリティハウス)の子会社化
ユアサ商事はSUBARU(旧・富士重工業)の子会社である富士重工ハウス(組み立て式仮設ハウスの製造)の全株式を取得しました。災害対策用や農業用など、従来の建設現場向け以外にも幅広い利用が見込まれる「仮設ハウス」の強化を狙ったものです。
近年、災害発生時の緊急拠点や一時避難所としての仮設ハウスの需要は高まっています。建設機械分野で培ったノウハウや販路を応用することで、より多角的な「仮設ソリューション」を提供できるようになり、市場競争力が高まると考えられます。
3-21. ワキタによるグランドアースなど2社の子会社化
建設機械レンタル大手のワキタは、九州北部を地盤に建設機械関連事業を営むグランドアースと九州機械センターを子会社化し、九州地区での事業拡大を図りました。地域に密着したレンタル・修理・販売拠点を獲得することで、広域的なネットワークを強化する狙いがあります。
建機レンタル業界では全国展開を進めることが重要ですが、地域密着型の企業とのM&Aによって円滑に拠点網を拡大し、物流コストやサービス品質の向上が見込めます。
3-22. リアルコムによるWWBの株式交換
リアルコムは中古建設機械販売のWWBを株式交換で子会社化し、太陽光発電事業への参入を発表しました。WWBは太陽光発電事業にも進出しており、建設機械の輸出や国内販売とあわせて、新エネルギー分野でもシナジーを図ろうとしていました。
レンタル・リース分野でも、太陽光発電設備の一時的な設置工事などで機械需要が高まるケースがあり、建設機械やエネルギー関連機器の分野を複合化する企業が増えています。
3-23. ワキタによる信陽機材グループ3社の子会社化
ワキタは長野県を地盤とする信陽機材リース販売、クリーン長野、信陽サービスの3社を取り込み、土木・建設機械の販売やリース、屋外トイレなどの賃貸を手がける体制を強化しました。甲信地区での事業拡大と拠点網の拡充を狙ったものです。
このように複数社を同時に取り込む手法は、地場の有力企業グループを丸ごと買収することで効率よく地域シェアを獲得できます。各社の特化サービスをまとめることで総合力が大きく増すメリットがあります。
3-24. ワキタによるヤマケイ、泉リース、日東レンタルなど多数の子会社化
ワキタは首都圏や関東、北関東エリアに拠点を持つ建設機械賃貸・販売会社を積極的に子会社化し、全国規模のレンタル網を整備しています。なかでもヤマケイや泉リース、日東レンタルは地場で根強い顧客基盤を持ち、収益も安定しているため、M&Aによる一体運営は大きなシナジーを生み出すと期待されます。
特に日東レンタルはトラックやダンプのレンタルも行っており、重機以外の運搬車両のレンタル需要にも応えられるため、サービスの幅が広がります。複数企業を連続的に買収している点からも、ワキタの全国的支配力の強化がうかがえます。
3-25. 象印マホービンによる日立建機ティエラの玄米保冷庫事業取得
象印マホービンが、建機メーカー子会社の日立建機ティエラから玄米保冷庫事業を取得したのは意外な組み合わせに見えます。しかし、炊飯ジャーを扱う同社が「稲作」に着目し、収穫後の玄米保管から炊飯までのバリューチェーンを包括的に捉えようとする戦略が背景にあります。
建設機械分野でも農業機械を扱う企業が増えているように、農業と建設業は機械使用という点で共通項があります。これを応用して新規事業を切り開こうとする例として興味深い事例といえます。
3-26. オカダアイヨンによる米国TT&Eグループからの事業取得
オカダアイヨンは解体用アタッチメントを主力とする企業として知られていますが、米国で解体用建機の販売・修理・リース事業を営むTT&Eグループ3社の事業を取得しました。北米での解体・インフラ更新需要に対応するための戦略的な買収です。
解体業界では老朽インフラの更新ニーズが拡大しており、高い利益率が期待できる分野でもあります。これにアタッチメントメーカーが直接乗り出すことで、部品供給やメンテナンス、機械販売まで含むトータルソリューションを提供できるようになります。
3-27. カーリットホールディングスによる東洋発條工業の子会社化
カーリットホールディングスは、自動車や建設機械向けスプリング製造の東洋発條工業を傘下に収めました。化学や電子材料などを扱う同社が自動車部品・建機部品分野に進出し、新たな収益基盤を築く動きといえます。
スプリングは自動車や建設機械のサスペンションや各種機構に使われる重要部品であり、技術的参入障壁が高い領域でもあります。大手機械メーカーとの取引が見込めれば、安定した利益獲得につながるため、多角化を志向する企業にとって魅力的です。
3-28. コンセックによる丸金建設の子会社化
コンセックは土木・解体工事に使うダイヤモンド工具や切削機具を扱うほか、耐震工事や解体工事の特殊工事事業も手がけています。そうした中で、土木工事を行う丸金建設を子会社化し、特殊工事事業の基盤強化を図りました。
ダイヤモンド工具などはコンクリート構造物の切断や解体に不可欠であり、丸金建設の施工力を取り込むことで、工事受注から機材提供までのワンストップサービス体制を強化できます。建設機械レンタル業界に近い工事会社買収の一例として注目されます。
3-29. イハラサイエンスによる中国建設機械メーカー出資
イハラサイエンスは中国で油圧配管の製造販売を行う南通木原配管有限公司を子会社化し、建設機械や産業車両の配管需要を取り込みました。中国をはじめとするアジア圏では建設機械の生産が拡大しており、部品供給を現地で行う意義は非常に大きいといえます。
ただし、中国市場では合弁パートナーや現地企業との利害調整が重要であり、経済環境の変化による事業リスクも高まります。イハラサイエンスのように専門部品で差別化を図れる企業は、M&Aを通じて現地生産を確立するケースが増加しています。
3-30. カナモトによる多数のM&A事例
カナモトは建機レンタル大手として、国内外で多くのM&Aを実施してきました。ユナイトの子会社化や中国子会社の譲渡、キョクトーリース買収、豪Porter Plant Groupの買収、セントラルからの事業取得など、積極的に事業再編や拠点拡充を行っています。
特に海外市場への進出では、オーストラリアや中国など各地域の特性を踏まえて買収や譲渡を柔軟に行っており、リスク管理と成長戦略を両立させようとしているのが特徴です。国内では地方の有力企業を取り込む形でエリアカバーを拡大し、安定収益を狙っています。
3-31. ニッパンレンタルのMBOによる非公開化
ニッパンレンタルは建機レンタルを中心とする企業で、MBO(経営陣買収)により上場を廃止し非公開化へ進みました。上場企業としての開示コストや株主への説明責任を軽減し、事業の構造改革を迅速に進めるための施策と考えられます。
建設機械レンタル業界は機動的な意思決定と大規模投資が必要な状況にあり、上場維持によるメリットよりも非公開化して柔軟な戦略を立てるメリットが大きいと判断されたのでしょう。特に地域密着型レンタル企業のMBOは今後も増加する可能性があります。
3-32. マルカによる食品機械製造のミヤザワ子会社化
産業機械や建設機械の専門商社であるマルカが、食品機械メーカーのミヤザワを子会社化した事例は、機械という括りでの多角化を表す好例です。食品機械分野でも生産ラインのオートメーション化が進んでおり、建設機械で培った設備提案力やアフターサービス体制が活かせると判断したのでしょう。
建設機械の需要が景気変動に左右されることに加え、食品産業は安定的な需要が見込めるため、リスク分散の狙いも考えられます。
3-33. ゼロによるIKEDAの子会社化
自動車運搬などを主力とするゼロが、建機の自走回送を手がけるIKEDAを子会社化しました。いわゆる「2024年問題」に備え、ドライバー不足が深刻化するなか、全国規模での回送ネットワークと契約ドライバーを確保しているIKEDAの存在は、ゼロにとってサプライチェーン強化の大きな武器となります。
物流企業が建機回送事業に参入することで、建設機械のレンタル会社やディーラーに対して、一貫した運搬・納品サービスを提供できます。これにより顧客利便性は格段に高まり、付加価値を生み出せるのです。
3-34. 日本トムソンによる中国ベアリングメーカーUBC上海の子会社化
日本トムソンはリニアガイドなど精密機器部品で知られていますが、中国のベアリングメーカーを買収することで、建設機械やロボット、自動車向けのベアリング販売の拡大を目指しました。ベアリングは多くの建機で不可欠な部品であり、現地生産・現地販売網の獲得はコスト競争力と供給安定をもたらします。
中国への投資はリスクも伴いますが、成功すれば大きなリターンが期待でき、建機だけでなく幅広い産業分野で販路拡大が可能となります。
3-35. ガリバーインターナショナル(現・IDOM)による海外建機事業の譲渡
中古車買い取り大手のガリバーインターナショナルは、かつて中古建機の販売・レンタルを海外で展開していましたが、ロシアなどの拠点を段階的に売却し、経営資源を国内事業に集中させる決断をしました。景気変動や為替リスクが大きい海外事業より、安定収益を見込める国内中古車ビジネスへ回帰する動きです。
このように、一時期のブームで海外進出したものの、現地経済の減速や自社の強みとのミスマッチを理由に撤退を選ぶ企業も珍しくありません。M&Aは買収だけでなく、譲渡や撤退という形で整理されることも大いにあり得ます。
第四章:M&Aから読み解く建設機械レンタル・リース業界の動向
4-1. 地域密着と全国・海外展開の両立
建設機械レンタル・リースのビジネスは、機械を現場で使う以上、どうしても地域ごとの顧客との密着が不可欠です。その一方で、持続的な成長を目指すには全国展開や海外進出が必要になってきています。これを実現するために、多くの企業は地場企業や海外企業をM&Aで取り込み、拠点ネットワークを広げています。
ワキタやカナモトなどの動きが典型で、地域の有力企業を段階的に買収してネットワーク化し、運営コストを下げて大手との競争力を保つ手法が一般化しています。
4-2. サービス領域の拡大とバリューチェーン強化
単に建機を貸すだけでなく、ファイナンス、販売、修理・メンテナンス、中古機流通、ICTソリューション提供など、バリューチェーン全体をカバーするトータルサービスが重要視されています。そのため、メーカーやリース会社、商社が相互補完を図りながらM&Aを活用しています。
東京センチュリーや日立キャピタルの事例は、この「リース+販売+メンテナンス」の一体化が狙いであり、顧客にとっては手続きや管理が簡素化するメリットがあります。大手メーカーもアフターサービスや部品供給で買収を進めるなど、サービス収益の獲得に積極的です。
4-3. ICT・自動化技術との融合
建設機械分野では、GPSやセンサー、AI、LiDARなどを活用した自動化・省人化が急速に進んでいます。これに伴い、先端技術を持つスタートアップや海外企業を買収・提携するケースが増えています。自動車業界で進んだ自動運転技術は、オフハイウェイ車両にも波及しようとしており、今後はますます関連技術を巡るM&Aが活発化すると予想されます。
4-4. 新興国市場へのアプローチ
インドや東南アジア、アフリカなど、インフラ開発の需要が旺盛な地域において、現地企業の買収や合弁会社設立を通じた事業拡大はすでに大きな流れになっています。日立建機や三菱製鋼、東芝機械などがインドやASEAN企業を子会社化する事例はその典型です。
こうした地域では、低価格帯の建機や部品へのニーズが高く、現地生産と販売を結びつけることで、輸送コスト削減や迅速なサポートを実現できるのがメリットとなります。
4-5. 景気変動リスクと撤退・再編
一方、海外市場は為替リスクや政情リスク、景気変動の振れ幅が大きいため、思惑が外れると撤退せざるを得ないケースもあります。ガリバーインターナショナル(現・IDOM)のロシア撤退やカナモトの中国子会社譲渡などは、そうした事例を象徴しています。
M&Aは時機を見誤ると大きな損失を被ることもあり、リスク管理の重要性を示すものとなります。
第五章:M&A実施に伴うシナジーと課題
5-1. シナジー効果の具体例
- 規模の拡大によるコスト削減
大規模企業が小規模企業を取り込むと、機材調達コストや管理システム、物流効率などでスケールメリットが発生しやすくなります。 - 販売チャネル・拠点網の補完
地域密着の企業と全国展開を狙う企業が合わさると、営業網が一気に拡大し、顧客サービス向上やマーケティングデータの集約が可能となります。 - 技術ノウハウの相互移転
アタッチメントや油圧機器など特殊部品を扱うメーカーとレンタル事業者が協業する事例では、開発効率やメンテナンスノウハウの融合が図れます。 - リース・ファイナンスと販売・アフターサービスの一体化
金融系企業が実際の販売・アフターサービス会社を買収することで、顧客は資金調達から機材導入、保守までをワンストップで利用できるようになり、企業側も継続収益を得やすくなります。
5-2. M&A推進時の主な課題
- 買収価格評価の難しさ
建設機械レンタル・リース企業は保有機材の評価が難しく、中古機相場の変動や稼働率、整備状況など多くの不確定要素があります。 - 企業文化の統合
地域企業と大手が合併する場合、社内オペレーションや組織文化が大きく異なるため、人事制度や拠点運営の統合がスムーズに進むとは限りません。 - 過度な集中投資による財務リスク
ICT化や海外進出など、投資負担が大きいプロジェクトが重なると、資金繰りや借入金の増加が問題化するリスクがあります。 - 市場環境の急変
新型コロナウイルスのようなパンデミックやウクライナ情勢など、世界的なサプライチェーンの混乱や政治リスクが建設機械市場にも直撃する可能性があります。M&A後に需要が急落すれば投資回収が難しくなります。
第六章:今後の展望と戦略ポイント
6-1. DX時代の建機レンタル・リースの行方
国土交通省のi-Construction施策や世界的なDX推進により、建設現場の効率化・自動化が加速しています。無人化施工やリモート制御、3Dスキャナやドローンによる測量など、必要とされる機械や技術が多様化する中で、レンタル企業も幅広い機材を取り揃え、高度なサポートを提供する必要があります。
このため、最先端機器の開発や販売会社をM&Aで取り込む動きは今後も続くでしょう。また、ソフトウェアやデータ解析ベンダーとの提携によって新たな付加価値サービスを生み出す可能性も高まっています。
6-2. ESG・サステナビリティ志向の高まり
建設業界全体でカーボンニュートラルや環境負荷低減の取り組みが強化される中、電動建機や省エネ機器の需要は拡大すると考えられます。レンタル企業が電動機やハイブリッド機を積極的に導入することで、環境対応を重視する顧客からの支持を得やすくなるでしょう。
M&Aを通じてこうした環境対応技術を持つ企業や部品サプライヤーを傘下に収めるケースも増えています。特にバッテリシステムや水素燃料関連など先進技術の獲得は今後の競争力につながります。
6-3. 海外市場のさらなる開拓とリスク管理
アジア、アフリカ、南米などでは引き続きインフラ需要が高く、建設機械市場の成長が見込まれます。ただし、政治情勢や為替変動、資源価格など外的要因による影響を受けやすい点は要注意です。
グローバル企業は進出先でのパートナー選定や合弁設立、少数株主化から始めて段階的に出資を増やす戦略をとることが多いです。失敗リスクを分散しつつ、経済成長の果実を取り込みたいという狙いがここにあります。
6-4. 周辺産業との連携による新サービス創出
建設機械だけでなく、農業機械や林業機械、産業機械など、共通する機能を持つ分野との境界が曖昧になりつつあります。LiDARなどのセンシング技術や自動運転技術は、多様な機械産業にまたがる汎用技術となっています。
このため、建設機械レンタル企業が農機レンタルやエネルギー設備レンタルなどを手がける例も増えており、それぞれのノウハウを横断的に活用できるM&Aのニーズが高まっています。
6-5. ローカル企業の課題とM&Aによる事業承継
日本国内では、建設機械レンタル業界においても中小企業の高齢化・後継者不足が顕在化しています。地域のニーズを熟知した老舗企業が事業承継で悩むケースも多く、大手や関連企業によるM&Aが円滑な事業引き継ぎを実現する手段になっています。
とりわけ地方では公共工事や災害対応が急務となるケースもあり、地場の建機レンタル企業が持つ人脈や技術を活かすことが社会的にも意義があります。大手との統合によって財務基盤や最新機材導入が可能になることで、地域経済にもプラスに作用する側面が強調されます。
第七章:まとめ
建設機械レンタル・リース業界のM&Aは、国内外を問わずさまざまな目的や戦略によって活発化しており、単なる規模拡大だけでなく、技術革新やサービス多角化、海外市場の開拓など多岐にわたる狙いが見られます。以下に本記事のポイントを総括いたします。
- 業界再編が進む背景
国内市場の伸び悩みやICT化・DXへの投資ニーズなどを受け、大手企業は規模拡大を急ぎ、地域密着企業は後継者問題や設備投資負担の軽減を模索しています。その結果として資本提携や子会社化が相次いでいます。 - 多様化するM&Aの狙い
リース・ファイナンス事業の拡充、アフターサービス強化、新興国市場への参入、技術革新分野の取り込みなど、多くの戦略があり、企業ごとに目的が異なります。近年は特に「サービス一体型モデル」へシフトするためのM&Aが目立ちます。 - シナジー効果とリスク管理
M&Aによりスケールメリットや拠点補完、ノウハウ共有などのシナジーが得られる一方、買収価格の評価や企業文化の統合、急激な市場変化に対応するリスク管理も課題です。 - 海外展開の重要性と撤退の選択
新興国市場への投資が成長機会となる一方、経済や政情の不安定さから撤退や譲渡を余儀なくされる事例もあります。慎重な調査とパートナー選定が不可欠です。 - 多角化とイノベーションの追求
建設機械と農業、林業、エネルギー産業など、隣接領域との境界が薄れています。DX、AI、自動運転技術など先端分野での連携を狙うM&Aが今後さらに進む可能性があります。
こうした動向を総合的に見ると、建設機械レンタル・リース業界のM&Aは、従来の企業買収とは異なる複雑で多面的な戦略要素を内包していることが分かります。企業間の再編はまだ続くと見られ、特にDX関連技術の獲得や新興国事業の強化、環境対応技術の導入などを巡って、さらなる取引が発生することは確実といえます。
今後も、大手リース企業とメーカー、商社が手を組み、地域密着型の中小企業を巻き込みながら、全体として建設機械のライフサイクルをカバーするエコシステムが形成されていくことでしょう。日本国内にとどまらず、海外市場への積極的なアプローチも続くと予想されます。建設現場を支える基盤産業として、そして大きなビジネスチャンスを秘める分野として、建設機械レンタル・リース業界のM&Aには今後も注目が集まることが見込まれます。

株式会社M&A Do 代表取締役
M&Aシニアエキスパート・相続診断士
東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後独立。これまで製造業・工事業を中心に友好的なM&Aを支援。また父親が精密板金加工業、祖父が蕎麦屋、叔父が歯科クリニックを経営し、現在は父親の精密板金加工業にも社外取締役として従事。